「VIVAナースデー」と命名された第31回医療情報学連合大会2日目は,A会場を中心に看護と医療情報,看護情報システムなどのテーマを掲げた特別講演,シンポジウム,一般演題が数多く設けられた。
A会場では,午前中に特別講演3「看護記録は,チーム医療に貢献出来ているか 『看護記録』のデータ,情報の妥当性・信頼性,効果性,効率性の再検討」が行われた。講演者は聖路加看護大学名誉教授の岩井郁子氏。岩井氏は,看護に求められているのは医療サービスの視点であり,チーム医療が重要であると指摘。さらに,看護師に求められる情報活用能力,意思決定能力として,ある分野の事象を理解・整理し活用する能力,複数の情報源を用いた意思決定,他者の文化的背景への配慮などが挙げられると述べた。その上で,チーム医療における診療記録のあり方について言及した。
午後には,東京大学大学院医学系研究科老年看護学/創傷看護学分野教授の真田弘美氏による特別講演4「看護研究は医療を動かす褥瘡研究を通して見えたチーム医療における看護師の役割拡大とその効果」が設けられた。この特別講演において,真田氏は褥瘡におけるチーム医療を行う上で重要となる経過評価「DESIGN」について説明。さらに自身の褥瘡研究の経験から,マットレスなどの器具開発につながった例を挙げたほか,米国で開発されているiPhoneを使った超音波診断装置も紹介した。また,トランスレーショナルリサーチの観点から,看護師の人材教育が重要だとして,特定看護師についても取り上げた。
2日目には,看護以外にも,最新のテーマを扱ったセッションが数多く用意された。C会場では,日本医学放射線学会と日本放射線技術学会との共同企画5「電子カルテとPACSを中心とする安全かつ効率的な情報連携」が行われた。このセッションでは,IHEのEUAとPSAの実装経験などが報告された。共同企画としては,このほかにも日本産婦人科医会との共同企画4「進化する地域医療連携ネットワーク」があった。岩手県の周産期医療ネットワーク「いーはとーぶ」が震災時にどのように機能したかについて,岩手県立大船渡病院産婦人科の小笠原敏浩氏,大和田貞子氏が発表したほか,香川県や千葉県,東京都,与論島,北海道南西地域における周産期医療の地域連携システムが紹介された。
このほか,注目を集めているスマートフォンやタブレット端末の医療への活用を取り上げたワークショップ4「スマートフォンの地域医療への応用と,患者参加型情報共有の将来展望」が行われた。このセッションでは,鹿児島大学病院が中心になって進めているITKarteや,桜新町アーバンクリニックのクラウド型地域医療支援システムEIRのほか,iPad問診票とFileMakerを活用した新生児健診の取り組み,iPhoneを活用した薬剤師による服薬指導などの事例が報告された。
大会最終日の23日は,「かごんまデー」と名付けられた。大会企画として「鹿児島高校生パフォーマンス」,市民公開講座「歯とお口の健康」が行われたほか,特別講演が2題あった。特別講演5では「The ICT role in providing quality health care in Western Australia」をテーマに,鹿児島市の姉妹都市であるオーストラリアのパース市長のLisa Scaffidi氏が講演した。また,特別講演6では,志学館大学教授の原口 泉氏が「維新の薩摩〜医療の観点から〜」をテーマに講演した。
今回の医療情報学連合大会では特別講演が5題,大会企画が2セッション,学会企画が3セッション,産学共同企画が1セッション設けられた。また,他学会・団体との連携を進めるという木村学会長の方針もあり,共同企画が12セッション用意された。このほか,シンポジウム8,ワークショップ5,一般演題335題があった。さらに今回は,鹿児島県での開催とあって,2日目には焼酎セミナーが鹿児島サンロイヤルホテルで行われ,鹿児島大学農学部焼酎学講座の鮫島末広氏が講師を務めた。一方,企業展示には,46社が出展。ホスピタリティールームとして9社が参加した。
2012年の第32回医療情報学連合大会は,新潟大学医歯学総合研究科地域疾病制御医学専攻地域予防医学教授の岡田正彦氏が大会長を務め,朱鷺メッセ:新潟コンベンションセンター(新潟県新潟市)を会場に開催される。テーマは「地域社会に貢献する医療情報学:元気で長生きするための医療をめざして」。神戸大学の杉本真樹氏による「超立体画像が切り開く外科手術の世界」,ATR脳情報通信総合研究所の川人光男氏による「脳が操るコンピュータ」の2つの特別講演がすでに予定されている。
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