ホーム inNavi Suite 日立メディコ CLOSE UP 2011年10月号 Special Report 日立メディコ/MEDICONNECTION開催
(株)日立メディコは,2011年9月3日(土),同社のCT,MRIなどの製品展示とセミナーを中心に新製品や技術を紹介するプライベートショー「MEDICONNECTION」を,新大阪イベントホール「レ ルミエール」(大阪市淀川区)で開催した。4月のITEM(国際医用画像総合展)がWeb開催となったことを受けて,日立メディコの新製品や新技術の展示,発表を通じてユーザーとの"コネクション(つながり)"を深める イベントとして企画された。新製品の概要とセミナーの模様を中心にリポートする。
最新製品展示と臨床報告セミナーを開催
会場は,MRI,CT,PACS,デジタルX線の機器展示とセミナーステージで構成され,機器は,1.5T超電導MRI「ECHELON RX」,64列マルチスライスCT「SCENARIA」の実機(モックアップ)展示,PACSの「ImageConcier」では6台の端末によるデモンストレーション,デジタルX線では模型やビデオを使った展示が行われた。
開催にあたって挨拶した,代表取締役執行役社長の三木一克氏は次のように述べた。
「今回は,イベント名を日立メディコ+コネクションで"MEDICONNECTION"とした。最新の製品や技術を紹介してユーザーとの"コネクション"を強めること,また,新しいPACSであるImageConcierを中心に,モダリティを"コネクション"して使い勝手の向上を図る意味を込めている。日立グループでは,医療事業を"社会イノベーション事業"の中核として位置づけ,今後のITEMやRSNAなど主要な医療関連展示会には,日立グループとして行う方針である。その中で,日立メディコの60年の経験を生かし,中核企業として実績を積み重ねていきたいと考えている」
MRI
ECHELON RX◆高機能・高画質でワークフローの改善に貢献
ECHELON RXは,高精度かつ高機能化を進めるのと同時に,コイルシステムを一新して,高感度化とワークフローの改善まで考慮した開発を行い,トータルの検査時間の短縮に貢献する。MRIでは,高速撮像法の開発など撮像時間の短縮を図ってきたが,検査時間の中では部位ごとのコイルのセッティングにかかる比重が大きかった。ECHELON RXでは,脊椎コイルのテーブルへの組み込みや,頭部用コイルをはずさずにスライドするだけで腹部撮像を可能にする機構など,検査のワークフローを改善する新しいコイルシステムを開発した。展示では,軽量化を図った各部位のコイルや,検査部位に合わせて長さを可変できるマルチパーパスコイルなど,"Workflow Coil System"として製品を展示した。また,テーブル(寝台)も造影剤注入などの手技をサポートするアームボードや,両手をフリーにして操作が可能なフットスイッチなど,"やさしい"検査に配慮した設計になっている。
コンソールでは,アクティブシムシステム"HOSS"による高い磁場均一性による高精細な臨床画像などが紹介され,注目を集めていた。
CT
SCENARIA◆高いViewレートの全身スキャンで高画質検査を実現
SCENARIAは,ガントリの開口径75cm,奥行き88cm,天板幅47.5cmというオープンなデザインと,検査ガイダンスや息止め表示なども可能な多目的液晶モニタ"Touch Vision"や撮影部位ごとのセッティングを登録できるプリセットボタンなど,やさしい検査をサポートする。撮影では,0.35秒/回転と高いViewレートで全身の高速,高密度スキャンを可能にし,逐次近似法を応用した"Intelli IP"や,解析アプリケーションの"fatPointer""LungPointer"など,被ばく低減と高画質収集を可能にする機能を搭載した。
また,寝台横スライド機構と心臓専用の低被ばく用X線補償フィルタ(Bow-tie Filter)によって,低被ばくで高い分解能の心臓CTを可能にした"IntelliCenter"が搭載された。寝台は左右8cm(計16cm)のスライドが可能で,FOVを回転の中心に移動し,フィルタによってX線を絞ることで,空間分解能の向上と低被ばくを両立させ,冠動脈CTが0.5mSvで撮影可能になった。
PACS
ImageConcier◆ユーザーの要求に柔軟に応える次世代PACS
モダリティを"コネクション"する新しいPACSとして開発されたのが,ImageConcierである。多彩で高品質なサービスを提供する「コンシェルジェ」をコンセプトにして,モダリティごとの画像検査履歴を時系列にサムネイルで一覧表示する"診療データコックピット",検査予約やMWMによるモダリティの検査管理など,画像検査を簡単に管理できる"モダリティ検査予約機能",個人に合わせたレイアウトや機能の登録が行える"MyStyle",内視鏡や心電図などにも対応する画像診断レポート機能を装備しているのが特長だ。また,遠隔画像診断サービスのドクターネットと提携し,読影依頼をシームレスな環境で運用できるようになっている。
デジタルX線
片手操作でユーザビリティを向上
デジタルX線装置「Radnext PLUS」のX線管支持器の新しい操作系"ワンハンドコントローラー"を展示した。支持器の操作は両手で行うタイプが一般的だが,日立製作所デザイン本部と協力し,ユーザビリティを考慮したデザインを取り入れ,片手で移動や回転などの操作ができ,もう片方の手をフリーにすることで,患者さんへのサポートなどが可能になる。今年,秋以降に製品に搭載される予定だという。
当日は台風にもかかわらず,開場から多くのユーザーが訪れ,MEDICONNECTIONは盛況のうちに終了した。
MRI◆脳梗塞MRI信号の経時的変化〜超急性期・急性期と亜急性期以降の画像比較
大日方研氏(有限会社ONM代表,大日方病院副院長)は,脳梗塞の亜急性期におけるDWI信号の経時的な変化について,ECHELON Vegaで撮像した15症例を紹介した。DWI画像は超急性期・急性期の脳梗塞の画像診断では,治療方針の決定や経過観察に有効だが,亜急性期ではあまり撮像されない。DWIは,亜急性期では前期から後期において信号が落ちていくが,他社のMRIではとらえきれないケースがあった。今回撮像したECHELON Vegaでは,病態を反映したDWI信号の変化を画像化でき,大日方氏は,「画像の歪みやアーチファクトの少ない,感度の良いDWI画像が撮像できる」と評価した。
CT◆SCENARIAの臨床使用経験と逐次近似を応用したIntelli IPの紹介
川又郁夫氏(東海大学医学部付属八王子病院診療協力部放射線技術科科長)は,東海大学八王子病院での逐次近似法を応用した被ばく低減技術である"Intelli IP"の臨床使用について解説した。同院では,製品に搭載されたIntelli IP1とプロトタイプのIntelli IP2(仮称)を使用している。1はノイズ低減を,2はノイズとアーチファクトの低減をターゲットにした技術である。被ばく低減効果は,1ではCNR(コントラスト/ノイズ比)で32〜36%減,2では同じく10〜74%減が可能で,同院では胸部の検診CTで65%の線量削減を実現している。また,画像再構成時間に関してはFBP法との差はなく,検査のプロトコールの中に組み込んで運用しても問題ないとした。
CT◆64ch マルチスライスCT"SCENARIA":その特長を活かした実践的活用
林 宏光氏(日本医科大学放射線医学准教授)は,大学病院での救急医療や循環器の画像診断に活用されているSCENARIAの臨床での経験について,豊富な画像データを示しながら講演した。SCENARIAの臨床的なメリットは,0.35秒/回転で全身検査が行えることで,2次元散乱線コリメータ(2D-ASC)によって体軸方向の散乱線が除去されており,低被ばくで高画質のデータが収集可能になっている。さらにハイピッチでの0.35秒での撮影によって,小児など体動がある場合でも短時間で広範囲の検査が可能となる。林氏は,脳動脈瘤や悪性腫瘍,心臓などの症例を提示し,SCENARIAは,精度の高いデータ収集が可能で,CTは診断だけでなく治療戦略を決定するツールとなりつつあると評価した。
PACS◆遠隔画像診断・品質向上への取り組み
成瀬昭二氏(第二岡本総合病院健康事業顧問)は,4月から(株)ドクターネットの顧問を務めているが,画像診断の基本要素は正確性,迅速性,信頼性であり,それは遠隔画像診断サービスにおいても変わらないと述べた。ドクターネットでは,読影レポートの品質管理について独自のワークフローを構築して対応している。成瀬氏は,遠隔画像診断では,依頼情報や血液検査など補助情報の不足が読影の際の課題になるが,電子カルテやPACSとの連携が進むことで情報共有が容易になることが期待され,さらに多彩な専門家集団である組織としての特長を生かして,Smart Tele-RAD(インテリジェント遠隔画像診断)の提供が期待されると述べた。