がん対策推進企業アクション,「令和2年度がん検診受診率向上推進全国大会」を開催
2020-10-12
認定講師を交えて行われたトークセッション
がん対策推進企業アクションは2020年10月9日(金),「令和2年度がん検診受診率向上推進全国大会」を開催した。全国大会は,厚生労働省が「がん検診受診率向上に向けた集中キャンペーン月間」と定める10月に毎年行われているが,今回は新型コロナウイルス感染防止の観点から,初のオンライン開催となった。
まずはじめに,厚生労働省健康局がん・疾病対策課がん対策推進官の岩佐景一郎氏が国のがん対策の現状について講演を行った。岩佐氏は,日本のがん検診受診率は徐々に向上しているものの,ほとんどのがん種で目標の50%には届いておらず,国際的に比較しても低いことから,今後も受診率上昇に取り組んでいく必要があると述べた。また,就労しながらがん治療のために通院している人は44.8万人(厚生労働省「2019年国民生活基礎調査」を基に同省健康局にて特別集計)で,2016年の調査と比較して約8万人増加している。岩佐氏は,厚生労働省は仕事と治療の両立や就労支援を円滑に進めるため,(1)がん患者が治療と仕事を両立しやすい環境整備,(2)拠点病院などでがんと診断された時から相談できる環境整備,(3)離職しても再就職について専門的に相談できる環境整備の3点に取り組んでいるものの,まだ不十分であるとして,引き続き対策を行っていきたいとした。また,新型コロナウイルスに伴い新たな生活様式が模索される中,がん検診もどのように行うべきか見直しが進んでいるとし,同時にがん検診の重要性を再認識する機会になるのではないかと述べた。
続いて,同アクション事務局長の大石健司氏が同アクションのこれまでの歩みなどについて説明した後,コロナ禍のがん対策に関するアンケート調査について,同アクションのアドバイザリーボードメンバーで第一生命保険(株)生涯設計教育部次長の真鍋 徹氏が紹介した。アンケートは,「企業目線のがん対策」についての情報発信や参加企業による持続的ネットワークの構築などを目標として活動を行う「がん対策推進企業コンソーシアム」が中心となり行われたもので,推進パートナー企業・団体3371社を対象に2020年7月29日~8月12日に実施,453社から回答が得られた(回収率13.4%)。その結果,2020年度のがん検診については,全体的には計画通り実施すると回答した企業が多かったものの,胃がんや乳がん,子宮頸がん検診などはもともと実施を予定していない企業が多いことが示された。また,がん治療中の従業員への対策については,「以前から時短・時差出勤,在宅勤務などを推奨している」と「がん患者に特化した対応は特に行っていない」の2つに分かれる結果となり,現場の保健師らの声として,検診日程の調整の困難さや直接個別面談を行えないことへの懸念などが寄せられていることが紹介された。
次に,アドバイザリーボード議長を務める東京大学医学部附属病院放射線治療部門長の中川恵一氏が「コロナ禍におけるがん対策のあり方」と題して講演を行った。中川氏は,コロナ禍のがん対策の問題点の中で,がん検診中止などに伴うがんの早期発見への影響について言及。受診者が3割減少すると発見がん数は4000人近く減少するとし,今年度受診していない場合は,次年度のがん検診開始前の2021年1~3月などの閑散期に受診してほしいと呼びかけた。また,HPVワクチンによる子宮頸がんリスクの低下を示す研究が発表されたが,日本のHPVワクチン接種率はほぼゼロに等しく,国や企業が女性の子宮頸がん発症リスクへの対策を検討する必要があると述べた。
中川氏の講演の後,同アクションの認定講師である河野美和氏と和田智子氏を交えてトークセッションが行われた。認定講師は,同アクションにより任命されたがん経験者で,セミナーや出張講座で啓発活動を行っている。両氏は,自身のがん闘病体験を交えてがん検診の重要性を訴えた。また,自身もがんサバイバーである中川氏は,がん罹患前は,がんについての講演を行う立場にありながら自身ががんに罹患すると考えていなかったと述べ,がん発症にはがん関連遺伝子の偶発的な損傷といった運の要素もあるとし,早期に発見することが重要だと重ねて強調した。
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●問い合わせ先
がん対策推進企業アクション事務局
TEL 03-6441-6574
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