GEヘルスケア・ジャパン(株)は2010年11月18日(木),赤坂パークビル(東京都港区)にてプレス向けセミナー「第1回ヘルシーマジネーションカレッジ」を開催した。少子高齢化が進むなか,政府が新成長戦略の柱の1つとして「ライフ・イノベーション」を掲げ,医療・介護を柱とした新たな産業育成を打ち出している情勢を受け,ヘルスケアの最新動向や同社の最新ソリューションへの理解を促す目的で企画された。
初めての開催となる今回は,「超高齢社会ニッポンを支える在宅医療〜真の課題と将来像」と題し,わが国における課題や実情を踏まえた在宅医療の在り方について,同社専門担当者からレクチャーが行われた。
セミナーに先立ち,同社代表取締役社長兼CEOの熊谷昭彦氏が挨拶に立ち,「2009年,“ヘルシーマジネーション”というヘルスケアに関するグローバル戦略を立ち上げ,世界中が抱えている医療・健康問題に対して,2015年までに60億ドルを投資し,各国の状況に合った新しい考え方で,新しいソリューションを提供していく」と,GEヘルスケアとしてのビジョンを述べた。また,ヘルシーマジネーションのアジアにおける一例として,妊産婦・乳児の死亡率の高いインドネシア僻地におけるソリューション提供について説明した。日本においては,超高齢社会が抱える課題の解決のための製品・ソリューションを開発することで,新しいマーケットやビジネスチャンスが生まれるとし,「シルバーからゴールドへ(From silver to gold)」をキーワードに,高齢者(シルバー)にとっても,ビジネスにとってもゴールドとなるよう,ヘルシーマジネーション活動を展開していくと抱負を語った。
セミナーでは最初に,超音波本部長の多田荘一郎氏が,先進国の中でも特に高齢化が進んでいる日本では,慢性疾患が増加していることから,かかりつけ医や在宅医療といった,一番患者に近い医療“プライマリケア”の重要性が高まっているとし,プライマリケアの考え方について解説した。また,プライマリケアは高齢化に伴い必要になるだけではなく,医師の偏在や医療の地域格差といった日本が抱える問題の解決にも必要な概念であると警鐘を鳴らした。そしていま,周産期から終末期までのプライマリケアの在り方が問われているとし,そのひとつである在宅医療の提供をセミナーで取り上げたと,今回のテーマの意図を述べた。
これを受け,超音波本部プライマリーケア部マネジャーの田口真帆氏が,在宅医療における問題点・課題を詳述した。
現在,全国の約11000施設が登録している「在宅療養支援診療所/支援病院」は,政府が対象施設条件の規制を緩和したことにより増加しているものの,都道府県・地域で非常にバラツキがある現状を説明。「在宅医療を受けたい」,「自宅で最期を迎えたい」というニーズは高いものの,実際は8割が病院で最期を迎えている現状は,在宅医療体制の未整備が原因であるとし,患者側も医師側も在宅医療に不安を抱えているという厚生労働省の調査結果を紹介した。
続いて,米国における在宅医療の事例として,インターネットを使って手軽に医師と患者のマッチングによる相談・診断ができるAmerican well社のサービスを紹介。このサービスには,患者側には「手軽さ」,「病気の早期発見」,「セカンドオピニオンを気軽に相談できる」というメリットがあり,医師側には「空き時間の利用」,「稼働率向上・副収入」,保険会社側には「早期発見による治療費削減」といったメリットが生まれ,全体として効率的かつ低価格な医療の提供が実現できていると解説した。このモデルから見えてくるのは,在宅医療は,システムを整備するだけでは問題解決にはならず,患者側と医療者側双方のニーズを満たすことがポイントとなると分析し,日本における在宅医療の将来像を示唆し,セミナーを締めくくった。
「ヘルシーマジネーションカレッジ」は,社内外,国内外から講師を招聘し,高齢社会を取り巻く諸問題の解決や世界に誇れる高齢社会の構築につながるテーマで継続的に行っていく。今後は,2011年3月以降,リウマチやプライマリケア(周産期医療),アルツハイマーなどをテーマに開催を予定している。 |