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取材報告

2009

JAMIT Annual Meeting 2009
第28回日本医用画像工学会大会(学会統合記念大会) 開催


長谷川純一 大会長
長谷川純一 大会長

中京大学名古屋キャンパス 正門
中京大学名古屋キャンパス
正門

会場風景
会場風景

 第28回日本医用画像工学会大会(JAMIT Annual Meeting 2009)が8月4日(火),5日(水),中京大学名古屋キャンパスにて開催された。今大会はJAMITとCADM(コンピュータ支援画像診断学会)が2008年9月30日をもって統合後,初めて開催される大会である。「学会統合記念大会」と名付けられ,“CADの現状と将来”というメインテーマで開かれた今大会には,医師や技師,工学関係者を中心に約260人が参加した。1日目には一般演題20題,特別講演,若手セッションなど,2日目には一般演題34題,教育講演,シンポジウムやパネルディスカッションなどが行われ,ポスターは34題が展示された。

 大会に先立ち,大会長の長谷川純一氏(中京大学情報理工学部教授)が挨拶に立ち,今回の大会はCADの研究開発は何のために行うのかという基本に立ち戻り、CADの真の利用者である臨床医の思いや願いに対して、工学側の研究者が何をすべきかをもう一度真剣に考える機会にするため,臨床側からの提言型シンポジウム、産官学で本音を語り合うパネルディスカッション、読影医らによる工学研究者・技術者向けの教育講演などを企画したと述べた。

 1日目の4日午前の特別講演では鈴木直樹氏(東京慈恵会医科大学教授/総合医科学研究センター高次元医用画像工学研究所所長)が,「リアルタイムイメージングを用いた生体現象の3次元的、4次元的解析─人体の動態から古代生物の探査まで─」という題で講演を行った。

 4日午後にはCADコンテストの公開審査と,「若手研究者の本音トーク―若手の興味と壁を探る―」をテーマに,7人の若手研究者らによるセッション(表1)が行われた。CADコンテストの今回の課題は「3次元腹部CT像からの転移性肝腫瘍の抽出」であり,公開審査では専門医がCADの結果を評価する採点課程を見ることができた。若手研究者らのセッションでは,医用画像に関しての将来などについて議論が行われた。セッションで議論された内容は後日,日本医用画像工学会関連書籍で紹介される予定である。

(表1)  
オーガナイザー: 筑波大学・滝沢穂高,座長:愛知工業大学・北坂孝幸
パネラー: 東京大学・根本充貴,岐阜工業高等専門学校・北川輝彦,名古屋大学・出口大輔,大阪大学・中本将彦,山形県立産業技術短期大学校・澁谷倫子,愛知工業大学・北坂孝幸,筑波大学・滝沢 穂高

 2日目の5日午前の教育講演では4人の医師の方が,「CT上の肺結節に対する読影医による鑑別診断と比較診断」という題で講演を行った。

 また,一般演題では,名古屋大学の外山篤史氏らによる「MPIを用いた並列化プログラムミングインターフェースの開発」や,島津製作所基盤技術研究所の赤澤礼子氏らによる「GPUを用いた3D-DRAMA画像再構成の高速化」といった,アルゴリズムの改良によって処理時間を短縮するのではなく,ハードの高い性能を活用したり,組み合わせることによって処理時間を短縮するという発表が興味深かった。自分では今まであまり考えたことがない発想だったので,今後,機会があれば取り組んでみたいと思った。

 午後には,「臨床医より工学系研究者への緊急提言」というシンポジウム(表2)が開かれた。このシンポジウムでは,臨床の現場でCADを使用した経験がある5人の異なる分野の医師が工学系研究者に対し,現在のCADの問題点を挙げ,医療の現場ではどのようなシステムが必要であるかを述べた。普段,われわれは共同で研究している医師以外からCADの開発に関する意見を聞く機会がないので,各分野の医師の方々から具体的な意見が聞けたことはとても貴重な経験であった。医師の方々の意見の中でも特に,CADが検出できなかったり,誤検出した場合,問題の原因がどこにあるのか理解しやすいアルゴリズムを開発してほしい,医師が見落としをなくすために,画像上で目に見えるものは確実に検出できるようにしてほしいといった意見が出て,今後,われわれが開発を進めていく上でも大切なことであると感じた。

(表2)  
オーガナイザー・座長: 木戸尚治,森 健策
・大腸CADにおける現状と問題点─臨床医の立場から
  国立がんセンター中央病院放射線診断部・飯沼 元
・放射線診断医の考える胸部CT-CAD
  名古屋大学医学部附属病院放射線科・岩野信吾
・消化器外科用CADにおける現状と問題点─臨床医の立場から─
  愛知県がんセンター中央病院消火器外科・三澤一成
・マンモグラフィCADの現状と問題点─臨床医の立場から─
  国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター
高度診断研究部 遠藤登喜子
・胸部単純X線写真のCADにおける現状と問題点─臨床医の立場から─
  産業医科大学放射線科学教室・青木隆敏

 大会の最後には,「共に考える:医用画像工学の展開に資する学会の役割―工業会,他学会との連携―」というテーマでパネルディスカッションが行われ,JAMITが学会として今後成長していくためにどうすればよいか,今後どのような学会と連携していけばよいかなどの議論が行われた。

  次回の第29回日本医用画像工学会大会(大会長:今井 裕氏・東海大学医学部教授)は,2010年8月3日(火),4日(水)に東海大学湘南キャンパスにて開催予定である。

インナビネット記者:鈴木祈史,松本拓也(岐阜大学)

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