ホーム の中の取材報告の中の 2010の中のシーメンス・ジャパン 心臓とデュアルエナジーをテーマに「第2回Definitionシンポジウム」を開催

取材報告

2010
シーメンス・ジャパン
心臓とデュアルエナジーをテーマに「第2回Definitionシンポジウム」を開催

会場風景
会場風景

モデレーター兼セッションU座長:内藤博昭氏(国立循環器病研究センター)
モデレーター兼セッションU座長:
内藤博昭氏
(国立循環器病研究センター)

セッションT

座長:平野雅春氏(東京医科大学)
座長:平野雅春氏(東京医科大学)

渡辺浩毅氏(済生会松山病院)
渡辺浩毅氏(済生会松山病院)

堀祐郎氏(新潟大学)
堀祐郎氏(新潟大学)

高田香織氏(榊原記念病院)
高田香織氏(榊原記念病院)

セッションU

北野悟氏(奈良県立医科大学)
北野悟氏(奈良県立医科大学)

坂本一郎氏(長崎大学)
坂本一郎氏(長崎大学)

小林聡氏(金沢大学)
小林聡氏(金沢大学)

城戸輝仁氏(愛媛大学)
城戸輝仁氏(愛媛大学)

本田憲業氏(埼玉医科大学)
本田憲業氏(埼玉医科大学)

  シーメンス・ジャパン(株)は,「第2回Definitionシンポジウム」を,8月28日(土),東京コンファレンスセンター・品川で開催した。モデレーターは内藤博昭氏(国立循環器病研究センター放射線診療部部長)。
  2005年に世界初のDual Source CT(DSCT)として発売された「SOMATOM Definition」は,2つの管球と検出器を搭載する新しいタイプのCTとして注目され,2008年には128スライス検出器搭載,ガントリ回転スピード0.28msと機能を強化した「SOMATOM Definition Flash」が発売された。DSCTでは,超高速撮影による心臓イメージングと,2つの異なるエネルギーで同時撮影を行うDual Energy Imagingが大きな特徴だが,今回のシンポジウムでは,時間分解能75ms,FOV33p,秒間460oの高速撮影が可能なDefinition Flashの登場で,さらに期待の高まるDSCTの可能性について,ユーザー施設から最新の動向が報告された。
  モデレーターとセッションUの座長を務めた内藤氏は,DSCTの現状と臨床への応用について次のように述べた。
 「SOMATOM Definitionは,当初から,心臓をターゲットにした高速撮影と2管球の特性を生かしたDual Energy Imagingへの期待が大きかった。さらに機能を進化させたSOMATOM Definition Flashでは,時間分解能は83msから75msに向上し,High Pitch Double Spiralなどの新しい撮影法が可能になり,心臓では0.25秒で1mSv以下の低被ばくでの撮影が可能になった。
  Dual Energy Imagingは,2つの管球で異なる管電圧(80kVと140kV)で撮影したデータから,CT値を解析して物質の特定を行う。組成の異なる2つの物質を分離する“Two-material decomposition”,それを拡張して3つの組成分布を識別する“Three-material decomposition”や,低電圧と高電圧の合成画像(Composite Image),実効エネルギー再構成画像(Monoenergetic Image)などが得られる。さらに,Definition Flashでは,“Selective Photon Shield(SPS)”でX線スペクトルを最適化して組成分離能が向上したこと,また“Single Dose Dual Energy”でDual Energyで懸念される被ばくを抑えられている。2管球搭載の特長を生かした,それぞれの分野での臨床応用の展開に期待したい」

  セッションTは平野雅春氏(東京医科大学)を座長として,Cardiac Imagingについて3つの講演が行われた。
  心臓Tとして「SOMATOM Definition Flashの臨床応用」を発表した渡辺浩毅氏(済生会松山病院)は,Definition Flashでは,胸部においてCardio Flash Spiral撮影で0.6秒・息止め不要,低被ばく,造影剤量を低減した撮影が可能になったと述べた。同院では,DSCTの検査をメニューに加えた動脈硬化・心臓ドック,メタボドックを実施しているが,これまでドックで行った86件のDSCTの検査で疾患が見つかり,PCI 2例,CABG 2例,肺がん手術 2例が行われている。渡辺氏は,そのほかにステントの内腔評価,被ばく低減技術であるIRIS(Iterative Reconstruction in Image Space)を使った石灰化除去の試みなど,心臓画像診断におけるDSCTの可能性を紹介した。
  心臓U「不整脈症例,高心拍症例に対する対応」の堀祐郎氏(新潟大学)は,一心拍から画像を再構成でき高い時間分解能を持つDSCTは,不整脈症例や高心拍症例に有利な装置であるとして,ECG editやflex paddingなどを使った画像再構成のテクニックを紹介した。
 小児循環器で「先天性心疾患を中心に」を講演した高田香織氏(榊原記念病院)は,新生児・小児の先天性心疾患のDSCTのメリットについて,短い撮影時間,低被ばくを挙げ,2010年6月から導入されたIRISによって,従来より20〜30%出力を下げても十分な画像が得られていると述べた。

  セッションUは内藤氏を座長として,Dual Energy Imagingについて「General」「肺」「腹部」「心筋」「Xenon」の5題の講演があった。
  最初に,北野悟氏(奈良県立医科大学)が「Dual Energy CT」の基礎とアプリケーションを中心とする応用について概説した。
 続いて「肺」への応用について坂本一郎氏(長崎大学)が「肺領域におけるDual Energy Imaging〜肺血栓塞栓症を中心に」を講演し,DSCTの肺灌流画像のアプリケーションであるlung perfused blood volume(lungPBV)を使用した肺血栓塞栓症の評価を述べた。
  腹部におけるDual Energy CTの意義を講演した小林聡氏(金沢大学)は,DSCTは肝臓の画像診断においてVirtual non-contrastや合成画像(Composite Image)などを活用することで,肝病変血行動態解析の有力なツールに成りうると位置づけた。
 心筋のDual Energy Imagingを報告した城戸輝仁氏(愛媛大学)は,心筋血流評価アプリケーションであるHeartPBVなどによる心筋虚血評価の可能性,冠動脈の石灰化除去やプラークの性状評価への期待など,心臓領域におけるDEの現状を紹介した。
 最後に「Dual Energy Imaging:Stable Xenon一回吸入法による肺換気CT」を講演した本田憲業氏(埼玉医科大学)は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)の機能診断法として,核医学で利用されているXenonガスの一回吸入とDSCTのMaterial decompositionによる手法の検討結果を報告した。
  モデレーターの内藤氏は,最後に,「Dual Energyでは,すでに臨床応用が行われているものから,これから臨床への適用が期待できる方法まで,さまざまな可能性があると感じた。また,逐次近似法の応用によるさらなる低被ばく化やSPSの向上などの発展に期待するところも大きい。今後の研究・開発と成果の積み重ねに期待したい」と総括した。


●問い合わせ先
シーメンス・ジャパン株式会社
マーケティング本部
TEL 03-5423-8422