東芝メディカルシステムズ(株)は,「画論 The Best Image 2011」を,12月18日(日),ANAインターコンチネンタルホテル東京(港区赤坂)で開催した。“画論The Best Image”は,1993年から開催されており,今年で19回目となる。全国の東芝ユーザーから応募された臨床画像について,CT,MR,超音波の各部門で撮影技術や臨床的価値などについて審査を行い,“Best Image”を選出した。
当日は,午前中に各部門に分かれて入賞施設によるプレゼンテーションとディスカッションが行われた。今年の応募総数は455件,上位入賞件数はCT24,MR15,超音波19の58件となった。それぞれの会場では,審査委員が進行を務め,各施設からのプレゼンテーションと会場,東芝スタッフを交えてのディスカッションが繰り広げられた。
また,MR会場ではランチタイムを利用して,ミニ・ランチョンシンポジウム“MR検査の明日を考える”が,杉村和朗氏(神戸大学放射線医学分野教授)を座長として行われ,Vantage Titan 3Tの最新技術・画像として“CaldioLine”を小林邦典氏(杏林大学)が,Multi-phase Transmissionを利用した“FASE3D_MPV”について青山信和氏(神戸大学)が紹介した。
午後からは,会場を移して特別講演と上位入賞画像の発表と表彰式が行われた。特別講演は,CT,MR,超音波の各領域で,東芝メディカルシステムズの最新の臨床トピックスが取り上げられた。
CTでは,本多修氏(大阪大学)が「CT診断における被ばく低減(AIDR 3D)の臨床応用」を講演した。本多氏は,被ばく低減技術であるAIDR(エイダー) 3Dの肺野領域での適応について紹介し,AIDR 3Dは従来のFBP法と比較して50mAs以下の低線量撮影で大きな効果があり,320列のボリュームスキャンと組み合わせることで,小児領域でも短時間で低線量撮影が可能になると述べた。
続いて,MRで大野良治氏(神戸大学)が「Vantage Titan 3T臨床経験と将来展望 〜体幹部を中心に」について,3T MRIの課題と利点を整理した上で,Multi-phase Transmissionによる全身の高精細な画像の収集やTime-SLIP法など非造影MRAへの取り組みなど,Vantage Titan 3Tの可能性を解説した。
最後に超音波のトピックスとして,「リウマチ診療における超音波検査の活用」を池田啓氏(千葉大学)が講演した。池田氏は,関節リウマチ診療の最近の進歩を紹介し,治療薬の開発によってより早期のリウマチ診断と治療介入が求められるとして,リウマチの初期に表れる滑膜炎の評価における超音波診断の有用性を解説した。
〈審査結果〉
上位入賞画像の発表と表彰式は,各部門の優秀賞入賞施設の発表と,その中から当日の審査で決定した最優秀賞,特別賞,テクニカル賞などが発表され,最優秀賞の施設には同社代表取締役社長の綱川智氏から賞状と記念品が授与された。
主な受賞施設(症例名)は次の通り。
〈CT部門〉
◎1〜16列部門
【最優秀賞】
倉敷中央病院
症例名:左S状静脈洞血栓
【テクニカル賞】
刈谷豊田総合病院
症例名:大量吐血,ショックバイタルにより救急搬送された一例
◎32〜160列
【最優秀賞】
横浜市立大学附属市民総合医療センター
症例名:奇静脈葉を伴う右上葉より発生した原発性肺癌
【テクニカル賞】
公立陶生病院
症例名:海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻
◎心大血管
【テクニカル賞】
九州厚生年金病院
症例名:複雑心奇形
※最優秀賞は該当なし
◎Aquilion ONE
【最優秀賞】
富永病院
症例名:もやもや病(疑い)
済生会熊本病院
症例名:大動脈ステントグラフト内挿術後エンドリーク
【テクニカル賞】
木沢記念病院
症例名:心筋梗塞
【特別賞・アイデア賞】
高瀬クリニック
症例名:代償性心室性期外収縮(PVC)二段脈のone beat撮影
【特別賞・被ばく低減賞】
岩手医科大学附属病院循環器医療センター
症例名:大動脈縮窄症 心室中隔欠損症
〈MR部門〉
◎1/0.5/0.35テスラMR部門
【最優秀賞】
済生会若草病院
症例名:下肢静脈瘤
◎1.5テスラMR部門
【最優秀賞】
揖斐厚生病院
症例名:透析shunt血管
【特別賞】
等潤病院
症例名:左内頸動脈高度狭窄
戸畑共立病院
症例名:頸動脈高度狭窄(“High Speed MRA”による血管狭窄病変の評価)
川崎医科大学附属病院
症例名:Time-SLIP法併用cine dynamic MRCPによる膵液の流れの可視化と膵外分泌機能評価への応用
◎3テスラMR部門
【最優秀賞】
住友別子病院
症例名:乳癌
〈超音波部門〉
◎心臓部門
【最優秀賞】
京都大学病院 米田智也
症例名:巨大右冠動脈瘤を合併した腸管ベーチェット病の1症例
◎血管部門
【最優秀賞】
東邦大学医療センター大橋病院 川田 吏
症例名:左鎖骨下動脈閉塞症
【特別賞・Viamo賞】
関西電力病院 佐藤洋
症例名:Valsalva負荷にて伸縮する腸骨静脈血栓
◎腹部部門
【最優秀賞】
東京医科大学病院 河本敦夫
症例名:気腫性腎盂炎
◎表在部門
【最優秀賞】
NTT東日本札幌病院 八十嶋伸敏
症例名:関節リウマチ
最後に綱川社長が挨拶し,東日本大震災や欧州経済危機など厳しい1年だったが,東芝メディカルシステムズには自ら考え,自ら動ける優秀なチームがそろっており,「患者様や顧客の健康,医療の安全確保への貢献が医療機器メーカーの義務であり,CTのAIDR 3D,MRの非造影MRA,超音波診断装置のFly Thruなどの最新の技術とともに走り続けたい」と述べた。また,来年20回を迎える画論について,「これまで多くの先生方や関係者の協力や励ましがあってここまで継続することができた。来年も元気に,活気のある画論が行えるように準備を進めていきたい」と語った。
審査員は次の通り。
●CT部門
森山 紀之氏(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター センター長)
片田 和広氏(藤田保健衛生大学医学部 放射線医学教室 教授)
栗林 幸夫氏(慶應義塾大学医学部 放射線科学教室 教授)
吉岡 邦浩氏(岩手医科大学医学部 放射線医学講座 准教授)
辻岡 勝美氏(藤田保健衛生大学医療科学部 放射線学科 准教授)
八町 淳氏(長野赤十字病院中央放射線部 副技師長)
山口 隆義氏(北海道社会保険病院放射線部 副技師長)
●MR部門
似鳥 俊明氏(杏林大学医学部 放射線医学教室 教授)
大友 邦氏(東京大学大学院医学系研究科 放射線診断学 教授)
扇 和之氏(日本赤十字社医療センター放射線診断科 部長)
●超音波部門
吉川 純一氏(西宮渡辺心臓血管センター 院長)
竹中 克氏(東京大学医学部附属病院 検査部 講師)
松尾 汎氏(医療法人松尾クリニック・松尾血管超音波研究室 室長/藤田保健衛生大学 客員教授)
平井 都始子氏(奈良県立医科大学附属病院 中央内視鏡・超音波部 准教授)
水口 安則氏(国立がん研究センター 放射線診断科 医長)
金田 智氏(東京都済生会中央病院 放射線科 部長)
畠 二郎氏(川崎医科大学附属病院 検査診断学 内視鏡・超音波部門 教授) |