─日本放射線技師会会長の立場から,今回の改定をどのように受け止めていますか。
北村:今回の改定で一番評価しているのは,「デジタルエックス線撮影料」が新設されたことです。これは診療放射線技師の撮影手技が評価されたものだと考えています。デジタル化によって,撮影が容易になると考えられがちですが,適切な撮影を行い,その後の検像までもしっかりやっていかなければなりません。つまりデジタル化によって,われわれ診療放射線技師の責任が大きくなったと言えます。現在,国の政策としてもデジタル化,フィルムレス化を進めており,診療所でもデジタル装置が普及してきています。こうした状況を踏まえ,次回の改定では,さらにわれわれの技術が評価されるような方向にもっていきたいと思います。
また,今回の改定では,16列以上のマルチスライスCTの評価が新設され,MRIも1.5T装置の点数が引き上げられました。これについて,日本放射線技師会としては,単にスライス数や磁場強度という区分だけで評価されてしまうのは,問題ではないかと考えています。診療放射線技師の撮影手技の技術料や,臨床における効果,患者さんのQOL(Quality of Life)も含めた総合的な判断で点数をつける必要があります。
─検査にかかわる診療放射線技師の能力の評価が重要だということでしょうか。
北村:そのとおりです。装置が進歩しても,われわれの技術や業務の重要性は同じであり,いままではその評価がされていません。ただし,今回の改定では,当該月の2回目以降の撮影料が,従来の650点という固定された点数から,「所定点数の100分の80」となりました。これについては,われわれが従来から主張してきたことであって,業務に対する評価として認められたのだと思います。
─そのほかの改正内容については,どのようにお考えですか。
北村:医療機器の安全管理については,医療機器安全管理料2(放射線治療機器)の点数が引き上げられました。しかし,中医協でも説明したのですが,われわれとしては日常的に医療機器の保守点検,品質管理を行っています。X線が正確に出るか,造影剤注入用のインジェクタが正しく動作するかということなどに日々取り組んでおり,これについて評価されていないことは残念です。CTやMRIの保守点検のコストは非常に大きく,医療機関にとっても大きな負担となっています。2005年の薬事法改正と2007年の医療法改正により,医療機器の安全管理が義務化されたにもかかわらず,一部の医療機器にしか安全管理料が加算されないのは,おかしいのではないかと思います。
─装置の買い替え年数が延びていたり,放射線治療のニーズも高まっているだけに,安全管理はますます重要になってきています。
北村:X線撮影装置の更新年数は10年を超えていますが,放射線被ばくが伴う以上,常に品質管理をしていく必要があります。また,放射線治療にしても,がん診療連携拠点病院では品質管理者を置かなくてはいけない規定になっています。しかし,品質管理を行う人材が不足しているのも現実です。ですから,人材を育成していくことも,日本放射線技師会の大切な役割だと思っています。 |