地域医療福祉情報連携協議会は,1月28日(金),発足記念シンポジウムを東京医科歯科大学M&Dタワー大講堂で開催した。同協議会は,「地域医療連携を構築するための情報の連携はどうあるべきかを考える会」(田中会長)として,全国の地域医療連携体制を構築する関係者が集い,情報交換や意見交換の場として,これからの地域の医療・福祉における情報連携のよりよいあり方の実現をめざして設立された。田中博氏(東京医科歯科大学大学院生命情報科学教育部教授)が会長を務め,全国の地域医療ネットワークの代表16名を幹事とした幹事会を中心に,行政や自治体,関連企業などの参加を得て活動していく。協議会で取り組む主要課題としては,「地域医療福祉情報連携の至適形態実現をめざした意見交換・情報交換」,「地域医療情報連携における疾患別連携情報項目の標準化に向けた検討」,「地域医療連携における患者ID統一化に向けた検討」などがあげられている。
発足記念シンポジウムは,「地域医療の全国的な連携に向けて」をテーマとして,田中会長による協議会の設立趣旨説明,地域医療再生計画をテーマにした講演,協議会に参加し各地域でさまざまなスタイルで地域医療連携ネットワークを構築している団体からの取り組みについての発表が行われた。また,会場ロビーでは,関連企業16社による医療連携やネットワーク構築をサポートする製品や技術の展示会が行われた。
講演会では,同協議会名誉会長で,当日は体調不良で欠席した邉見公雄氏(日本病院団体協議会議長・全国自治体病院協議会会長)のメッセージが代読された。その中で邉見氏は,「保健,医療,福祉のシームレスな連携は,ここ10年以上絵に描いた餅のままである。日本の地域医療連携は,北欧から20〜30年,韓国からも10年遅れている。ヒト,モノ,カネに加えて,情報とスピードのノウハウこそがこれからの地域医療には必須である。個々の病院や地域が努力するだけでは限界があり,他の病院や地域,大学,行政,IT産業企業などが連携することで相乗的に発揮される。地域医療再生基金の機会を活用することをめざして発足した協議会の役割に期待している」と述べた。
また,同協議会顧問の水田邦雄氏(前厚生労働省事務次官),内閣官房の野口 聡氏(IT担当室),総務省の吉田恭子氏(情報流通行政局情報流通振興課情報流通高度化推進室室長),厚生労働省の山本 要氏(医政局政策医療課医療技術情報推進室室長),経済産業省の竹上嗣郎氏(商務情報政策局医療・福祉機器産業室室長)が,同協議会の発足にあたって挨拶した。
設立趣旨説明では,田中会長が協議会設立にいたった背景とこれからの活動方針を概説した。田中会長は,地域医療の崩壊や国民医療費負担増大で日本の医療は危機的状況にあると述べ,「医療再生の方向は“生涯継続的ケア”“地域包括的ケア”の実現が必要で,そのための地域医療体制の構築が急務である。その核となるのは,ITの持つ情報の『統合力』が不可欠であり,情報連携基盤の構築が求められる。2009年の地域医療再生基金をきっかけとして,地域での医療連携への気運が高まっており,これをよりよいかたちで実現させるべく活動していきたい」と語った。
講演1は「地域医療再生計画について」と題して,自冶医科大地域医療学センター長で地域医療再生計画に係る有識者会議座長の梶井英冶氏が講演した。梶井氏は,各都道府県から提出された地域医療再生計画(94計画)の内容について,有識者会議からつけられた技術的助言の内容を紹介し,助言の背景となった考え方や,助言を踏まえて今後進められるべき計画の方向性について概説した。梶井氏は再生基金における医療情報連携システムのポイントとして,“持続的に運用可能な情報連携ネットワークシステム”であること,“安価で拡張性のあるインターネットでの接続”を構築すること,“外部のシステムとの情報交換機能の整備および診療情報の標準の採用”をあげた。また,助言の背景として,“へき地保健医療対策”に基づくへき地医療支援機構の取り組みがあること,地域社会振興財団による住民参加型のフォーラム開催の取り組み,自治医科大学地域医療学センターでの寄付講座(地域医療再生プロジェクト部門)のあり方などを紹介した。
講演2では,厚生労働省大臣官房審議官の唐澤 剛氏が「地域医療,介護連携を考える」と題して講演した。唐澤氏は「厚生労働省の公式見解ではない」と断りながら,国民皆保険を堅持しながら医療制度改革を進めるには,医療・介護の循環的な提供体制を構築し,病院と介護施設体系を再編して,新しい地域連携モデルの構築を図っていくことが必要だとして,ネットワークを活用した医療・介護連携の重要性を強調した。また,2010年度の補正予算として認められた地域医療再生臨時特例交付金の拡充について,その概要を説明した。地域医療再生計画に基づく事業を支援する目的で,都道府県単位(3次医療圏)を対象に交付されるもので,予算総額は2100億円(15億円×52地域,加算枠1320億円),計画期間は2013年度までの4年間となっている。
「地域医療情報ネットワーク取り組み発表」では,協議会の発足人ともなった全国の地域医療連携ネットワークを構築,運営する地域からの代表がそれぞれの取り組みの現状と課題を,協議会への期待などを含めて発表した。発表された地域と講演者は次の通り。
●道南地域医療連携ネットワーク「道南MedIka」
下山則彦
(市立函館病院副院長) |
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●周産期医療情報ネットワーク
小笠原敏浩
(岩手県立大船渡病院副院長) |
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●宮城県脳卒中ネットワーク「SMILE Net」
清水宏明
(東北大学大学院医学系研究・医学部准教授) |
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●わかしお医療ネットワーク
平井愛山
(県立東金病院院長) |
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●山梨慢性疾患診療支援システム「マイ健康バンク」
塚原重雄
(山梨大学名誉教授,NPO法人慢性疾患診療支援システム研究会理事長) |
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●東海医療情報ネットワーク
吉田 純
(中部ろうさい病院顧問) |
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●岐阜県医療情報ネットワーク
白鳥義宗
(岐阜大学医学部附属病院医療情報部) |
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●救急医療支援情報流通システム「GEMITS」
小倉真治
(岐阜大学大学院医学系研究科教授) |
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●かがわ遠隔医療ネットワーク「K-MIX」
原 量宏
(香川大学瀬戸内圏研究センター教授) |
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●医療ネットしまね
中川正久
(島根県病院事業管理者) |
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●あじさいネットワーク
柴田真吾
(市立大村市民病院麻酔科医長兼医療情報企画部長) |
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◆展示会出展社一覧(カッコ内は展示内容)
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