ここで,CESMの有用性を示すいくつかの症例を提示する。CESMについては現在,フランスのがん研究所(Institute Gustave-Roussy:IGR)で臨床研究が行われており,以下の症例は,すべてIGRのご厚意によって提供されたものである。
1.dense breastにおける評価
症例1は,53歳,女性。触診にて4cmの固い腫瘤が認められた。通常のマンモグラフィでは,dense breastのため病変は描出されなかった(図1 b,c)。超音波では,悪性を疑うような不整形の腫瘤が認められ,その周辺に2つの小さな病変が認められた(図2)。針生検の結果,3つの病変はいずれも浸潤性乳管癌と診断されたが,従来のマンモグラフィではdense breastの診断は困難であることが改めて確認された。
一方,同症例に対してCESMを施行したところ,最も大きな腫瘤はもちろん,2つの微小結節も明瞭に描出され(図1 a,d),存在診断が可能だった。 |
図1 症例1:dense breastにおける評価(浸潤性乳管癌)
a,d:CESM画像
b,c:マンモグラフィ画像
(画像ご提供:フランス・IGRのご厚意による) |
図2 症例1の超音波画像
(画像ご提供:フランス・IGRのご厚意による) |
2.構築の乱れが認められた症例
症例2は,58歳,女性。触診では病変は認められなかったが,通常のマンモグラフィでは構築の乱れが見られた (図3 b,c)。こうした症例については,精査を目的としたVABまたは手術の必要性を検討するために,MRIやCTなどの検査を追加することが多い。CESMを施行したところ,それと近似した画像が得られた(図3 a,d)。このような濃染像が認められる場合,がんの可能性は非常に高いと思われ,やはりVABなどが必要と判断される。病理診断では,本症例は浸潤性乳管癌であった。
CESMが可能となることで,MRIやCTによる再検査の手間もなく,すぐにその場でCESMからVABといった,さらなる精査が追加できることは,患者さんにとって非常に大きなメリットであると思われる。 |
図3 症例2:構築の乱れが認められた症例(浸潤性乳管癌)
a,d:CESM画像
b,c:マンモグラフィ画像
(画像ご提供:フランス・IGRのご厚意による) |
3.広がり診断を行った症例
症例3は,50歳,女性。通常のマンモグラフィにて,局所的非対称性陰影が認められた(図4 a,d)。そこで,CESMを施行したところ,3つの腫瘤性の結節陰影が明瞭に描出された(図4 b,c)。
通常のマンモグラフィ画像では,広範な局所的非対称性陰影の存在のため (図4 a,d),乳房温存療法は困難と判断されかねないが,CESM(図4 b,c)では十分に温存可能なように思われ,判断に大きく影響する。その後,撮像が行われたMRIでもCESMと同様の所見が得られたことから(図4 e),CESMはMRIにほぼ匹敵する高精度な広がり診断の情報が提供できると考えられた。 |
図4 症例3:広がり診断を行った症例(浸潤性乳管癌)
a,d:マンモグラフィ画像
b,c:CESM画像
e:MRI画像
(画像ご提供:フランス・IGRのご厚意による) |