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島津製作所が「第98回レントゲン祭・記念講演会」を初のオンラインで開催

2021-2-12

祭詞・献花を行う上田輝久代表取締役社長

祭詞・献花を行う上田輝久代表取締役社長

(株)島津製作所は,2021年2月10日(水),「第98回レントゲン祭・記念講演会」をオンラインで開催した。レントゲン祭は,X線を発見したレントゲン博士の功績を讃えてその遺徳を偲ぶため,博士の命日に当たる2月10日に,同社が毎年開催している。例年,同社の京都本社(京都市中京区)で開催されているが,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,98回目となる今回は初のオンライン開催となった。式典に続いて行われた記念講演会では,公益社団法人日本診療放射線技師会(JART)会長の上田克彦氏と公益社団法人日本放射線技術学会(JSRT)代表理事の白石順二氏が講演し,両氏の特別対談も行われた。

式典では,最初に同社専務執行役員医用機器事業部長の伊藤邦昌氏が,レントゲン博士と同社のX線撮影装置の歴史を回顧。同社の最近の取り組みとして,新型コロナウイルス感染症流行への対応を挙げ,需要が高まっている回診式X線撮影装置の増産や,PCR検査用の最新機器や試薬の開発・供給により,感染拡大防止に貢献していきたいと述べた。また,人工知能(AI)を活用した検査の質や効率の向上への挑戦として,X線テレビシステム「SONIALVISION G4 LX edition」の骨密度測定アプリケーション“SmartBMD”(オプション)にAI技術が導入されたのに続き,2021年春に発売予定の新型血管撮影装置にもAI技術を導入,被ばく低減と高画質の両立にさらに取り組んでいくと述べ,今後もAI技術の積極的な活用を進めていく姿勢を改めて表明した。

伊藤邦昌 氏(専務執行役員医用機器事業部長)

伊藤邦昌 氏(専務執行役員医用機器事業部長)

 

続いて,同社代表取締役社長の上田輝久氏が,檀上のレントゲン博士の写真に祭詞,献花を行った。

式典に続いて行われた記念講演会では,まず,JART会長の上田克彦氏が,「これからの放射線技術と求められる診療放射線技師のあり方」と題して講演を行った。2020年にJART会長に就任した上田氏は,「対話と協調の時代」をスローガンに掲げており,関係団体が団結する姿勢を示すとともに,診療放射線技師がチーム医療の中で専門性を発揮し,貢献していくことが重要だと述べた。また,医師業務のタスクシフトに伴う診療放射線技師の業務拡大には,造影剤注入のための静脈路確保など,侵襲性の高い手技も含まれる。上田氏は,基礎研修(オンデマンド型)とシミュレータなどによる実技研修からなる有資格者向けの講習会について,現在厚生労働省などと協議中であるとし,JARTと日本臨床衛生検査技師会,日本臨床工学士会の3団体による協議会で情報を共有しつつ,準備を進めているとした。また,2021年4月の開始が予定されている新生涯教育システムについて,看護教育に用いられている「クリニカルラダー」に「マネジメントラダー」を組み合わせ,適切な部門運営ができる人材育成をめざし,既存の認定スキルなども組み込んだシステムの構築を図っていることが紹介された。さらに,新たな専門・認定制度について,JSRTとも協議しつつ考えていきたいとの見解を示した。

上田克彦 氏(JART会長)

上田克彦 氏(JART会長)

 

続いて,JSRT代表理事の白石氏が「これからの放射線技術に必要とされるAIとは?」と題して講演した。白石氏は,放射線技術学を「診断効果が高く,かつ低被ばくな画像の提供をめざす学問」とした上で,日本の放射線技術学研究は国際的に優位な立場にあり,その理由として養成機関や学会など充実や,最新の機器・技術や多くの臨床データが利用可能な環境などを挙げた。しかし,近年著しい進化を遂げているAI研究は,コンピュータ支援診断(CAD)や画質改善,レポーティング補助など,多くは画像撮影後の領域が対象となっており,放射線技術学がカバーする領域のAI研究は未開の部分が多いと指摘した。そして放射線技術学において望まれるAI研究として,撮影条件・照射野の自動設定による医療被ばくの最適化や自動ポジショニングなどによる一般撮影技術精度の向上,転倒予防(予知)などによる安全性向上などを挙げた。島津社で開発中のAIフィルタリング処理によるデバイス視認性向上技術や撮影装置の自動コントロール技術などを紹介しつつ,現場の診療放射線技師の声が反映されたAIの開発・実用化に向けた期待を示した。

白石順二 氏(JSRT代表理事)

白石順二 氏(JSRT代表理事)

 

続いて,上田・白石両氏による特別対談が行われた。両氏は,2020年10月15日(木)にトップ会談を行い,両団体のこれまでの協力体制を踏まえ,今後の活動について8つのテーマに基づいて意見交換を行っている。トップ会談の模様は「JART-JSRTトップ会談~両団体のこれまでとこれから~」と題してライブ配信やYouTube配信が行われ,多くの関係者が視聴した。この会談について上田氏は,「我々は医療放射線に関わる団体が一体感を持つことをめざしている。『それぞれが得意とする役割を生かしていく』ということに関心を持ってもらえたのは大きな成果だ」と述べた。また白石氏は,JSRTでは今後の協力体制構築に向けた特別委員会を2021年度に発足することを決定しており,会談で協議された内容の一部が具現化に向かうことへの期待を示した。さらに,新型コロナウイルス感染拡大による影響について,白石氏は,学術大会のオンライン開催により,従来は参加困難であった人も参加できたと評価,今後はハイブリッド開催を主体に進める準備を行っているとした。また上田氏は,幅広い職種でリモートワークが導入されつつある現状に対し,3D画像の作成や線量管理分析など,診療放射線技師もオンラインで行える業務があるのではないかと述べ,今後はマルチタスクが可能な人材が主体となっていくのではとの認識を示した。

上田・白石両氏の特別対談(下は進行役を務めた同社執行役員医用機器事業部副事業部長の青山功基氏)

上田・白石両氏の特別対談(下は進行役を務めた同社執行役員医用機器事業部副事業部長の青山功基氏)

 

●問い合わせ先
(株)島津製作所
https://www.med.shimadzu.co.jp/

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