令和元年度がん対策推進企業アクション統括セミナーを開催
がん対策推進パートナー賞・厚生労働大臣賞を表彰
2020-3-23
受賞企業の代表者が登壇し,
パネルディスカッションが行われた
2020年3月18日(水),時事通信ホール(東京都中央区)で,がん対策推進企業アクションが令和元年度の統括セミナーを開催した。同アクションは,がん検診受診率の50%以上への引き上げと,がんになっても働き続けられる社会の構築をめざす国家プロジェクトで,厚生労働省の委託事業として2009年に事業を開始。がん対策啓発ツールの作成や出張講座などを行うほか,ともにがん対策に取り組む企業・団体を推進パートナーとして募集し,登録した企業・団体数は2020年3月13日時点で3315社・団体に上る。また同アクションでは,がん対策に特に積極的な取り組みを行う企業・団体を毎年表彰しており,本セミナーで令和元年度の表彰式が行われた。厚生労働大臣賞は,社内で「治療と仕事の両立支援ガイドブック(本人編,上司編)」などを作成,活用している野村證券(株)が受賞したほか,がん対策推進パートナー賞のうち,「検診部門」はテルモ(株),「治療と仕事の両立部門」は田辺三菱製薬(株)と長野朝日放送(株)の2社がそれぞれ受賞した。また,「情報提供部門」は,「がん予防と治療と仕事の両立支援」をテーマに,東京大学医学部附属病院の中川恵一氏の講義とe-learningを行った富士通(株)が受賞した。
表彰式に続いて,講演が3演題行われた。まず,厚生労働省健康局の江浪武志氏が「我が国におけるがん対策について」と題して講演を行った。江浪氏は,平成30年3月に閣議決定された「第3期がん対策推進基本計画」では,科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実や患者本位のがん医療の実現を目標とし,がん予防やがん医療の充実,がんとの共生を3つの施策として掲げていることを紹介。さらに,がん研究や人材育成,がん教育や普及啓発がこれらの施策を支える基盤であり,同アクションを始めとする団体や活動の力を借りつつ,がん対策を進めていきたいと述べた。
続いて,同アクションアドバイザリーボード議長を務める東京大学の中川氏が,「早期発見と治療法の選択が両立支援のカギ」と題して講演した。中川氏は,早期発見の有用性を指摘した上で,放射線治療は,手術療法と生存率にほとんど差がなく,また通院で治療可能な場合が多いなど,生活や仕事への影響が少ない点がメリットであると述べた。さらに,定位放射線治療(ピンポイント照射)は膵癌や5個以内の少数転移(オリゴメタスタシス)などにも保険適用が拡大されるなど,転移すなわち薬物療法という図式からのパラダイム・シフトが生じているとし,放射線治療は治療と就労の両立の実現に有用だと強調した。
最後に,東京医科大学医学総合研究所の落谷孝広氏が「血液マイクロRNAによるがん早期発見の実用化と課題」と題して講演した。血液中のマイクロRNAは,がん細胞が初期から積極的に分泌している物質であり,マイクロRNAをマーカーとして活用することで,これまでに発見されているたんぱく性の腫瘍マーカーに比べ,より早期でのがんの発見が可能になる。落谷氏は,自身が研究開発責任者を務めた独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)研究開発プロジェクト「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」での成果を紹介し,感度特異度の高い早期診断マーカーは,がんの死亡率改善に貢献するほか,治療効果の予測や新規薬剤の開発への応用も期待できるとし,実用化に向けた取り組みが行われていることを解説した。
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講演に続いて,表彰企業5社による事例発表と,「企業におけるがん検診と就労支援の取り組み」をテーマにパネルディスカッションが行われた。座長を務めた中川氏は,各企業の取り組みを講評する中で,「仕事と治療の両立部門」を受賞した長野朝日放送は従業員数88名とほかの受賞企業に比べ小規模であることを挙げ,同アクションの推進パートナー企業の約半数が従業員数100名以下の中小企業であり,今後は,それらの企業で取り組みが重要な課題になると述べた。なお,本セミナーは新型コロナウイルス感染防止対策のため,ライブ配信のみでの開催となった。
●問い合わせ先
がん対策推進企業アクション事務局
TEL 03-6441-6574
http://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/