第1回消化管先進画像診断研究会(Gastrointestinal Advanced Imaging Academy:通称GAIA)が,9月2日(日),東京都港区のキヤノンホールS(キヤノンSタワー3階)で開催された。堀井薬品工業他:共催。キヤノンマーケティングジャパン,テラリコン・インコーポレイテッド:特別協賛。
同研究会は,日本初の大腸3D-CTの大規模多施設共同臨床試験であるJANCT(Japanese National CT colonography Trial)の主要メンバーを中心に新たに組織された研究会で,GAIAという名前のように「日本にとどまることなく地球(世界)規模でエビデンスの収集に努め、消化管の先進画像診断を検証・普及啓蒙していくこと」を目的とする。同研究会の代表世話人で,第1回当番世話人を務める亀田メディカルセンター幕張の永田浩一氏は,開会の挨拶で次のように述べた。
「JANCTは,関係各位の協力を得てACRINに次ぐ世界で2番目の症例数を集めて,大腸3D-CTによるスクリーニングの有用性を明らかにすることができた。JANCTを進める中で新たな課題も明らかになり,解決に向けた次の臨床試験(低用量腸管前処置方法による多施設臨床研究:UMIN6665など)もスタートしている。GAIAは,それらのプロジェクトをサポートする組織であると同時に,さらに次の消化管先進画像診断技術の精度検証や知見の発信を“常識にとらわれず”に進めていきたい」
2009年からスタートしたJANCTは,14施設が参加し,1253例を超える症例を集め2011年に終了した。多施設の共同臨床試験としては初めて,CADを用いた前向きスタディとしても注目されている。その結果は,本年10月に行われる日本消化器関連学会週間(JDDW2012,神戸)と,11月の北米放射線学会(RSNA2012,シカゴ)で発表される予定だ。
今回の研究会では,午前の部として第1部「講演:先進画像診断の展望」が行われ,“大腸3D-CT”,“大腸カプセル”,“遠隔診断”をテーマに4題の講演が行われた。大腸3D-CTのセッションでは,遠藤俊吾氏(福島県立医科大学会津医療センター準備室)を司会として,平山眞章氏(KKR札幌医療センター斗南病院)と歌野健一氏(自治医科大学)が講演した。
最初に,「大腸3D-CTの現状と展望」と題して講演した平山氏は,日本における大腸がん検診の受診率向上をめざす上で,CTCによるスクリーニング検査は必要不可欠であり,欧米では多施設共同研究の結果,CTCによるスクリーニングが推奨されることになったが,日本でのエビデンスの確立と臨床応用をめざして行ったのがJANCTであると説明した。JANCTでは,米国のガイドラインを参考にして,PEG-C法によるタギング,2D,3Dによる読影などを取り入れて進められている。平山氏は前処置の方法について,低用量PEGのほか,大腸内視鏡検査用として7月にFDAの認可を受けた150ccを2回飲むだけの前処置薬(prepopik)なども登場しており,今後より少ない量で前処置が可能な方法が工夫されていくだろうとした。また,CTCの被ばくについては,2006年に発表されたNIHの論文において,5年おきにCTCを行った場合のシミュレーションでは,CTCによるがん罹患数と大腸がん救命数による利益率は35〜47倍というデータが出ており,実施側がリスクとメリットについてしっかりと理解して行うことが必要だと述べた。
歌野氏は,「日本発の大腸3D−CTの精度検証“JANCTとUMIN6665”の紹介」を講演した。歌野氏は,JANCTの取り組みを受けて,CTCによる大腸がんスクリーニングのポイントとして,1)読影トレーニング,2)Fecal Tagging,3)CO2自動注入器,4)ワークステーションとCADの活用,を挙げ,これによってCTC検査の被検者の受容性が高まり精度の高い検査が可能になったと評価した。その上で,歌野氏は自らJANCTのプロトコルによるCTC検診を受けたところ,PEG-C法による前処置の投与量の負担を実感したことから,非イオン性ヨード造影剤を用いた,より低用量の前処置法によるCTCの多施設臨床試験(UMIN6665,7施設300症例)をスタートしたと述べ,検査時のさらなる負担軽減に向けて取り組んでいることを紹介した。
大腸カプセルのセッションでは,野崎良一氏(大腸肛門病センター高野病院)を司会として,角川康夫氏(国立がん研究センター)が「大腸カプセル内視鏡 スクリーニングへの可能性と今後の展望」を講演した。角川氏は,同センターでの大腸用カプセル内視鏡(ギブンイメージング社製PillCam COLON)の使用経験を紹介し,画質やデータ収集方式は第2世代(PillCam COLON2)になって大きく向上しており,指摘が困難とされたFlat Lesson型についても予想より判別が可能だと述べた。一方で,10万枚以上の画像から読影が必要でトレーニングが必須であること,前処置も当日禁食,3.8リットルの服用が必要などの課題があるが,読影に関しては日本には大腸内視鏡の歴史と経験があることから高いレベルでのスタートが期待できると述べた。
遠隔診断では,池原貴志子氏(山陽病院)が司会を務め,イーサイトヘルスケアの松尾義朋氏が「クラウド型遠隔画像診断:女性医師支援の観点からの有用性を考える」と題して講演した。松尾氏は,遠隔画像診断の歴史を振り返り,クラウド型になることでインフラへの投資コストを抑え,データやソフトウエアの存在を意識せずにどこでも読影業務が可能になり,サービスとしてのメリットが生まれると述べた。その上で,これからの方向性として,ライフサイクルに渡るすべての医療データをクラウド化し情報共有することで,医師の勤務形態も変えることができ,結婚や出産などによって医師としてのキャリアを継続しにくい女性医師の支援にもつながるのではないかと提案した。
第1部の最後には,特別発言として日比紀文氏(慶應義塾大学医学部内科学教室主任教授),石川 勉氏(獨協医科大学放射線科教授),光島 徹氏(亀田メディカルセンター幕張統括院長)が,それぞれ講演を総括してコメントし,消化管の画像診断におけるGAIAの今後の活動に期待を述べると同時に,「基本(内視鏡検査)をないがしろにするべからず」(光島氏)と叱咤激励した。
午後の部は,第2部「大腸3D-CT実践トレーニング」が行われ,最初に松本啓志氏(川崎医科大学)を司会として,加藤貴司氏(北海道消化器病院)による「読影の基本的な流れ」と,本田徹郎氏(長崎県上五島病院)による「読影のピットフォール」の講義が行われ,続いて会場に設置されたAquarius iNtuition Server端末(テラリコン・インコーポレイテッド)20台を使って,ワークステーションの操作方法の解説と実際の症例データによる読影のハンズオントレーニングが行われた
なお,会場ではCTC関連を中心とする先進画像診断関連製品の展示が行われた。出展社は次のとおり。イーサイトヘルスケア,エーディア,エルクコーポレーション,シーメンス・ジャパン,GEヘルスケア・ジャパン,日本メドラッド,根本杏林堂,堀井薬品工業,日立メディコ(五十音順)。
会場風景 |
午後の部では大腸3D-CTの
ハンズオントレーニングが行われた。 |
ハンズオンに使用された
Aquarius iNtuition Server端末 |
ロビーでは大腸3D-CT検査の機器,
システムを中心に展示を開催 |
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