2011年11月21日(月)〜23日(水)の3日間,第31回医療情報学連合大会(第12回日本医療情報学会学術大会)が鹿児島県の鹿児島市民文化ホールなどを会場に開催された。明治維新における薩摩藩の功績になぞらえて,「医療の情報維新は薩摩から」が大会テーマ。鹿児島大学病院病院長の熊本一朗氏が大会長となり,ほかにプログラム委員長を九州大学病院メディカル・インフォメーションセンターの中島直樹氏,実行委員長を宮崎大学医学部附属病院医療情報部教授の荒木賢二氏,総務委員長を鹿児島大学病院医療情報部部長の宇都由美子氏が務めた。
今回の大会の大きなトピックスの1つは,3日間にそれぞれテーマが与えられたこと。初日は医療情報システムの歩みを振り返る講演やセッションが多い「Back to the Future Day」,2日目は看護と医療情報にフォーカスした「VIVAナースデー」,最終日には鹿児島の文化などをテーマにした講演が用意された「かごんまデー」と名づけられた。また,大会前日の20日には,恒例のプレコングレスが設けられ,IHEなどのチュートリアルが行われた。
初日Back to the Future Dayでは,メインのA会場で,開会式に続き熊本氏による大会長講演が行われた。「病院情報システムの今までとこれから」をテーマにしたこの講演では,鹿児島大学病院が業務の効率化をめざして医療情報システムの導入した初期から,リスクマネジメントのためのシステムへと発展し,さらにデータウエアハウスの活用により経営改善につながるTHINK(Total Hospital INformation system of Kagoshima university)へと進化した経緯を紹介した。
これに続いて行われたのは,特別講演1の鼎談。千葉大学名誉教授の里村洋一氏,NPO法人卒後臨床研修評価機構専務理事の岩普@榮氏,名古屋学芸大学学長の井形昭弘氏が登壇した。この鼎談では,里村氏と井形氏が,それぞれ千葉大学医学部附属病院,鹿児島大学病院の医療情報システムの構築において,プロジェクトのリーダーとしてどのような姿勢でリーダーシップを発揮したかを述べた。井形氏は,リーダーが優秀すぎると何事も自分一人で抱え込むので良くないとの持論を展開した。また,岩侮≠ヘproblem oriented system(POS),problem oriented medical record(POMR)について述べた上で,学会としても医療情報システムだけでなく,もっと基本的な医療情報とは何かを考えるプログラムを増やしてほしいと求めた。
午後には,日本電気(株)代表取締役執行役員副社長の岩波利光氏の特別講演「明日を創るために〜人と地球にやさしい情報社会の実現に向けて〜」が行われた。この講演の中で岩波氏は,鹿児島大学病院のシステム構築経験などを振り返りながら,災害に強く,人々の暮らしを豊かにして,地球環境にも優しい,ITの最新技術やその活用の場について紹介した。
岩波氏の特別講演に次いで,A会場では学会長である浜松医科大学医療情報部教授の木村通男氏の学会長講演が行われた。テーマは,昨年の大会長講演に引き続き「医療情報の過去・現在・未来—Data,Information,Intelligence」。第2回目の今回は現在編として位置づけられた。木村氏は,日本の医療について,人口あたりの医師数がOECD各国の中で最も低水準ながら,質の高い医療を提供できている状況を,統計データを示しながら説明。その上で,診療情報の電子化についても,国民から高いニーズがあり,災害医療の観点からも重要であるとの見方を示した。
このほか,初日には,東日本大震災において医療情報システムにどのような問題があったのか,また福島第一原子力発電所の事故に伴う計画停電でどのように運用したかなどをテーマにした学会企画2「震災後,今一度BCP(事業継続計画)を考える」が設けられた。このセッションでは,まず座長の東京大学情報学環の山本隆一氏が,厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」におけるBCPについて解説。その後石巻赤十字病院病院長の飯沼一宇氏が東日本大震災での対応について説明したほか,計画停電対策について国立成育医療研究センター情報管理部の山野辺裕二氏,東京医科大学病院医療情報室の成清哲也氏が報告した。さらに,日本電気医療ソリューション事業部の松尾 茂氏がベンダーの対応策を紹介した。なお,東日本大震災関連のセッションとしては,ほかにも大会2日目に日本遠隔医療学会との共同企画3「震災・医療の復興と再生—ITはどこまで活用できるか? 遠隔医療の視点から—」が設けられた。
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