東芝メディカルシステムズ(株)とエレクタ(株)は,東芝メディカルシステムズ本社(栃木県大田原市)敷地内に「東芝&エレクタ 放射線治療研修センター」を開設した。2012年7月16日(月)には,その開所式が行われた。東芝メディカルシステムズの綱川 智社長,エレクタのスウェーデン本社からトーマス・プーセップ社長が出席。さらに,来賓として公益社団法人日本放射線腫瘍学会(JASTRO)専務理事の早川和重氏(北里大学病院),一般社団法人日本医学物理学会(JSMP)副会長の松本政雄氏(大阪大学大学院医学系研究科),公益社団法人日本放射線技術学会(JSRT)放射線治療分科会長の奥村雅彦氏(近畿大学医学部附属病院),日本放射線治療専門放射線技師認定機構(RTT)理事長の渡邊良晴氏(日本福祉看護・診療放射線学院)が招かれた。
開所式では,まず綱川氏が挨拶に立ち,同社がかつてライナック製造販売を行い,自社製品の製造中止後も,シーメンス・ジャパン(株)の装置を販売してきた説明。その後2010年からエレクタ製品の国内販売を手がけたきたとし,国内における放射線治療分野での長年にわたる取り組みを紹介した。その上で,エレクタとの協力により,放射線治療研修センターを設立したと述べ,がん診療の中で重要性の高まる放射線治療の質の向上に取り組んでいく同社の姿勢を示した。
また,エレクタにとって日本は米国に次ぐ重要な市場だと位置づけているプーセップ氏は,国内だけでなく,アジアでも例のない実際に治療ビームを出力できる研修施設であり,画像診断装置の分野で実績のある東芝メディカルシステムズとのパートナーシップにより実現したと説明した。
両社の社長の挨拶後には来賓から祝辞が贈られた。このうち早川氏は,国内の放射線治療を長年担ってきた東芝メディカルシステムズと海外での実績も豊富なエレクタの提携は,“ハッピーウェディング”だとコメント。ほかの来賓からもこのような研修センターが,放射線治療にかかわる放射線治療医,医学物理士や診療放射線技師などの人材に育成につながり,日本の放射線治療の発展・普及になるといった期待を込めた言葉が寄せられた。
東芝&エレクタ 放射線治療研修センターは,総工費7億円で収容人員は最大30人。延べ床面積が420m2の広さにトレーニングルーム&操作室,照射室がレイアウトされている。トレーニングルーム&操作室では,イメージガイド放射線治療(IGRT)を行うための治療計画システムなどの操作訓練を行える。室内には,エレクタの放射線治療計画システム「Xio」や,強度変調放射線治療(IMRT)の治療計画システムである「Monaco」,コームビームCT撮影を行うXVI(X-ray Volume Imaging)のワークステーション,治療マネジメントシステム「MOSAIQ」などを用意。また,照射室にはリニアック「Elekta Synergy」と東芝メディカルシステムズの16列マルチスライスCT「Aquilion LB」を設置している。Elekta Synergyはビーム出力が可能であり,実際の治療を想定した研修ができるようになっている。また,Aquilion LBは移動型ガントリとなっており,治療中のCT撮影が可能となっている。このElekta SynergyとAquilion LBを組み合わせた治療システムは現在薬事申請中で,早期の国内での販売をめざしているという。
研修センターでは,これらの設備を用いて8月から試験的に研修を行い,2013年4月以降本稼働する予定。安全性の高い,高品質な放射線治療を行うためプログラムが用意されており,導入施設のユーザーを対象に研修を提供する。両社のサービスエンジニアやアプリケーションスペシャリストの研修も行える。さらに,国内にとどまらずアジア諸国からの研修を受け入れるとしている。
研修センター外観 |
トレーニングルーム&操作室 |
Monacoなどの放射線治療関連システム |
照射室に設置されたElekta SynergyとAquilion LBを組み合わせた治療システム(国内薬事未承認) |
XVIを搭載するElekta Synergy |
ガントリ開口径90cmのAquilion LB |
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