GEヘルスケア・ジャパン(株)は2月3日(木),国内初の最新マンモグラフィ検査技術「SenoBright(セノブライト)」の国内での提供開始に伴い,帝国ホテル東京(東京都千代田区)にて記者発表会を行った。
SenoBrightは,ヨード造影剤を用いた2つの異なるエネルギー値での撮影と,サブトラクション技術の応用により,乳がん発生の可能性を示す新生血管など乳房内の血管を鮮明に描出するContrast Enhanced Spectral Mammography(CESM)を用いた技術。同社のデジタルマンモグラフィ「Senographe(セノグラフ)」シリーズの4機種にオプション搭載が可能である。撮影時間は約5分と通常検査と変わりなく,被ばく線量も最大で通常撮影の2割増とマンモグラフィ撮影の国際的なガイドラインを下回る。
記者発表の冒頭,代表取締役社長兼CEOの熊谷昭彦氏が挨拶に立ち,GEの医療戦略である“ヘルシーマジネーション”について説明した。世界が直面する最も困難な問題のひとつである医療問題の解決に向け,新しい製品,サービスの開発に取り組んでおり,その一環として,画期的な新技術であるSenoBrightを開発したと述べた。また,同社では社員の健康維持のために,2000年から女性社員の乳がん検診を会社負担で推進しているとし,2010年度の受診率は77%と,国内検診受診率の20.3%を大きく上回っていると紹介した。なお,その一例として,開会に先立ち,検診により乳がんが発見され,手術,職場復帰を果たした,同社女性社員へのインタビュービデオが上映された。
X線営業部部長の櫻井 諭氏は,SenoBrightの開発の背景やメカニズムについて説明した。同製品でめざすベネフィットとして,1)新たな診断情報の提供による感度,特異度の向上,2)確定診断,乳がんの広がり診断までの時間短縮,3)通常のマンモグラフィと同様の画像提供,4)従来と同じ検査フローを挙げ,従来のマンモグラフィの課題であった,日本人などアジア圏に多いとされる乳腺密度の高い乳房(dense breast)での検出率の向上や,診断・治療計画までの効率化に寄与することが期待されると述べた。SenoBrightの国内1号機は,2011年1月に三河乳がんクリニック(愛知県三河安城市)で稼働を開始しているほか,3月には国立がん研究センター東病院への導入が予定されており,櫻井氏は2011年度に20台の納入を目標としていると述べた。
続いて,昭和大学医学部外科学講座乳腺外科部門教授/昭和大学病院ブレストセンター長の中村清吾氏が,「日本の乳房画像診断・治療環境下でのSenoBrightが期待される役割」をテーマに講演した。世界的な乳がんの発生率や,日米における乳がん検診の現状,さまざまな画像診断法の特徴などについて解説した上で,従来のマンモグラフィ検査でのdense breast症例における病変検出の難しさについて述べた。その解決策となりうる新しい技術としてCESMを紹介し,将来的にCESMによる病変検出能の高さが確認されれば,特に遺伝的にハイリスクな人への検診などで有用性を発揮する可能性があるとの期待を述べた。
現在,国内で唯一臨床使用を行っている三河がんクリニック院長の水谷三浩氏は,「SenoBrightがもたらす乳房画像診断のブレイクスルー 〜臨床の現場から〜」と題して講演した。従来のマンモグラフィは,spiculaを伴う腫瘍,微細石灰化,構築の乱れによる存在診断には有用性が高い一方,dense breast症例は診断が困難であると指摘した。その上で,SenoBrigthへの期待として,1)dense breast症例における病巣の検出,2)局所的非対称性陰影,構築の乱れおよび微細石灰化を呈する病変のうち,精査を要するものの鑑別,3)温存術の可否の判定(広がり診断),4)術前化学療法の効果判定(モニタリング)を挙げ,実際の症例を提示しながら,すでに多くの手応えが得られていると述べた。
一方,SenoBrightの今後の課題として,1)造影パターンの分類と重み付け,2)月経周期の画像への影響の課題,3)偽陰性を呈した悪性例,偽陽性を呈した良性例の解析を挙げ,SenoBrightがアジア女性の乳房疾患への福音となるよう,今後十分に議論を重ね,そのメリットを臨床に生かしていきたいとの抱負を述べた。 |