インターシステムズジャパン(株)は,11月16日(水),「Intersystems in Healthcare Seminar 2011」をTHE GRAND HALL(東京都港区)で開催した。今年は,“医療ITの課題とソリューション”をテーマに,特別講演2題と同社代表取締役社長の植松裕史氏による「Intersystems in Healthcare〜医療ITにおける課題と解決へのアプローチ」と題した講演,同社の多次元データエンジン「CACHE(キャシェ)」,アプリケーション統合プラットフォーム「ENSEMBLE」,アプリケーション組込型インテリジェンス「DeepSee」を採用してシステム構築を行っているパートナー企業による医療システム・ソリューション展示デモを行った。
特別講演は2題で,最初に千葉大学医学部附属病院地域医療連携部准教授の藤田伸輔氏が,「地域連携を変えよう」と題して講演した。
高齢社会の到来によって,高齢者人口の増加,医療・介護需要の増加などが考えられるが,その傾向の現れ方は全国で均一ではない。高齢者の数が増加する都市部と,高齢化によって過疎化が進む地方では,医療資源のミスマッチが発生する。この課題へのひとつの対応として在宅医療の取り組みが進められているが,従来の健康の考え方とは違うICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)の概念に基づいた対応が必要とされている。これからの地域医療では,地域全体の健康状態の把握まで含めた“4次予防”が重要になり,在宅医療においても病院と同じ療養環境を作るだけではなく,社会とのつながりを維持することがポイントになると藤田氏は述べた。
それを進めるためには,在宅の患者に対する“エピソード・ケア”が重要で医師や看護師,ケアスタッフなど職種を越えた情報伝達と共有が必要となる。その時には,患者の診療情報を適切にまとめたサマリーであり,藤田氏は診療情報のサマライズをインテリジェントに行うためには,パスを活用するしかないと考えていると述べ,千葉県で進められている県下共用パスを用いた地域全体の地域疾病管理の取り組みを紹介した。
続いて,国立成育医療研究センター情報管理部・情報解析室長の山野辺裕二氏が,「長期にわたる診療データ活用時の課題」と題して講演した。
山野辺氏はまず,医療情報の電子保存の原則は,電子カルテの3原則(保存性,真正性,見読性)に始まり,情報セキュリティの3要素などがあるが,総合的に考えるとe文書法の4要件(機密性,完全性,見読性,検索性)を電子カルテの4原則と呼ぶことが妥当ではないかと提案し,震災時に最初に必要とされた情報は何かを考えた時に,4原則にも優先順位があり,日常的に重要なのは見読性であり,検索性はあとからでも追加できるのではないかとした。こういった情報の重要性の変化は,病院情報システムの構成でも同様であり,初期の電子カルテシステムから,クラウドや仮想化が現実的となってきた現在では,(1)日々の業務を行うシステム,(2)将来へデータを残すシステムを考えればよくなってきたと言える。
一方で,蓄積された診療データを活用するためには,単純にデータをダグづけやコード化して保存するだけではすまないさまざまな課題があるとして,成育医療研究センターで利用するDWH-PlusやEDR(ネットマークス),Microsoft SharePointなどのツールを紹介した。
山野辺氏は,ひとつの案としてデータ自体の仮想化(Virtual)やクラウド上のPHR(Personal Health Record)の構築などをこれからの診療データ活用の方向性として挙げた。
展示企業は次のとおり。医用工学研究所,コンピュータ・ブレインズ,セーレンシステムサービス,データキューブ,ネットワークス,マップ・システム。 |