シーメンス・ジャパン(株)は8月27日(土),ガーデンシティ品川(東京都港区)において「第3回Definitionシンポジウム」を開催した。モデレーターは,国立循環器病研究センター病院院長の内藤博昭氏が務めた。
同社は,2005年に2対の管球と検出器を搭載した世界初のDual Source CT(DSCT)「SOMATOM Definition」を発表し,従来のCTの概念を超えた画期的な装置としてCT市場に大きなインパクトを与えた。その後,2008年に発売された128スライス検出器搭載の「SOMATOM Definition Flash」では,最先端のFlash Spiralスキャン技術によって,ガントリ回転スピードがSOMATOM Definitionの0.33秒から0.28秒へと高速化し,ハーフリコンにおける時間分解能が83msから75msへと向上するなど,さらなる高速化,高機能化が図られている。一方,マルチスライスCT(MSCT)においても128スライスの「SOMATOM Definition AS+」などを展開し,“Adaptive 4D Spiral”技術によって多様な臓器の4Dダイナミックイメージングを可能にしている。そこで,今回のシンポジウムでは,DSCTとMSCTにおける同社の最先端技術の臨床応用に焦点を当て,“Advanced Technologies”,“Cardio-Vascular Imaging”,“4 Dimensional Imaging”,“Dual Energy Imaging”の4つのテーマについて,ユーザー施設から発表が行われた。また,今回初めて,同社によるShort Lectureが設けられた。
冒頭,モデレーターの内藤氏が挨拶に立ち,「第3回目となった今回は, DSCTが得意とするCardiac ImagingとDual Energy Imagingに加え,三次元ボリュームデータのダイナミック撮影に適したSOMATOM Definition AS/AS+に関する発表が追加された。日本のDefinitionユーザーは世界でもトップクラスの技術を有しているが,本シンポジウムでDefinitionに関する最新の情報が聴けることに期待したい」と述べた。
セッション1「Advanced Technologies」では,金沢大学の市川勝弘氏が座長を務め,3題の発表が行われた。東海大学医学部付属病院の池田 秀氏は「空間分解能」をテーマに,Windmillアーチファクトの抑制効果に優れ,高い空間分解能の画像を任意方向から観察可能な“z-Sharpテクノロジー”のメカニズムと,それによってもたらされるメリットについて解説した。また,中津川市民病院の原 孝則氏は「時間分解能」をテーマに,Flash Spiralスキャンの有用性について述べたほか,金沢大学附属病院の越田晴香氏は「被ばく低減」をテーマに,臓器感受性を考慮した被ばく低減機構“X-CARE”の技術と,同院における症例検討結果について報告した。
セッション2「Cardio-Vascular Imaging」では,東京医科大学の平野雅春氏が座長を務め,4題の発表が行われた。前半2題は心臓をテーマに,横浜栄共済病院の岩城 卓氏がStep and shoot法の特徴や被ばく低減効果などについて述べたほか,倉敷中央病院の山本浩之氏が,SOMATOM Definition Flashと次世代の画像処理システム「syngo.via」を組み合わせた診療フロー構築の現状や,冠動脈疾患以外の循環器疾患の診断および治療効果判定における有用性について報告した。また,昭和大学横浜市北部病院循環器センターの上村 茂氏は「小児循環器」をテーマに,DSCTの適応や低被ばく撮影の検討について報告し,特にカルシウムの組織沈着や呼吸器系異常合併例では造影MRIに優る診断価値があると述べた。このほか,本セッションでは「救急」がテーマとして追加され,大阪大学高度救命救急センターの中川淳一郎氏が救急初期診療と胸部血管病変の診断におけるSOMATOM Definition Flashの有用性を報告した。
セッション3「4 Dimensional Imaging」では,大阪大学の渡邉嘉之氏が座長を務め,2題の発表が行われた。中村記念病院の尾野英俊氏が「頭部」をテーマにvolume CT perfusionの有用性について述べたほか,金沢大学の小林 聡氏は「腹部」をテーマに,特に肝画像診断における4D imagingの意義について解説した。
セッション4「Short Lecture」では,内藤氏が座長を務め,同社リサーチ&コラボレーション チーフサイエンティストの伊藤俊英氏による技術発表が行われた。逐次近似画像再構成法をテーマに,同社の最先端の被ばく低減技術“SAFIRE(Sinogram Affirmed Iterative Reconstruction)”が紹介された。
セッション5「Dual Energy Imaging」では,同じく内藤氏が座長を務め,4題の発表が行われた。渡邉氏が「頭部」をテーマに,造影剤と出血の区別が可能な“Brain hemorrhage”の有用性について述べたほか,東邦大学医療センター大森病院の白神伸之氏が「消化管」をテーマに,胃がん・大腸がんにおけるiodine imageによる粘膜面の評価の有用性として,病変の性状および存在診断に役立つことを示唆した。また,奈良県立医科大学の岡山悟志氏は「モノエナジー」をテーマに,高エネルギーと低エネルギーの2つの画像から任意の実効エネルギーでの画像を作成する“Monoenergetic imaging”の技術や,石灰化プラークやステント内腔評価におけるブルーミング・アーチファクト低減効果などについて解説した。最後に,東海大学の飯野美佐子氏が「冠動脈石灰化除去」をテーマに,逐次近似法を用いた画像再構成法“IRIS”の検討結果について報告した。
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