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さぎぬま脳神経クリニック
スピードという新たな価値が加わったECHELON Smart Plusへの更新で診断能と検査スループットが向上
Smart Theatreでストレスの少ない検査を提供
2020-4-24
さぎぬま脳神経クリニックは,2007年の開院時から稼働していた日立の超電導1.5T MRI「ECHELON Vega」を,2019年9月に最新装置「ECHELON Smart Plus」にリプレイスした。高画質と静音機能に“スピード”を兼ね備えたECHELON Smart Plusと,同時に導入したMRIボア内映像投影システム「Smart Theatre」により,迅速かつ快適なMRI検査を提供し,脳疾患の早期発見・早期治療に努めている。ECHELON Smart Plusへの更新と活用について,島崎賢仁院長と診療放射線技師の小林達明技師に取材した。
脳疾患の予防と早期発見・早期治療で地域のQOLに貢献
さぎぬま脳神経クリニックは,田園都市線・鷺沼駅から徒歩1分のメディカルモール内に2007年に開業した。島崎院長は,川崎市立川崎病院で脳神経外科医長を務めるなど,第一線で多くの重症患者を診てきた経験から,脳疾患における早期発見・早期治療と一次予防の大切さを強く感じ,それを実践したいとの思いから開院に至った。「専門医が最善の医療を提供し,地域のQOLに貢献する」を理念に掲げ,開院当初から日立のECHELON Vegaや16列マルチスライスCT「ECLOS」などを導入。高度な画像検査の迅速な実施による早期診断,そして,治療へとつなげる診療を展開してきた。
頭痛やめまい,しびれ,物忘れなど,さまざまな症状で受診する患者の年齢層は幅広く,1日あたり40〜50人が来院する。また,MRIを用いた脳ドックも実施しており,近年は脳健診を推奨されている運転従事者が連日のように訪れる。
同クリニックでは,開院時から活用してきたECHELON Vegaを,2019年9月に最新のECHELON Smart Plusに更新した。装置更新のねらいについて,島崎院長は,「開業から10年以上経過し,MRI装置の技術や機能は大きく進化しました。より性能の上がった装置で,臨床に有用な新しい機能を使って診療を提供したいと思い,更新を決めました」と述べる。
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ルーチンで高速撮像が可能なECHELON Smart Plusを採用
装置の選定では他社製装置も含め検討し,候補装置を他院に見に行くなどした結果,ECHELON Smart Plusの導入が決まった。島崎院長は,選定理由として静音化や体動補正に加え,高速撮像が大きな決め手となったと話す。
「高速撮像は各社が取り組んでいますが,シーケンスや条件によって制限がかかることもあります。ECHELON Smart Plusは,当院で通常行う検査では基本的に高速撮像が可能であり,さらに静音化など患者さんの負担を軽減する機能との併用も可能なことから導入を決めました」
ECHELON Smart Plusは,確かな画像品質と静音性を両立した「ECHELON Smart」に,スピードという新たな価値を加えた最新装置である。大きな特長である高速撮像技術“IP-RAPID”は,画質を維持したまま撮像時間を約50%短縮でき,さまざまな部位やシーケンスへの適用,静音機能“Smart Comfort”との併用も可能だ。
島崎院長はIP-RAPIDについて,「患者さんが増えているため増加する検査に対応することと,各検査の撮像時間が短くなることで,緊急の患者さんの検査を入れやすくなることに期待しました。また,時間を短縮せずに空間分解能の向上に利用することもできるので,診断能が上がるというメリットもあると考えています」と述べる。同クリニックでは,通常の診察においては撮像時間を短縮し,脳ドックでは逆に高分解能で撮像する運用を行っており,静音機能も併用して患者負担を軽減している。
多忙な検査現場を支援する自動化機能“AutoExam”
同クリニックでは現在,1日あたり約15件のMRI検査を実施している。近隣の医療機関からの紹介で整形領域や腹部の検査も行うが,頭部検査が大部分を占める。頭部検査は,基本的にT2強調画像,T1強調画像,FLAIR,MRAをアキシャルで撮像し,必要に応じてT2*強調画像,拡散強調画像,サジタルやコロナルを追加している。認知症疑いの患者では,VSRADを用いた解析も行っている。
複数の診療放射線技師,臨床検査技師が在籍するが,小林技師の勤務日は一人体制が多く,CTと一般撮影の件数は少ないものの多忙を極める。ECHELON Smart Plusへの更新は,そのような小林技師の働き方にも大きな変化をもたらした。
「装置更新で一番感動したのが,位置決めの自動化です。正確に位置決めができると自分のゆとりが持てるためとても楽です。位置決め作業の大部分がなくなる分,電子カルテを確認したり,所見があった時に次に何を撮像するかを検討したりといった時間を増やすことができます」
検査全体のスループット向上をコンセプトに開発されたECHELON Smart Plusには,自動位置決め機能(AutoPose)や頭部MRAの自動クリッピング処理(AutoClip)などのAutoExamが実装され,検査の自動化や時間短縮が可能だ。自動化について小林技師は,「誰が操作しても同じように位置決めなどができる点も,非常に有用です」と述べる。
診療においては,IP-RAPIDを撮像時間短縮に活用しており,ルーチン撮像は10分程度で完了する。画像処理のスピードも向上していることから,小林技師は,「20件近くの検査を行った日にも,通常どおりに業務を終了することができました」と,スループット向上の効果を話す。また,脳ドックルーチンシーケンスは,1.5T装置として小林技師が求める“関東で一番良い画質”を得られるようなシーケンスが組まれている。これは,日立のアプリケーションスペシャリストとの協働により実現した。
■症例1:脳ドック(被検者A)
■症例2:脳ドック(被検者B)
■症例3:左中大脳動脈自然閉塞
Smart Theatreで患者の検査ストレスを軽減
ECHELON Smart Plusの画質について島崎院長は,「画質がよりクリアになったことに加え,IP-RAPIDを活用して高画質化することで,血管や動脈瘤が明瞭に描出されます。2mm程度の微小な動脈瘤の検出,さらには形状もわかるため,破裂しやすい動脈瘤であるかを見極めることができ,治療適応の判断をしやすいです。また,より細い血管が見えるため,血管奇形の経過観察にも有用です」と話す。
緊急の患者についても,受け入れやすくなったため,迅速な診断や病院への搬送までの時間短縮が可能になった。
また,MRIボア内映像投影システムSmart Theatreも患者に大きな恩恵をもたらしている。島崎院長は,「以前から,閉所恐怖症などで検査ができず,診断をつけられないという状況を改善したいと考えていました。Smart Theatreによりボア内でも空間の広がりを感じられるのではと考え,現在は全例で使用しています」と話す。実際に,Smart Theatreがあることで検査を受けられたケースもあり,小林技師は「閉所恐怖症の患者さんは閉塞感を軽減するためにヘッドコイルの前面を外して検査していますが,『眼の前に映像があってよかった』と言われることが多く,ストレスを緩和できていると思います」と話す。
超電導MRIの高画質・高機能が臨床にさらなる価値を提供
ECHELON Smart Plusでは,BSI(磁化率強調画像)や頸動脈プラークイメージング,ASL Perfusionによる血流評価も可能で,同クリニックでは現在,トライアルで撮像を行っている。小林技師は,「急性期脳梗塞の患者さんを病院に送る際に,血流情報も併せて送ることで,治療方針の決定にも役立ててもらえると思います」と述べ,積極的に取り組みたいと話す。
島崎院長は,「MRIの進化により,以前はほかのモダリティでしかできなかった評価をMRIでもできるようになってきました。メーカーには,開発や基礎研究にさらに取り組んでもらい,より患者さんの負担が少ない検査を提供できるようになればと期待しています」と展望する。
患者のストレスを軽減しながら高画質を提供するECHELON Smart Plusが,地域のよりいっそうのQOL向上に貢献していくだろう。
(2020年1月27日取材)
〒216-0004
神奈川県川崎市宮前区鷺沼3-2-6
さぎぬまメディカルモール2 1F
TEL 044-860-5131
http://www.noushinkei.com
診療科目:脳神経外科,放射線科
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