膵臓の超音波診断にボリュームデータによる3Dイメージを用いることで,(1) 腫瘍や嚢胞などの体積計算,(2) 主膵管と嚢胞との交通の有無の確認,(3) 嚢胞や主膵管の内腔面の凹凸の評価が可能になる。われわれはこれを,“VirtualSonographic Cystoscopy”,もしくは,“Virtual Sonographic Endoscopy”と呼んでいる。また当院では,造影超音波と3Dを組み合わせることで,Mural Nodule(壁在結節)とデプリの鑑別を行っている。
●腫瘍や嚢胞の体積計算
通常,2Dで腫瘍や嚢胞の体積計算を行う場合は,縦,横,厚みの3方向を計測して割り出しているが,計測位置がずれると数値が大きく変化してしまうことがある。一方,3Dでは,プローブのスイープ角の中に嚢胞がすべて納まるように設定すると,5秒以内で3Dの断面像として表示される。嚢胞のみをボリュームレンダリング(VR)表示することも可能であり(図1),エコーレベルのコントラストが十分に得られる症例では,例えばがんの化学療法や放射線治療後の経過観察などにおいて,体積の変化が視覚的に判断できるようになる。また,VR表示された嚢胞は,回転させてさまざまな方向から観察可能であり,嚢胞を取り出して内腔面の凹凸を見ることもできる。
●主膵管と嚢胞の交通の有無の確認
主膵管と交通のある嚢胞は,IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍),いわゆる前がん病変の可能性が高く,膵がん診断における重要な目安となる。図2では,多房性嚢胞が膵体尾部に認められ,主膵管もわずかに見えているが,交通の有無についてははっきりしない。しかし,MRCPで交通が認められたため,その部分を3Dで確認すると,交通が明瞭に描出された(図3)。
●嚢胞と主膵管の内腔面の評価
通常,主膵管の内腔面を見るためには,膵管鏡を用いた侵襲的な検査が必要であり,また,嚢胞の内腔まで観察することは難しい。しかし,病変部を3DでVR表示すれば,嚢胞の外側から内側に視点を移動させていくだけで,平滑な内腔面であるとの評価が可能である(図4,5)。
図6はIPMC( 膵管内乳頭粘液性腺癌)混合型の症例で,主膵管と分枝膵管の両方に結節が見られる。ノイズが多く嚢胞部分が不明瞭だが,ソナゾイド造影を行うと投与後20 〜 30秒程度で膵実質が最も強く濃染され,その後コントラストに優れた3Dイメージが得られた。これをVR表示して内腔面を観察すると,大きな結節以外にもたくさんの凹凸が見られた(図7)。IPMCは良悪性境界病変も多いため,嚢胞内腔面の凹凸が良好に認識できることは,非常に大きなメリットと考えている。当院では,ERCPや切除手術などで確定診断がついた15mm以上の嚢胞性病変を持つ77症例について,嚢胞の内腔面の状態を3Dイメージのパターンで分類した。その結果,内腔面が平滑なT〜V型には悪性病変は1例も含まれていなかった。3Dイメージを用いることで病変の客観的な評価が可能になり,良悪性の鑑別にも役立つと期待している。 |