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国内屈指の規模とレベルを誇る
慶應義塾大学病院
 慶應義塾大学の歴史は、1858(安政5年) 年に福沢諭吉が蘭学塾を開いたことに始まる。1868年に新たに創設された学塾が「慶應義塾」と命名され、1917(大正6年)年、医学者で細菌学者でもある北里柴三郎が医学科予科を開設した。1920(大正9年)年には医学部が開設され、同時に慶應義塾大学病院も開院。以来、今日に至るまで、わが国を代表する医療機関としての地位を築いてきた。
 病床数1072床、診療科目27科、13の中央診療部門を有する同院は、診療、教育、研究、社会貢献のすべてを大学病院の使命と位置づけている。患者中心の医療、先進的医療の開発と質の高い安全な医療の提供、豊かな人間性と深い知識を有する医療人の育成、医学・医療を通じた福祉への貢献を理念に掲げ、1994年には厚生労働省から特定機能病院としての承認を受けた。以来、抗がん剤感受性試験をはじめとした先進医療の提供に努めている。また、全国110の関連病院などとの人事交流や医療連携を通して、地域医療にも積極的に取り組んでいる。
 同院には1日平均約4000人の外来患者が受診し、年間2万人を超える救急患者を受け入れている。さらに、全身麻酔手術は年間約7000件も実施されている。循環器領域では、2005年の1年間で、経皮的カテーテル心筋焼灼術が119件、冠動脈、大動脈バイパス移植術および体外循環を要する手術が217件、経皮的冠動脈形成術、経皮的冠動脈粥腫切除術および経皮的冠動脈ステント留置術が255件行われており、高い治療成績を上げている。
 

 

  ●慶應義塾大学病院
住所:160-8582 東京都新宿区信濃町35
TEL 03-3353-1211(代))
URL http://www.hosp.med.keio.ac.jp/
URL http://www.keio-cardiovascular-image.com(心臓血管画像研究室)


慶應義塾大学病院


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64列MDCT「LightSpeed VCT」のコンソール
操作を行う岡野義幸技師

64列MDCTによる心臓CT
 慶應義塾大学病院では、 4列MDCTによる冠動脈CTを2000年から開始しています。MDCTが衝撃的デビューをした1998年から、わずか2年後のことです。以後、心臓CTは8列、16列MDCTへと進み、2005年1月にはアジア地域で初めて、GE社製64列MDCT「LightSpeed VCT」を導入し今日に至っています。
 従来、ゴールドスタンダードとされてきた冠動脈造影検査(CAG)に比べて心臓CTは、非侵襲かつ短時間、外来検査も可能でコストも安いなどのメリットがあります。64列MDCTでは画質が飛躍的に向上したため、冠動脈の有意狭窄病変の検出率が90%以上になりました。同院の心臓CTは現在、週に約25件実施しており、すべて64列MDCTを使用しています。心臓CTの適応をさらに広げる64列MDCTは臨床現場に急速に普及し、いまや国内では300台に届く勢いです。それに伴って、患者さんに優しい検査法である心臓CTを行う施設が増えていくことが望まれます。


64列MDCT「LightSpeed VCT」と心臓CTに携わる先生方
左から、中村祐二朗技師、岡野義幸技師、栗林幸夫教授、陣崎雅弘医師、山田 稔特別研究員、井上征雄医師、小松龍士訪問研究員、佐藤浩三医師



・冠動脈CTの画像表示法の進歩
GEと共同開発した「angiographic view」 
 MDCTによる冠動脈の評価には、再構成画像の表示・解析が重要になります。慶應義塾大学病院ではまず、volume rendering(VR)像により心臓・冠動脈全体を俯瞰し、次に「angiographic view」を作成します。これは、GE社と共同開発した画像表示法で、三次元情報から心室の造影情報を削除し、冠動脈のみの造影情報をMIP(最大値投影法)で表示したものです。従来のCAGに近似した画像のため循環器医にも非常に理解しやすく、任意の角度で観察でき、病変の検出能に優れています。さらに、curved planar reformation(CPR)やstretched CPR、cross sectional image(短軸像)で狭窄、プラーク、石灰化の有無を検討し、狭窄度の評価などを行います。元のアキシャル像だけで診断するのは病変を見逃す確率が高いので危険です。
 ほとんどの心臓CT検査では、これらの画像をGE社製三次元画像処理ワークステーション「Advantage Workstation」で作成しています。Advantage Workstationは優れた心臓の解析ソフトウエアがあり、同じボリュームデータを使って全画像を一連の流れで解析できるため、短時間処理が可能です。解析には通常、30分〜1時間ほどかかります。


冠動脈CTの画像表示法 (栗林幸夫先生ご提供)

・被ばく低減の切り札「SnapShot Pulse」   
 心臓CTには課題もあります。その1つが、CAGの約1.5倍という被ばく線量です。慶應義塾大学病院では、64列MDCT「LightSpeed VCT」のAdaptive Technologyである「SnapShot Pulse」を用いて低減化を図っています。「SnapShot Pulse」は、RSNA2005で初めて発表され、RSNA2006ではGE社展示ブースのCTエリアで中心的展示になったアプリケーションです。従来のヘリカルスキャンを行わず、40ミリ幅で心電同期のコンベンショナルスキャンをプロスペクティブゲーティングで行うことで、ムダな被ばくをカットしつつ、高画質も維持できるというものです。同院では、従来より約65%の被ばく低減効果が認められています。これにより、CAGの被ばく線量の下限と同等かそれ以下になりますので、非常に大きなメリットと言えます。

SnapShot Pulseによる撮影例
(栗林幸夫先生ご提供)

60歳代 女性
トレッドミル 陽性

ガントリ回転速度:0.35秒
撮影時間:4.7秒
120 kV, 425 mA

DLP:216.9 mGy・cm
実効線量:3.67 mSv


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RIS/PACS
  慶應義塾大学病院では2006年9月までにPACS化を図り、2008年3月には完全フィルムレス化を実現すべく事業を進めています。大規模病院での稼働実績が認められているGE社の「Centricity PACS」を導入。64列MDCT 2台を含むCT 9台、MR 5台をはじめとする多くのモダリティから膨大な画像データが発生する中、現在まで順調に運用されています。Centricity PACSの端末である読影用画像ワークステーション「RA1000」は、中央読影室に11セット、各モダリティ検査室に3〜5セット、計39セット設置されているため、いつでもどこでも読影できる体制になっています。RA1000上で画像処理のAW Suiteが呼び出せるので、VRなどの三次元画像処理をその場で行うことができ、効率の良い読影が可能になっています。


慶應義塾大学病院 Centricity PACS構成図(2007年2月20日現在)


中央読影室の読影用画像ワークステーション「RA1000」で読影中の栗林幸夫教授
左はレポートシステムのモニタ(RISと自動的に連携し、検査の進捗状況などがリアルタイムに表示可能)、右の2つは読影用モニタ(2〜5M)。VCTの数千枚に及ぶ画像も瞬時に表示され、ストレスのない読影が可能。


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山田 稔氏(慶應義塾大学医学部リサーチパーク心臓血管画像研究室特別研究員)。2004年から現職となり、画像処理・解析を専門に担当。新しい画像解析法や表示法の開発で成果を上げ、注目されている。

リサーチパーク
 慶應義塾大学は2002年、文部科学省学術フロンティア事業の支援により完成した総合医科学研究棟内にリサーチパークを創設。広く国内外の研究者を集め、他大学や企業とも連携し、国際競争力のある独創的・融合的医学・生命科学研究の創造を目指しています。異なる領域の研究者からなる産学共同ユニットにスペースを提供し、期間限定・独立採算を原則とした研究開発が行われます。
 GE社が参加するプロジェクトは「循環器領域におけるMDCT、MRIを用いた新しい画像診断検査体系の確立」=「心臓血管画像研究室」。2002年から、栗林幸夫教授を研究計画責任者として心臓の画像解析法、表示法などの研究活動を開始し、その成果を学会・研究会などで発表しています。教育・啓発活動も重視しており、ホームページ(http://www.keio-cardiovascular-image.com/home.html)で教育的内容を公開したり、心臓CTのトレーニングコースを開催したりしています。また、全国の施設から、心臓CTの研修を受ける研究者を受け入れています。今後も、先端的な研究や教育・啓発活動に力を入れていくとのことで、その成果が期待されます。


〒160-8582 東京都新宿区信濃町35
TEL 03-5363-3879
URL http://www.rpk.med.keio.ac.jp/


5-Beat Cardiacが可能な64列MDCT「LightSpeed VCT」
スライス幅=0.625ミリ、カバレージ=40ミリ、ガントリ回転速度=0.35秒/回転で、心臓全体を5心拍・約5秒で撮影可能。新しい心臓CTの撮影法(Adaptive Technology)であるSnapShot Pulseは、画質を犠牲にせずに被ばく線量を最大約90%低減できる画期的なスキャン法。また、不整脈対策のECG Editorも高画質化を実現する。

「SIGNA EXCITE 3.0T」
三次元画像処理ワークステーション「Advantage Workstation」
日本および全世界でシェアNo.1を誇る独立型ワークステーション。
標準ソフトとして、ビューワ機能、フィルミング機能、画像保管・転送機能、ベーシック2D/3D解析機能(Volume Viewer Plus)を搭載。さらに、さまざまなモダリティ用のアプリケーションが充実している。

 
読影用画像ワークステーション「RA1000」
Centricity PACSの主要システムコンポーネント。高速画像表示、専用表示レイアウトを設定できるディフォルトディスプレイプロトコール(DDP)、AW Suite(オプション:3D画像をすばやく表示可能)など充実した機能を持つ。
●お問い合わせ先
GE横河メディカルシステム
カスタマー・コールセンター 0120-202-021
http://www.gehealthcare.co.jp/