ホーム inNavi Suite 日立メディコ 別冊付録 磁遊空間 Vol.23 ECHELON RXの導入によりMRI検査の適応範囲が拡大 最新の1.5T MRIでMRマンモグラフィと脳ドックを開始 本庄総合病院
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本庄総合病院
ECHELON RXの導入によりMRI検査の適応範囲が拡大
最新の1.5T MRIでMRマンモグラフィと脳ドックを開始
本庄総合病院は2011年7月,MRI装置の更新に伴い,ワークフローの向上を追究した最新の日立メディコ社製1.5T MRI「ECHELON RX」を導入した。同院は地域中核病院として,急性期から療養期まで幅広い医療を提供しているが,ECHELON RX導入からわずか1か月で,MRIの適応が以前よりも確実に広がり,より高度な医療の提供が可能になりつつあるという。ECHELON RXの初期使用経験について,放射線科の森 啓一技師長を中心にお話をうかがった。
前列左から古川美彦技師,森 啓一技師長,須田実帆技師,
後列左から木村信之技師,青柳佳男技師,横沢孝幸技師,岩崎広志技師,狩野秀樹技師,阿部敏之技師
石原通臣 院長 |
後藤利和 副院長 |
森 啓一 技師長 |
阿部敏之 技師 |
地域の要請に応えて開設された本庄総合病院
上越新幹線の本庄・早稲田駅とJR高崎線本庄駅の間に位置する本庄総合病院は,公的病院のない本庄児玉地区に,より高度な医療を求める地域の要請を受け,1988年に開設された。以来20年以上にわたり,地域中核病院として高度医療を担い続けている。病床数は287床(一般 185床,療養102床),診療科目は内科,小児科,外科,整形外科,脳神経外科などを標榜し,外来患者数は1日400名,救急車搬送数ならびに手術件数はいずれも年間800件以上に上る。
また同院では,画像診断機器等については約20年先までの更新計画を立て,それに則って更新を行っている。2010年6月には他社製シングル・ヘリカルCTを日立メディコ社製64列MDCT「SCENARIA」に更新したほか,同社のWebベースPACS「We VIEW」も同時に導入し,院内全体のフィルムレス化が図られた。さらに2011年には,導入から約11年が経過していた日立メディコ社製0.3TオープンMRI「AIRIS-U comfort」と,X線透視装置が更新時期を迎えたことから,森技師長を中心に選定作業が開始された。
機能やサービスを総合的に評価しECHELON RXを選定
「MRIの更新については,特に脳神経外科と整形外科から強い要望がありました」と石原通臣院長は述べている。AIRIS-U comfortは,拡散強調画像(DWI)がオプションだったことから同院では搭載しておらず,また,体幹部や下肢血管などの撮像にも時間がかかり,実臨床で気軽に撮像できる状況ではなかったという。
これらの課題の解消に加え,新たにMRマンモグラフィが撮像できること,腹部領域の撮像が行えることなどを最低限の条件とした上で,まずは1.5T MRIを導入することが決定された。詳細な検討の結果,ECHELON RXが選定されたが,その理由について,森技師長は次のように述べている。
「発売のタイミングがちょうど更新時期と重なり,柏工場で実際に見学できたことが理由の1つですが,実は,われわれが最も重視したのはむしろサービスでした。画像診断機器は,一度導入したら少なくとも10年は使用しますので,何か問題が起きたときにメーカーがどのように対応するかは,実はとても重要です。その点で,これまでの同社の対応への満足度が大きかったことが決め手となりました」
シンプルワークフローを追究したECHELON RX
ECHELON RXは,高機能・高精細画像とシンプルな操作性の両立をめざして開発された同社の最新装置である。高精度な超電導磁石とアクティブシムシステム“HOSS”により,FOV 500mmという広い撮像空間を有しつつも,高い静磁場均一度を実現した。脊椎コイルを組み込んだ撮像テーブルや,スライドさせるだけで容易にセッティング可能なヘッドコイルが採用され,コンソールには撮像条件を変更する際に設定可能なパラメータなどが自動で表示される“Suggestion機能”が搭載されたことで,検査がより簡単に行えるようになった。また,機械室のないレイアウトが可能なほか,電源容量が従来比で30%低減されるなど,経済性にも優れた装置となっている。
ECHELON RXの操作性について,阿部敏之技師は,「ECHELON RXのコンソールはWindowsベースですので直感的に使いやすく,また,以前にはできなかったタスクのコピーが可能になり,スキャンプロトコールのプログラムが非常に簡単に行えるようになりました」と述べている。撮像時間も以前の約1/3に短縮されたほか,バックグラウンドでの画像処理の高速化が図られ,脊椎コイルのセッティングなどの手間が軽減されたことで,検査効率が大幅に向上した。また,FOVが500mmになったことで,腰部脊柱管狭窄症などの広範囲の撮像でも,辺縁まで高精細な画像が得られるようになったという。
画質の大幅な向上によりMRマンモグラフィのニーズが急増
ECHELON RXが稼働を開始してからわずか1か月であるが,同院のMRI検査の内容は大きく変化している。特に,画質に対する各科の医師の満足度は非常に高く,石原院長は,「乳腺MRIでは,非造影でも腫瘤につながる栄養血管がはっきりと確認でき,本当に驚きました。腰部脊柱管狭窄症でも,腰椎が狭くなっている様子が高精細に描出できるようになり,撮像件数が増加していると思います」と高く評価している。
なかでも,乳腺MRIの撮像件数は順調に増加し,現在はコンスタントに週1〜2例の検査が行われている。乳がんの精査は,以前はCTのみで行っていたが,MRIで広がり診断が行えるようになったことで,より高精度な診断が可能となった。
また,脳神経外科医である後藤利和副院長は,「以前は,症例によっては近隣の医療機関に検査依頼を行っていましたが,ECHELON RX導入後は,その必要がなくなりました。特に,MRAでは血管が末梢まで明瞭に描出できるようになり,解離性脳動脈瘤なども自信を持って診断できます。また,DWIが撮像可能になったことで,急性期脳梗塞と一過性脳虚血発作の鑑別診断が可能になりました」と述べている。動脈硬化性変化や血管壁の不整などもとらえやすくなると期待しており, 8月からは脳ドックも開始されるという。
造影後脂肪抑制T1強調画像(a,c)で濃染が認められ,Dynamic MRI後のTime Intensity Curve(d)によって,乳がんであることが確認された。
事前のCT検査(b)で乳がんが疑われ,MRIでも確認を行った症例である。
a:造影後脂肪抑制3D T1WI,AX(TIGRE),TR/TE:6.4/2.3,FA:15°,スライス厚:2.0mm
b:造影CT画像
c:造影後脂肪抑制3D T1WI,SAG(TIGRE),TR/TE:6.4/2.3,FA:15°,スライス厚:2.5mm
d:Dynamic MRI撮像結果によるTime Intensity Curve
e:Dynamic MRI動脈相画像のMIP像
3D MRA画像で,複数の動脈瘤が確認できる(d,e →)。通常の T2強調画像(a),T1強調画像(b),FLAIR(c)でも動脈瘤が確認できる。
a:T2WI,TR/TE:4000/96,スライス厚:5.0mm,RAPID:1.5併用,撮像時間1分21秒
b:T1WI,TR/TE:400/11.3,スライス厚:5.0mm,RAPID:1.6併用,撮像時間1分54秒
c:FLAIR,TR/TE/TI:9000/108/2300,スライス厚:5.0mm,RAPID:1.6併用,撮像時間1分49秒
d:3D MRA,TR/TE:23.0/6.9,FA:20,スライス厚:1.2mm,RAPID:1.6併用,撮像時間4分03秒
e:dのVR像
非造影MRAとダイナミック撮像に期待
MRI検査の今後の展望について,阿部技師は,「下肢の非造影MRAは,閉塞性動脈硬化症(ASO)の検査にはかなり有用です。ボランティアの撮像では腎動脈もきれいに描出されていたので,非常に期待できます」と述べている。現状では,確定していない撮像条件もあるため,各科の医師と相談しながら,MRCPやGd-EOB-DTPA造影MRIによる肝のダイナミック撮像などにも取り組む予定だという。
また,同院では現在,高磁場装置に慣れるまでは安全性を考慮し,予約枠を1時間に設定して,1日に8〜10件の撮像を行っている。しかし,森技師長は,将来的には救急や他院からの検査依頼にも応えていきたいと考えており,ECHELON RXをフルに活用した今後の展開が注目される。
(2011年7月22日取材)
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