64列MDCT「LightSpeed VCT」のコンソール
操作を行う岡野義幸技師 |
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64列MDCTによる心臓CT |
慶應義塾大学病院では、 4列MDCTによる冠動脈CTを2000年から開始しています。MDCTが衝撃的デビューをした1998年から、わずか2年後のことです。以後、心臓CTは8列、16列MDCTへと進み、2005年1月にはアジア地域で初めて、GE社製64列MDCT「LightSpeed
VCT」を導入し今日に至っています。
従来、ゴールドスタンダードとされてきた冠動脈造影検査(CAG)に比べて心臓CTは、非侵襲かつ短時間、外来検査も可能でコストも安いなどのメリットがあります。64列MDCTでは画質が飛躍的に向上したため、冠動脈の有意狭窄病変の検出率が90%以上になりました。同院の心臓CTは現在、週に約25件実施しており、すべて64列MDCTを使用しています。心臓CTの適応をさらに広げる64列MDCTは臨床現場に急速に普及し、いまや国内では300台に届く勢いです。それに伴って、患者さんに優しい検査法である心臓CTを行う施設が増えていくことが望まれます。
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64列MDCT「LightSpeed VCT」と心臓CTに携わる先生方
左から、中村祐二朗技師、岡野義幸技師、栗林幸夫教授、陣崎雅弘医師、山田 稔特別研究員、井上征雄医師、小松龍士訪問研究員、佐藤浩三医師 |
・冠動脈CTの画像表示法の進歩
GEと共同開発した「angiographic
view」
MDCTによる冠動脈の評価には、再構成画像の表示・解析が重要になります。慶應義塾大学病院ではまず、volume
rendering(VR)像により心臓・冠動脈全体を俯瞰し、次に「angiographic view」を作成します。これは、GE社と共同開発した画像表示法で、三次元情報から心室の造影情報を削除し、冠動脈のみの造影情報をMIP(最大値投影法)で表示したものです。従来のCAGに近似した画像のため循環器医にも非常に理解しやすく、任意の角度で観察でき、病変の検出能に優れています。さらに、curved
planar reformation(CPR)やstretched CPR、cross sectional
image(短軸像)で狭窄、プラーク、石灰化の有無を検討し、狭窄度の評価などを行います。元のアキシャル像だけで診断するのは病変を見逃す確率が高いので危険です。
ほとんどの心臓CT検査では、これらの画像をGE社製三次元画像処理ワークステーション「Advantage
Workstation」で作成しています。Advantage Workstationは優れた心臓の解析ソフトウエアがあり、同じボリュームデータを使って全画像を一連の流れで解析できるため、短時間処理が可能です。解析には通常、30分〜1時間ほどかかります。
冠動脈CTの画像表示法 (栗林幸夫先生ご提供)
・被ばく低減の切り札「SnapShot
Pulse」
心臓CTには課題もあります。その1つが、CAGの約1.5倍という被ばく線量です。慶應義塾大学病院では、64列MDCT「LightSpeed
VCT」のAdaptive Technologyである「SnapShot Pulse」を用いて低減化を図っています。「SnapShot
Pulse」は、RSNA2005で初めて発表され、RSNA2006ではGE社展示ブースのCTエリアで中心的展示になったアプリケーションです。従来のヘリカルスキャンを行わず、40ミリ幅で心電同期のコンベンショナルスキャンをプロスペクティブゲーティングで行うことで、ムダな被ばくをカットしつつ、高画質も維持できるというものです。同院では、従来より約65%の被ばく低減効果が認められています。これにより、CAGの被ばく線量の下限と同等かそれ以下になりますので、非常に大きなメリットと言えます。
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SnapShot Pulseによる撮影例
(栗林幸夫先生ご提供)
60歳代 女性
トレッドミル 陽性
ガントリ回転速度:0.35秒
撮影時間:4.7秒
120 kV, 425 mA
DLP:216.9 mGy・cm
実効線量:3.67 mSv
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