第2回大腸3次元CT研究会が7月11日(土),12日(日),丸の内トラストタワーN館13階(協賛する株式会社AZE社内)にて開催された。同研究会がスタートさせる予定の「大腸3D-CT検査(CT colonography)と大腸内視鏡検査による大腸腫瘍検出能の精度比較に関する検討─コンピュータ支援診断を活用した多施設共同臨床試験:Japanese National CT colonography trial (JANCT)*1」の概要説明および参加施設のハンズオントレーニングが行われた。1日目は特別講演やテーマ別講義,ワークステーションデモ,2日目はワークステーションのハンズオントレーニングや研究デザイン・プロトコールの説明などが実施された。
日本初の大腸3D-CT検査の多施設共同臨床試験(JANCT:ジャンクト)は,日本の多くの消化器科医,放射線科医の協力により,消化器科と放射線科が一緒に読影に参加する臨床試験で,今年8月から順次開始される予定である。約1500人の患者を対象に内視鏡検査と大腸3D‐CT検査のポリープ診断能の比較を行う。参加施設は12施設(自治医科大学,自治医科大学さいたま医療センター,東京女子医科大学東医療センター,藤田保健衛生大学,聖路加国際病院,秋田赤十字病院,浜松南病院,小樽協会病院,東京西徳洲会病院,北海道社会保険病院,北海道消化器科病院,長崎上五島病院)。味の素株式会社,株式会社AZE,堀井薬品工業株式会社,株式会社キャンサースキャンが協賛している。また,放射線科,外科,消化器科などの著名な医師が多数,顧問として協力している*2。
初日に開会の挨拶に立った吉田広行氏(マサチューセッツ総合病院)から,JANCT開始の経緯や意義について説明がなされた。米国では,急増する大腸がん患者のスクリーニングにおいて内視鏡検査を補完しうる大腸CT検査のニーズが高まるとともに,2000〜2005年にかけて3つの大規模多施設共同臨床試験が実施された。この3大臨床試験の結果を受けて,さらに米国ではNational CT Colonography Trial(ACRIN 6664),ドイツではMunich Study,イタリアではIMPACT Studyが2008〜2009年にかけて終了し,英国ではSIGGAR,イタリアではIMPACT2,米国ではlaxative - free CTCが実施中という。これら各国の臨床試験で大腸CT検査の診断能が優れた結果を示したことから,2008年のCA Cancer J Clin誌に大腸がん検診方法の1つとして内視鏡と並んで大腸CT検査を推奨するガイドラインが掲載され,米国では大腸CT検査による大腸がんスクリーニングが急速に普及し始めている。翻って日本では,大腸がん患者が急増しているにもかかわらず注腸検査や内視鏡検査が発達している現状から,大腸CT検査への取り組みは始まったばかりと言える。また日本では術前診断が主であり,スクリーニング目的では行われていない。そこで,大腸CT検査の有用性を検証し,エビデンスを確立して,スクリーニングも含めた臨床での普及を図るためには日本での臨床試験が必須と考え,ACRINの日本版と言えるJANCT実施に至ったと吉田氏は述べた。
続いて,獨協医科大学放射線部・石川 勉氏による特別講演「本邦における大腸がん検査─注腸検査からCT検査へ」のほか,マサチューセッツ総合病院・永田浩一氏の大腸3D‐CT検査の腸管前処置,小樽協会病院・平山眞章氏の大腸3D‐CT検査の実際の流れが講義され,AZE社製の臨床試験仕様ワークステーションデモなどが行われた。
JANCTは内視鏡の保険適用患者を対象に,共通前処置で大腸CT検査と内視鏡検査を続けて施行し,当日中に一次読影とCADによる二次読影を行う。JANCTの特徴は,内視鏡医と放射線科医が共に読影を行うこと,CADを二次読影に使うことである。世界で第二位の規模になることもあり,JANCTが成功すれば国際的に大きなインパクトを与えることは間違いない。JANCTは2009年8月より順次開始され,2010年9月に患者エンロール終了,2010年10〜12月にデータ解析,2011年1月に最終結果の公表というスケジュールが組まれている。
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UMIN試験ID : UMIN000002097 |
*2 |
放射線科顧問:金沢大学・松井修教授,自治医科大学・杉本英治教授,獨協医科大学・石川勉教授/放射線技術顧問:岐阜大学・藤田広志教授/外科顧問:自治医科大学さいたま医療センター・小西文雄教授,癌研有明病院・武藤徹一郎名誉院長,北里大学・渡邊昌彦教授,藤田保健衛生大学・前田耕太郎教授/消化器科顧問:昭和大学横浜市北部病院・工藤進英教授,慶應義塾大学・日比紀文教授,国立がんセンター・がん予防・検診研究センター・斎藤博部長,大船中央病院・上野文昭先生/国際顧問:マサチューセッツ総合病院・J. H. Thrall教授,テキサス大学サウスウエスタン医療センター・D. C. Rockey,イタリアInstitute for Cancer Research and Treatment・D. Regge先生 |
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