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ホームの中のinNavi Suiteの中のGEヘルスケア・ジャパンの中のAdvanced Report の中の「Innova Dose Report」 トライアルインタビュー 経時的なデータ収集と解析によってインターベンションにおける被ばく線量の低減を実現  草津ハートセンター放射線部 村上 和男/安藤 洋亮/細川 良介

healthymagination series 2012
Advanced Report No.1

「Innova Dose Report」 トライアルインタビュー
経時的なデータ収集と解析によってインターベンションにおける被ばく線量の低減を実現

草津ハートセンター放射線部 村上 和男/安藤 洋亮/細川 良介

草津ハートセンターに導入されている血管撮影装置「Innova2100IQ」。左から村上氏,細川氏,安藤氏
草津ハートセンターに導入されている血管撮影装置「Innova2100IQ」。
左から村上氏,細川氏,安藤氏

GEヘルスケア・ジャパンでは,リモートメンテナンスシステム「InSite」を利用した新しいサービスの提供を進めている。新コンテンツのひとつとして,血管撮影装置の線量管理について,オンラインでの情報収集とデータ解析によって,“線量リポート”の提供や“線量通知”を行う「Innova Dose Report」の開発を進め,2012年中のサービス提供を予定している。 滋賀県草津市の草津ハートセンター(許 永勝院長)では,「Innova2100IQ」(GEヘルスケア・ジャパン)ほか2台の血管撮影装置で,年間450件を超える冠動脈インターベンションが行われているが,同センターでInnova Dose Reportの試験導入がいち早く行われた。その経緯とX線線量管理におけるDose Reportの効果についてインタビューした。

村上 和男 氏
村上 和男 氏
安藤 洋亮 氏
安藤 洋亮 氏
細川 良介 氏
細川 良介 氏

■ 血管撮影装置の線量データを自動収集し解析を行うDose Reportを試験導入

─ 血管撮影装置の線量管理はどのように行われていますか。
村上:血管撮影の線量管理は決められた方式はなく,施設ごとの運用で行われているのが現状です。当センターでは,治療の際の患者さんの積算線量を計測して,検査ごとに管理してきました。
Innova2100IQでは手技中の線量を収集して,トータルの線量が手技終了後に表示されますので,それを患者ごとに記録します。線量をチェックして,特に多かった場合には注意して,フォローアップするようにしています。
安藤:インターベンションにおける照射線量は,治療の難易度による手技の方法や時間,患者さんの体格などによって異なります。重度の狭窄などで治療が難しい症例では,手技の時間が長くなり照射線量は多くなりますが,目の前の病気を治すという利益を得るために許容できる線量だと正当化されます。ただ,治療の種類や方法に基づく照射線量の基準はありませんので,施設や担当医師の判断によって線量管理を行うことが求められます。

─ Dose Reportを試用する経緯をおうかがいします。
村上:3月の東日本大震災に伴う原子力発電所の事故によって,患者さんの放射線に対する意識が大きく変わりました。当センターでは,単純CTによる心臓健診に取り組んでいますが,CTでは被ばく低減への取り組みが積極的で,われわれも独自のルールを作成して対応してきました。その流れの中で,改めて血管撮影装置についても線量管理を見直そうと考えて,装置メーカーであるGEに相談したところ,開発中だったDose Reportのトライアルに繋がりました。
安藤:これまでの線量管理では,個々のデータは把握していても,装置全体としての使用状況や,それが適正かどうかの情報がありませんでした。そこで,2011年7〜9月の3か月間のトライアルとして,Dose Reportを利用しました。当センターのInnova2100IQは,GEのリモートメンテナンスシステムであるInSiteに接続されており,Innovaに保存されている検査ごとの線量情報などがGE側に転送され,解析を行った結果がレポートとして報告されるという仕組みです(図1)。

図1 Innova Dose Reportのデータ例:1検査の透視時間の分布 1検査のトータルの透視時間の分布を,棒グラフで表示。グラフの縦軸は検査数,横軸が透視時間(10分刻み)。施設ごとに閾値を設定して,上回った場合には通知することが可能(右端の赤が閾値オーバー)。
図1 Innova Dose Reportのデータ例:1検査の透視時間の分布
1検査のトータルの透視時間の分布を,棒グラフで表示。グラフの縦軸は検査数,横軸が透視時間(10分刻み)。
施設ごとに閾値を設定して,上回った場合には通知することが可能(右端の赤が閾値オーバー)。

─ Dose Reportの第一印象はどうでしたか。
安藤:Dose Reportでは,累積線量や面積線量,透視時間(図1),プロトコルごとの透視と撮影時間,SIDベンチマークなどが,1か月ごとの統計としてレポートされます。これまで漠然としかわからなかった血管撮影装置による被ばくの全体像が,グラフなどによって可視化されたことで問題点が明確になりました。また,グラフという目に見える形で示されることで,低線量化に取り組むスタッフへの動機付けにもなりました。
村上:Dose Reportによって,検査ごとの積算線量の分布に低いところと高いところで2つのピークがあり,その中間の“谷”の部分にもいくつかの検査があることがわかりました。この谷の部分は,被ばくのリスクと得られる利益が拮抗している症例と考えられ,この群はより線量を減らすことができるのではないかと考えられました。そこで,手技に差し支えない範囲で線量を減らすことができるのではないかと考えて,GEと相談してInnovaの「Doseカスタマイズ機能」によって,血管撮影装置のプロトコルを見直すことにしました(図2)。これまでは,当初に設定された1種類のプロトコルしかなかったのですが,透視のパルスレートやフィルタなど60種類以上のプロトコルの中から,患者さんの体格や手技の難易度を考慮した6つのプロトコルを採用しました。基本となるプロトコルを以前よりも低線量にして,術者の医師の意見を聞きながら,手技に合わせてプロトコルを使い分けるようにしました。

図2 InnovaシステムのDoseパーソナライゼーション機能
図2 InnovaシステムのDoseパーソナライゼーション機能
施設間,術者間,症例間で異なる画質/被ばくバランスのニーズに対応すべく,複数のパラメータ設定を顧客の要望に合わせてパーソナライズ(カスタマイズ)する。
1)「トラジェクトリ」では,大きく5段階のシステムDoseセッティングが可能で,最大設定<1>を100%とした場合,最低設定<5>では35〜40%のDoseレベルに設定できる。
2)「フレームレート可変」によるDoseセッティングでは,“Max Dose Reduction”と“Balanced IQ”の2通りのモードで被ばく低減効果を選択可能。
Doseパーソナライゼーション機能では,トラジェクトリとフレームレートの組み合わせによって,最大60通りのシステムセッティングを可能とし,きめ細やかなDoseセッティングを実現する。

─ プロトコルの見直しによる効果はどうでしたか。
細川:プロトコル見直し後の1か月のDose Reportで,中間の群を一番低い線量のグループにシフトすることができました(図3)。もちろん,別の症例で患者さんのプロフィールも異なりますが,プロトコルを見直したことで積算線量を抑えることができ,治療のワークフローを変えることなく,全体として線量を減らすことができました。
村上:Dose Reportでは閾値を設定することで,その数値を超えた時にアラートを出す「線量通知」の機能を利用できます。線量通知には,術中に設定された線量を超えた場合に出るアラートと,累積線量が超えた場合に検査後に通知される情報があります。術中のアラートでは,術者の医師に伝えてプロトコルをさらに線量を抑えたものに変更する場合もあります。また,累積線量の通知については,放射線外傷などの有無を確認して,必要であればフォローアップするなどの対応がとれます。
安藤:今まで記録された線量のデータをフィードバックして,全体を見直す機会はなかなかありませんでした。今回,Dose Reportのデータを見て,数字とグラフで視覚的に確認できた意味は大きかったと思います。また,これだけのデータを,スタッフがマニュアルで記録し管理することは不可能です。Dose Reportのようなツールがあれば,現場の負荷を増やすことなく,質の高いデータの収集が可能になります。

図3 血管撮影装置のプロトコル見直しによる線量分布の変化
図3 血管撮影装置のプロトコル見直しによる線量分布の変化
a:見直し前 b:見直し後
検査ごとの照射線量の分布を比較。縦軸は検査数,横軸が線量(Gy)。
見直し後は1Gy以下の検査が増加し,低線量化が実現されている。

─ 今後の可能性をどのように感じていますか。
安藤:Dose Reportでは,面積線量や累積線量のほかにも,フラットパネルの部位ごとの照射線量や他施設とのベンチマークなど,多種多様な解析データが提供されます。例えば,フラットパネルの部位ごとの照射線量(Cumulative Dose Incidence Map)を放射線による皮膚紅斑の治療のために皮膚科と共有するとか,あるいは患者さんの積算線量だけでなく術者の線量管理にも利用できるのではないでしょうか。
細川:Dose Reportのデータは積算線量で,統計学的に積算値として計算されている数字ですが,実際の絶対線量としてバリデーションを行うことも追求していきたいですね。症例によって,アプローチ方法の違いでこれだけのリスクがありますという情報を提供できれば,より安全な治療に繋がるのではと期待しています。
村上:今後は,患者体重だけでなく,性別や年齢による分類と解析があるといいですね。放射線の感受性は,年齢や性別によって変わりますので,そのデータを線量管理に反映させることができれば,よりきめ細かい対応が可能になります。さらに,Dose Reportが血管撮影装置だけでなく,CTなど他のモダリティにまで普及していけば,患者さんのトータルの線量管理が可能になると期待しています。

Interview●許 永勝 院長
循環器領域での高度で専門的な診療を最先端の機器とスタッフで提供
許 永勝 院長
許 永勝 院長
草津ハートセンターは,循環器専門施設として2006年3月に開設した。全国のハートセンターの先駆けとして,高度で専門的な診療を提供する同施設の現況と,血管撮影装置における線量管理の方針を,許 永勝院長にインタビューした。

─ 施設の特徴をおうかがいします。
許:高度で専門的な治療を,最先端の機器と高い技術を持ったスタッフで提供することを目的として開設しました。総合病院や公的病院ではできない専門領域に特化した機器,スタッフをそろえ,われわれがやりたかった循環器における研究を含めた先端的な診療を提供するという“夢”を実現するための施設です。
“ハートセンター”としたのは,単なる専科のクリニックではなく,地域における循環器疾患についての診療には責任を持つという意味があります。

─ X線被ばく管理についての方針をおうかがいします。
許:PTCAの技術は,ますます高度で繊細になっています。細いカテーテルや血管内腔を描出するためには,画質を含めて高機能の血管撮影装置が必要ですが,単に高画質であるだけでなく低線量で治療が行える性能を発揮できる装置が必須であり,導入時にはその点を考慮して機器をそろえました。
線量管理については,基本的には医療放射線被ばくは,治療によって得られる利益が被ばくのリスクを上回ることで正当化されると考えますが,東日本大震災に伴う原発事故によって,一般の放射線に対する考え方が大きく変わっています。われわれも被ばく管理には高い意識を持って取り組んでいますが,その際にDose Reportのようなサービスがあればしっかりとしたデータに基づいた対応が容易になるでしょう。
今後,循環器のインターベンションの技術は,ますます高度化することが考えられますが,被ばく管理を含めて,患者さんの利益を第一に考えて取り組んでいきたいですね。


草津ハートセンター
草津ハートセンター
診療科:循環器科(狭心症・心筋梗塞・心臓病全般・PCI等)
住所:〒525-0014 滋賀県草津市駒井沢町407-1
TEL 077-568-5333 FAX 077-568-5335
http://www.kusatsu-heartcenter.co.jp

(インナービジョン誌 2012年3月号掲載)

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