11月26日(金),27日(土)に開催された第65回日本大腸肛門病学会学術集会における2日目の27日に,大腸3次元CTハンズオントレーニングコースが行われた(共催:第65回日本大腸肛門病学会学術集会,大腸3次元CT研究会,(株)AZE,GEヘルスケア・ジャパン(株),協賛:味の素製薬(株),堀井薬品工業(株),ジョンソン・エンド・ジョンソン(株))。
冒頭,同学術集会会長の松田保秀氏(松田病院院長)が開会の辞に立った。松田氏は,大腸3D-CT(CTコロノグラフィ)は将来的には,消化器科医にとって重要な技術となると常々考えていたため,今回のハンズオントレーニングは大腸3D-CTを知る絶好の機会であり,会員にとって有意義なものとなることを願うと述べた。
続いて,マサチューセッツ総合病院の吉田広行氏と,北海道社会事業協会小樽病院副院長の平山眞章氏が,「大腸3D-CT検査の現状」を概説した。
まず吉田氏が,世界の現状について報告した。米国では,米国National CTC Trial(ACRIN 6664)やイタリアのIMPACT Studyなど欧米の臨床試験の良好な結果を受け,同検査法の法制化が進み,現在では膨大な知識による検査方法,およびトレーニング方法の確立が熱心に行われているという。一方,わが国でも精査としての大腸内視鏡検査を補う手段として,わが国の現状に即した形で大腸3D-CTが提供されるべきとし,わが国初の大規模多施設共同臨床研究“Japanese National CT Colonography Trail(JANCT)”の成果に期待を寄せているとした。
日本の現状については平山氏が,高い内視鏡検査技術を持つわが国においてなぜ大腸3D-CT検査が必要なのか,内視鏡検査の受診率の低さや患者負担などの面から説明した。また,“JANCT”について,規模は世界第2位であり,CAD(コンピュータ支援画像診断)を用いた最大規模の前向き試験であると紹介し,大腸3D-CT検査の大腸ポリープおよび大腸がんの診断能を大腸内視鏡検査を対照に比較評価することが目的だと説明した。試験の結果については2011年中には報告できる予定だという。
次に,大腸CT検査について,前処置(講師:長崎県上五島病院内科医・内視鏡部長・本田徹郎氏),撮影方法(講師:長崎県上五島病院放射線科・安田貴明氏),読影方法(講師:マサチューセッツ総合病院・永田浩一氏),ワークステーション(WS)操作方法に分けてより実践的な講義が行われた。
その後,AZE社とGEヘルスケア・ジャパン社によるWS操作方法の説明に続き,出席者が実際に操作するハンズオントレーニングが行われた。ハンズオントレーニングでは,まず永田氏,北海道社会保険病院消化器センター長の古家 乾氏による読影デモが行われ,続いて読影トレーニングが約40分間行われた。読影トレーニングでは4症例が用意され,時間後に答え合わせとして,本田氏と平山氏から症例解説が行われた。
これまで放射線科関連の学会で開催されていたハンズオントレーニングコースが,今回初めて消化器科関連学会で開催されたが,まずはWSの操作に慣れることが大腸3D-CTの消化器科医への普及のためには肝要かと思われた。わが国では,まだ大腸3D-CTの臨床応用は始まったばかりであり,JANCTで良好な結果が得られれば,それを契機に消化器科医からのさらなる関心が得られることは間違いないであろう。吉田氏いわく,高い大腸内視鏡検査技術を持つわが国の消化器科医が大腸3D-CT検査技術を身に付ければ,どれほどの高い検査精度が得られるのだろうかと,欧米の医師からの関心は高いという。これは欧米,中国,韓国など,他国の消化器科医では実現できないことで,わが国だからこそできるということも踏まえれば,同ハンズオントレーニングやJANCTによる大腸3D-CT検査の啓発が,世界の大腸がん医療へ大きな貢献を果たすことになるかもしれない。
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ハンズオントレーニング風景 |
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