Future of Radiology 困難をチャンスに。 molecular biologyを取り入れて放射線医療は次の時代へ。

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Future of Radiology From Perspective of BWH

第93回北米放射線学会(RSNA2007)に合わせて開催された「GEYMS Seminar 2007 in Chicago」では、Harvard大学Brigham and Women's Hospitalの幡生寛人氏ほか、2名の演者が"Future of Radiology"をテーマに講演した。将来の不明確な時代を好機として、Radiologyの将来を模索する。

 Brigham and Women's Hospital(BWH)は、Harvard Medical Schoolの提携病院であり、医学教育の場でもある。今日は、BWHでの取り組みを中心に、"Center for Pulmonary Functional Imaging"、"模索するRadiology"、"Future of Radiology"の3つのテーマについてお話したい。


Center for Pulmonary Functional Imaging

 Center for Pulmonary Functional Imagingは今回、BWH Radiology Research and Education Fundから3年間で1億円の助成金を受けることが決まった。
 ハーバード大学は1930年代から肺生理学の中心の1つであり、基礎研究を臨床につなげてきたという歴史を持つ。肺生理学領域においては、約50年にわたり同じ検査手法が用いられてきたが、逆に言えば、画像診断によって新しい検査手法が確立すれば、エビデンスが変わりうる状況にあると考えている。現在は、BWHの放射線科が中心となり、呼吸器内科、外科、麻酔科、School of Public Health、小児病院、ニューハンプシャー大学と共同で、Xenon Polarizerの開発と臨床応用を行っている。
 このほか、肺の血流やパーフュージョンについては、腫瘍の1つのバイオマーカーとしてとらえ、プロテオミクスやジェノミクスの情報と合わせて活用しようと考えている。さらに、3T MRIを活用した腫瘍のDynamic-CE MRIや、肺の動きの解析なども、今後の研究テーマとしていく予定である。

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模索するRadiology

 Radiologyはいま、将来を模索している。この数十年は技術の進歩やコンピュータ技術の応用によって進歩を続けてきたが、さらなる進歩に向けて、これからの時代はmolecular biologyの知識や情報を取り入れていくことが求められている。
 そのためにはまず、画像を1つのバイオマーカーとしてとらえ、最終的には一人ひとりの患者さんのテーラーメード医療のためのデータベースを作る必要がある。さらに、検査によって得られた膨大なデータをどう有効活用するかということも重要な課題である。近年、デジタルデータは爆発的に増加したが、放射線科医のレポートとして臨床科に届くのは、そのうちの1%以下の場合もありうる。こうした情報をより多く生かすためには、Image processing分野などとの連携を行っていく必要がある。
 また、これまでの診療はそれぞれの臨床科ごとに行っていたが、最近では病院や大学の構造が臓器別へと変化しつつある。BWHでも、肺胸部や女性疾患などの領域ごとにエリア分けがされ、例えば循環器内科と心臓外科と心臓放射線科で1つのビルディングを建てており、病院の構造がより機能的なものに変わりつつある。
 そして、molecular imagingはどういう位置づけになるかを考えたとき、CTやMRIなどモダリティ部分と各専門領域の上に三次元的に存在するというのが私自身の結論である。つまり、molecular imagingは1つのモダリティによるものではなく、例えばMRIで神経領域の研究を行っているときに、そこにmolecular biologyの知識を加えれば、それがMRIを使った神経領域におけるmolecular imagingになる。領域やモダリティとは別の次元でとらえる必要がある。最近では、得られた多くの情報を単に診断に活用するのではなく、治療につなげるImage Guided Therapyが大きな流れの1つとなっている。
 これら一連の動きを課題ととらえるか、チャンスととらえるかは、一人ひとりの放射線科医の判断に委ねられている。

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Future of Radiology

 この20年間に、テクノロジーとコンピュータサイエンスはめまぐるしく発展し、CT、MRI、PET、PACSなどの登場によって、多くの放射線科医がきわめてエキサイティングな仕事を行ってきたのではないかと思う。
 こうした状況の中、ほとんどの放射線科医はmolecular biologyを意識せずにすんできたとも言える。内科系や外科系の医師はその間、懸命にmolecular biologyについて学び、取り入れることで進歩を続けてきた。そしていま、われわれが直面している最も大きな課題は、molecular biologyと真正面から向き合わなければならない時代になったということである。
 逆の見方をすれば、モダリティや領域にかかわらず、これまで医学を発展させてきたmolecular biologyを放射線医学に取り入れれば、それがmolecular imagingにつながっていくと理解している。つまり、molecular imagingを自らの研究領域、専門とするモダリティの中でとらえ、そこから何か新しいものを生み出すというアプローチをすればよいのではないかと考えている。
 また、放射線科医は、画像を見て診断することで満足する傾向があり、画像の向こうに悩んでいる患者さんや家族がいることをともすると忘れがちだが、得られた情報を治療につなげていくことが可能な時代になってきている。
 これからの20年は不透明な時代ではあるが、見方を変えれば、われわれにとって非常に大きなチャンスが訪れていると言えるのではないだろうか。

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*GEYMS Seminar 2007 in Chicago 講演(2007年11月28日)より抜粋

幡生寛人 氏
Clinical Director, MRI Program Medical Director, Center for Pulmonary Functional Imaging Brigham and Women's Hospital. Associate Professer, Harvard Medical School
幡生寛人 氏

●お問い合わせ先
GE横河メディカルシステム株式会社
〒191-8503 東京都日野市旭が丘4-7-127 TEL 0120-202-021(カスタマー・コールセンター)
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