(株)AZEは2012年9月21日(金),ANAインターコンチネンタルホテル東京(東京都港区)にて「INNOVATIVE AZE 2012 TOKYO」を開催した。医用画像処理ワークステーションAZE VirtualPlaceシリーズの使用経験や有用性についての講演2題と,製品最新情報紹介が行われ,ユーザーを中心に多くの参加者が出席した。また,会場ロビーに設けられた画像診断ビューワ「AZE VirtualPlace PHOENIX」などの実機展示コーナーでは,新機能のデモンストレーションも行われた。
はじめに,マーケティング部部長・山崎和人氏が開会の挨拶に立った。山崎氏は,3Dワークステーションの競争は熾烈を極めているが,1999年の創業から14年目を迎えた同社としては,VirtualPlaceシリーズにさらに磨きをかけ,今秋にはまったく新しいvolume registration viewer 「AZE VirtualPlace PHOENIX(以下,PHOENIX)」を投入予定であると述べた。そして,今後グローバルに,より積極的に展開していく計画であるとし,2013年4月のITEM2013もユニークなブースで来場者を迎えたいと意気込みを語った。
続いて,マーケティング部の阪本 剛氏が,ワークステーション最新情報としてPHOENIXを紹介した。まったく新しいコンセプトで誕生したPHOENIXは,読影を効率的かつ正確に行うコックピットとして,読影負担の大幅な軽減を支援する。PHOENIXは,簡便な操作,わかりやすい画面表示が特長であり,高精度の位置あわせ(レジストレーション)や,腫瘍の経時的変化を可視化できる重ね合わせなどの機能を搭載し,読影の負担軽減を追究している。阪本氏は,VirtualPlaceは各科に特化したアプリケーションを開発してきたが,その開発を続けるとともに,一般に幅広く使えるPHOENIXのようなグローバルな製品を開発していくと述べた。そして,ITEM2013でリリースを予定している開発中のアプリケーション機能の一部として,CABGの自動解析,右室解析,大腸解析,iPad上で簡単に操作可能な肝臓解析などを紹介した。また,VirtualPlaceの特長の1つであるシンクライアント方式採用のネットワークシステムを支えるものとして,同社では最高品質のPCを準備し,低価格で提供できることをアピールした。
続く講演では,東京大学医学部附属病院放射線科教授の大友 邦氏を座長に,2題の講演が行われた。
はじめに,東邦大学医療センター大橋病院放射線科准教授の五味達哉氏が,「ボリュームレジストレーションビューアPHOENIXの使用経験—過去画像との重ね合わせによる比較読影の臨床診断における有用性—」と題して,画像の位置合わせ機能,重ね合わせ機能の臨床的有用性について講演した。放射線科では,CT,MRIの検査件数の増加やCT撮影範囲の拡大,MRIの撮像シーケンスと撮像枚数の増加,読影管理加算2の普及などによる読影負担の増加に,放射線科医の増加が比例していない現状を説明した五味氏は,そのような読影環境を改善するツールとしてPHOENIXが開発されたと述べた。
五味氏は,読影では,転移検索,腫瘍の経過観察(手術前後,化学療法前後),術後の評価(悪性腫瘍に限らず)などに多くの時間が割かれているとし,作業のなかでも特に時間を要するのが,比較する過去画像との位置合わせであると指摘。その時間を短くすることができれば,読影件数の増加や,より良いレポートの作成に時間をあてることができるとした。腹部の2D画像を提示し,ボリュームレジストレーション機能の性能について解説した五味氏は,位置合わせの精度の高さに加え,CTとMRIの位置合わせも可能であることや,シーケンスごとに撮像を行うために同日検査でも位置ズレが発生してしまうMRI画像でも,当日検査画像,過去画像の位置合わせが短時間で可能であると述べた。また,重ね合わせ機能については,髄膜腫症例を取り上げて解説。腫瘍の評価は,過去画像と比較してどのように変化しているかを見る必要があることから,ボリュームレジストレーションで位置を合わせ,重ね合わせることで,比較が容易になると述べた。さらに,ズレの程度をカラー表示することができ,腫瘍の大きさの変化を色で,視覚的に把握することができる。
最後に五味氏は,PHOENIXは,1)過去画像との位置合わせが容易,2)過去画像だけでなく,実際に読影する画像の位置あわせが同時に可能,3)CT画像とMRI画像が混在していても位置合わせが可能,4)腫瘍の重ね合わせが可能,5)画像の傾きの補正も可能,であるとした。そして,今後の課題としては,さらなる位置合わせの時間短縮化,撮像範囲が広範な場合の位置合わせ,冠状断・矢状断での位置合わせ,外部からの持ち込み画像との連携などを挙げ,特に画像の客観性の担保について詳しく検討する必要があるとした。課題はあるものの,PHOENIXによりレポート作成時間が短縮化しており,今後,さらなる精度向上,時間短縮を期待すると締めくくった。
次に,国家公務員共済組合連合会 熊本中央病院放射線診断科部長の片平和博氏が,「心臓CTにおける画像解析と読影の融合—解析疲労・読影疲労対策の新機能,満を持して登場」を講演した。心臓CTは労力がかかる分野であり,特に撮影の条件が悪い場合には大変な苦労を要することから,片平氏は,その苦労を軽減するものとしてVirtualPlaceの機能を紹介した。
まず,近年検査が増え続けて,解析・読影に大きな負担がかかる心臓CTについて,対象となる症例や心臓CTの有用性を述べ,心臓CT増加の背景を解説した。プラーク占有率が40%程度になるまで外径が大きくなり内腔が保たれるpositive remodelingが,破裂しやすく急性心筋梗塞になりやすいことや,近年のスタディから,プラークの性状を見ることが重要であることがわかってきており,片平氏はこれを念頭に置きながら画像解析することの大切さを述べた。また,positive remodeling,微小石灰化,low attenuation plaquesを検査で把握する必要性を述べ,内腔に有意狭窄がなくても,プラークが破綻して急性心筋梗塞を起こすような,CAGでは評価が難しいケースも多いとした。そして,CPR作成時に留意すべき点として,偏心性,positive emodeling,lipid coreの存在,微小石灰化を伴うプラーク表面の不整・陥凹を挙げ,また,プラークの確認には短軸像をしっかると作ることが重要であると強調した。
一方で,プラーク評価に心臓CTは有用であるが,冠動脈の走行が三次元的であることや,最適フェーズが部位により異なるため比較が難しいことを指摘。また,sliding MIPの連動比較モードを用いる際には,位置ズレの微調整が必要であるとした。
心臓CT件数増加のもうひとつの理由が,陰性適中率の高さにあるとし,心電図,トロポニン陰性の胸痛患者に対し,陰性確認のために心臓CTを施行する機会が増えているとした。そして,検査件数増加により,読影医の“解析疲労・読影疲労”が非常に増えていることから,ワークステーションを用いて負担を軽減することが望まれるとした。
片平氏は,AZE社がこれまでも,アプリケーションやネットワーク型ワークステーションの開発,sliding thin slab MIP法の導入などにより,解析疲労・読影疲労の軽減に貢献してきたとし,具体例として,ネットワーク型ワークステーションを用いての解析データを利用したボリューム読影について述べ,診断的価値が高いと評価した。
そして,解析疲労・読影疲労を来す原因が,冠動脈高度石灰化,息止め不良,頻脈・不整脈にあると述べた片平氏は,リスクが高くCAGが正当化される高度石灰化と,解析時にはどうすることもできない息止め不良は除き,診断可能な最適フェーズを探す解析作業で疲労を増す頻脈・不整脈に注目して,その解決策について解説した。
解析疲労を軽減できる機能として,4D-sliding thin slab MIP法で解析をしながら,sliding-MIP画像から自動でCPR画像を作成し,さらに分割CPR画像の制御点をプロットしたボリューム画像をセットで保存する機能を紹介。現在,開発中の機能で,作業自体は2,3分で完了することができ,解析負担を大幅に改善するだろうと述べた。
終わりに片平氏はPHOENIXについても触れ,その特長である位置合わせや重ね合わせはPACSでもある程度できるものの,ボリュームレジストレーションの位置合わせの精度の高さや,slidingモードでは画面をドラッグして回転することで断面(角度)の変更を直感的に行え,かつ,すべての断面で精度の高い位置合わせが行われ,比較読影が行える点などを評価した。そして,過去画像とのボリュームの位置合わせや,心臓CTで異なるフェーズの位置合わせが行える点などがPHOENIXの利点であり,より高度な読影を容易に行うことが可能になると評価した。
最後に,代表取締役の畦元将吾氏が閉会の挨拶に立ち,ユーザーの要望を受けて作成したVirtualPlace 3Dガイド(基礎編,部位別編,上級編)などを紹介するとともに,今後の同社の展望を述べ,ユーザーの支援への感謝と,引き続きの支援を呼びかけた。 |