がん検診企業アクション事務局は,2011年9月16日(金)にニューピアホール(東京都港区)を会場に「がん検診企業アクション東京セミナー」を開催した。
厚生労働省では,「がん対策推進基本計画(平成19年閣議決定)」の中で,5年以内にがん検診の受診率を50%以上とする目標を掲げている。その達成には職域でのがん対策や理解が必要なことから,「がん検診企業アクション」を2009年7月に発足し,企業における啓発活動強化や,職域におけるがん検診の受診率向上に向けた取り組みを行っている。
セミナーでは,「がん検診企業アクション」のアドバイザリーボード議長である中川恵一氏(東京大学医学部附属病院放射線科准教授/緩和ケア診療部長)が,がん検診の重要性やアクションプランについての講演を行い,参加した企業や健康保険組合の関係者に理解を促した。
当日は,全体テーマを「今後の健康管理を考える〜がん検診について〜」とし,第1部・第2部を,がん検診企業アクション事務局と全国健康増進協議会それぞれが主催する形の2部構成で行われた。
第1部の「がん検診企業アクション東京セミナー」では,まず,厚生労働省健康局総務課がん対策推進室長の鷲見 学氏からのメッセージを,同推進室の押木智也氏が代読した。わが国におけるがんの罹患や死亡状況について触れた上で,がんに負けない社会づくりのために,このセミナーでがんに対する正しい知識とがん検診の重要性をあらためて認識し,検診受診の促進に努めてほしいとのメッセージが読み上げられた。
続いて,がん検診企業アクション事務局長の松本裕史氏が,事業の概要について説明した。松本氏は,国民の2人に1人ががんに罹患し,3人に1人ががんで死亡する,わが国のがんの現状について,統計資料を示しながら解説。ほかの先進国と比べてきわめて低いがん検診受診率を50%以上に引き上げるため,住民検診では検診無料クーポン券の配布事業を実施し,職域検診ではがん検診企業アクションが民間企業をサポートすることで,がん検診を推進していく取り組みについて説明した。また,全国で620社・団体(9月9日現在)にのぼる推進パートナー企業・団体の取り組み事例や,アンケートの結果を報告。推進パートナー参加の要件は簡単なので,がん検診を推進し,企業の財産である従業員とその家族を守るために,推進パートナーに参加してほしいと呼びかけた。
第1部の基調講演として,中川氏が登壇し,「がん検診のススメ」を講演した。
中川氏は,がんは先進国病のように思われることもあるが,欧米では年々減少しており,先進国で増加しているのは日本だけであることを説明。問題は,がんについての正しい知識を持たないことであり,正しい知識をもとにしたがん対策の啓発が重要であると述べた。
がんのメカニズムやリスク・要因について,また,現役世代では女性のがん患者数が男性を大きく上回ることなどを解説した中川氏は,がんで死なないためには,罹患しないような生活習慣を心がけることに加え,早期発見・早期治療の重要性を強調した。その理由として,乳がんの場合,がんが発見可能なサイズ(1cm)から,早期がんとされるサイズ(2cm)になるまで2年程度であることを説明。症状が出てからでは遅く,定期的な検診だけが早期発見につながり,早期に発見できたがんは約9割が完治することから,がん検診がいかに大切であるかを述べた。
その後,休憩を挟んで,第2部の「第3回全国健康増進協議会講演会」が行われ,同会の2011年度の巡回検診の説明と,帝京大学医学部附属病院産婦人科の中川俊介氏による基調講演「乳がん・子宮頸がん・子宮体がん,卵巣がんの発生メカニズムと症状」が行われた。 |