インターシステムズジャパン(株)は,2010年10月27日(水),「Intersystems in Healthcare Seminar 2010」をTHE GRAND HALL(東京都港区)で開催した。テーマは「医療現場を支援するIT活用−接続連携された医療をめざして」。同セミナーは,インターシステムズジャパンが2004年から毎年開催しているイベントで,今年で7回目となる。
インターシステムズは,米国マサチューセッツ州に本社を置き,医療用データベースを中心にさまざまなITソリューションを提供している。主力製品は多次元データエンジン「CACHE(キャシェ)」,アプリケーション統合プラットフォーム「ENSEMBLE(アンサンブル)」,アプリケーション組込型インテリジェンス「DeepSee」,医療向けとして,医療連携プラットフォーム「HealthShare」,統合医療ソリューション「TrakCare」(日本未投入)などを揃えて事業展開を行っている。
冒頭に挨拶した同社代表取締役社長の植松裕史氏は,インターシステムズが世界各国の地域医療連携システムや国家的な医療プロジェクトに参画してきたことを紹介し,国内でも大学病院,国立病院を中心に幅広く利用が拡がってきていることを報告した。その上で「現在は,より質の高い医療サービスが求められており,その実現のためには医療連携を可能にする情報システムの活用が不可欠になる。われわれの医療ソリューションは,海外で多くの実績,評価を得ており,この技術をベースに日本でも医療連携システムの構築にさらなる貢献をしていきたい」と述べた。
プログラムは,まず,基調講演として紀ノ定保臣氏(岐阜大学大学院医学系研究科医療情報学分野教授)が「ヨーロッパ先進動向と日本での医療IT活用における課題と展望」と題して行った。紀ノ定氏は,5月の発表以来大きな話題となっている高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)の「新たな情報通信技術戦略」について,“どこでもMY病院”構想の中の「個人(国民)が自らの生活の質の維持や向上を目的として一元的に収集・保存・活用するための情報サービスの創出」が,個人と民間サービスにすべて委ねられるのか,そこに政府が関与するのかはっきりせず,実現のためのプロセスとアウトカムを評価する仕組みがないことを指摘した。さらに,厚生労働省は,地域完結型医療への転換を図る中で,かかりつけ医にゲートキーパーとしての役割や,個人の医療情報が集約されることを期待しているが,フリーアクセスが前提の日本の医療体制の中では難しいのではないかと疑問視した。そして,医療ITを進めるには,それまでの医療政策や歴史,地域性を考慮することが重要だとして,海外の事例としてアメリカ,イギリス,ドイツ,デンマーク,フィンランドでの医療システムとITの導入状況を紹介した。紀ノ定氏は,「各国とも,自国の歴史的背景や社会保障制度,文化的な特性をベースにして,その上にITを活用したシステムを築き,さらにいかに効率的にアウトカムが得られるかという費用対効果を考えたヘルスケアサービスを提供しようとしている。その意味で,日本の医療IT戦略も,これまでの医療IT施策や地域性の違いなどを考慮した方向性を検討することが必要ではないか」として,“Conecting for Health”というキーワードで,現在それぞれの役割を果たしている医療機関や福祉施設などのセクターを,効率的に接続し連携できる仕組み作りを優先して考えることが重要だと強調した。
特別講演は,瀬戸山隆平氏(三楽病院院長)による「三楽病院における医療ITの取り組み〜電子カルテ長期使用の経験から学ぶ」が行われた。三楽病院では,2000年からITシステムの導入を行ったが,医療機関として求める機能と導入コストを総合的に判断して採用したのが,データベースとしてCACHEを使ったオーストラリアの“MedTrak”という電子カルテシステムである。MedTrakは世界35か国で導入されていたが,日本語版として三楽病院とセーレンシステムサービスが総合医療情報システム「CureULA EMR」を共同開発した。同院では,この電子カルテシステムを核として,物流システム(2001年),医事会計システムのリプレイスとオーダリングシステムの稼働(2003年),PACS導入によるフィルムレス化(2007年),クリティカルパスの電子化などのシステムの拡張に取り組むのと同時に,DPCへの対応,ISMS(Information Security Management System)およびISO27001認証取得など体制強化を着々と進めている。瀬戸山氏は,CACHEベースのシステムを採用したことで安定稼働,高いレスポンス,高度なセキュリティを実現でき,拡張性が高くシステムの追加が容易でコストを押さえた総合病院情報システムの構築が可能になったと結んだ。
次に「接続連携された医療をめざして〜国内外先進の取り組みのご紹介」と題して,同社のビジネスディベロップメントシニア・マネージャーの佐藤比呂志氏が,CACHEやENSEMBLEなどを利用しているアメリカのスタンフォード病院,退役軍人省,イギリスのNHS,香港,スコットランドなど海外の事例を紹介した。
また,同社のCACHEやENSEMBLEを使ってシステム構築を行っているパートナー企業からの製品概要の紹介があった。これらのシステムは「医療システム・ソリューション展示デモ」としてロビーでブース展示を行った。展示企業はつぎのとおり。
(1)医用工学研究所「医療用データウエアハウスシステムCLISTA!」
(2)NTTデータ東海「臨床研究DBシステムD☆D(ディースターディー)」
(3)京セラ丸善システムインテグレーション「精神科向け電子カルテシステムMEDIC EHR/P」
(4)セコム医療システム「セコムユビキタス電子カルテ」
(5)ナノメディカル「化学療法支援システムMedistep21」
(6)ネットマークス「医療情報二次利用ソリューションCDR(クリニカル・データ・リポジトリ)」 |