慶應義塾大学医学部放射線診断科の陣崎雅弘氏は、「Coronary CTAの新たな展開」と題して画像表示の観点から講演を行った。
冠動脈CTで評価可能なこととしては、冠動脈狭窄の検出、プラークボリュームの評価、プラーク性状診断の3つが大きく挙げられる。64列MDCT(図5)では、冠動脈狭窄の診断能は約95%ときわめて高い。しかし、重度石灰化病変では、アーチファクトによって血管内腔が評価できないことが多い。プラークボリュームの評価についてはIVUSとよく相関するデータが出されているが、計測精度はまだ十分ではなく、また、非石灰化プラークの検出能は十分とは言えない。プラーク性状評価については最も期待されていることであるが、診断精度に疑問が残る。さらに、2.5mm以下のステントではアーチファクトによって内腔が評価できないことや、64列MDCTでは被ばく量が多いなどの問題もある。そこで陣崎氏は、これらの課題を解決するための新しい手法について、画像を示しながら紹介した。
被ばく低減に対して、GE社ではStep and Shoot法を用い、拡張期に合わせてデータ収集することで、被ばく線量を従来の約30%にまで低減化することが可能になった(図6)。この手法は、高心拍患者に対してもβブロッカーを投与すれば適用可能であり、陣崎氏は、画質が低下することなく被ばく低減が図れる画期的な手法であると評価した。
次に、重度石灰化への対策として、Dual Energy CTが紹介された。これは、80kVと140kVで2回撮影し、CT値の変化率から物質を特定する手法である。GE社では現在、80kVで撮影後、0.23秒で140kVに切り替え、もう一度撮影する方法を採用している。冠動脈の摘出標本を用いた検討では、重度石灰化症例でもヨードとカルシウムが分離でき、狭窄がないことが評価できた。実際、末梢動脈病変の患者さんではヨードと石灰化の分離が可能なことより(図7)、近い将来、心臓への応用が可能になれば、重度石灰化の影響の少ない冠動脈内腔の評価が期待できる可能性があると、陣崎氏は述べた。
また、冠動脈病変の新たな表示法として、従来のAngiographic ViewにプラークをのせたPlaque Loaded Angiographic Viewという表示法が提唱された(図8)。前述した高分解能CTによりプラークの診断精度が向上すれば、1枚の画像でプラークの局在診断と治療効果判定が同時に可能になると予測される。
最後に、GE社が開発中の高分解能CTが紹介された。高分解能CTは、理論的には従来のCTの2倍の分解能を持つ。ステント内腔や冠動脈狭窄、プラーク性状の診断能の向上が期待されている。 |