2019-2-14
メイン会場の様子
キヤノンメディカルシステムズ(株)は2019年2月9日(土),「Advanced Imaging Seminar 2019」を開催した。メイン会場であるJPタワー ホール&カンファレンス(東京都千代田区)で講演が行われ,その様子は札幌,仙台,大阪のサテライト会場にも中継された。セミナーのテーマは,“New Technology changes Diagnosis”。同社では,CT,MRIともに超高精細画像を実現する新技術の開発が進められており,それらの技術の診断・治療への応用や画像解析などについて9名の演者から報告された。また,講演会場のロビーには,高精細画像の表示および高精度な解析を高速に実現するネットワーク型画像解析システム「Vitrea」をはじめ,医用画像情報システムや医療情報統合ビューワなどのITソリューション「Abierto」などが展示された。
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冒頭,挨拶に立った同社代表取締役社長の瀧口登志夫氏は,近年の製品開発の方向性として,CT,MRIはもとより血管撮影装置や超音波診断装置においても,より高精細画像を提供するための技術開発に注力していると述べた。また,ユーザーからは,それらの技術が確実な診断に至る重要な情報を提供すると高く評価されていることを強調した。
続いて,同社に新設されたCTMR事業統括部CTMR統括ソリューション推進部部長の谷口 彰氏が,「CANON・CTMR紹介」と題して技術紹介を行った。はじめに,画像診断装置や体外診断(IVD)検査機器などと,それらをつなぐITソリューションを含めた同社の統合ソリューションについて紹介。その上で,CTとMRIについてはCTのUHR Detector SystemとMRIのZ Gradient Option(ZGO)というhigh resolution technologyを挙げ,これらの技術によって装置性能の向上が図られていると述べた。また,AI技術の一つであるdeep learningを応用したCT画像再構成技術“AiCE”,およびMRIに対応したDeep Learning Reconstruction(DLR:W.I.P.)により,大幅な画質改善が可能になると報告した。
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セミナーは大きく2つのセッションで構成された。前半の「Session1:MR」では,長縄慎二氏(名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻高次医用科学講座量子医学分野)が座長を務め,4題の講演が行われた。
まず,同社MRI営業部の山下裕市氏が,「Beyond the CANON MRI」と題して,次世代高分解能3T MRI「Vantage Galan ZGO」やDLRの技術的特長を概説した。Vantage Galan ZGOは,最大傾斜磁場強度(Gmax)100mT/mを実現し,AIの技術を応用した最先端アプリケーションが搭載されている。また,DLRにおいては現在,parallel imaging(PI)やcompressed sensing(CS)との併用による短時間での大幅なノイズ低減や,QSM(quantitative susceptibility mapping)やUTE(ultra-short TE)などへの適用に関する研究も進められており,多くの成果が得られていると述べた。
大田英揮氏(東北大学大学院医学系研究科先進MRI共同研究講座)は,「“AI”がもたらすMRI撮像へのBreakthrough」と題し,特にDLRによるノイズ除去(denoising approach with DLR:dDLR)を中心に報告した。dDLRは,従来のスムージング処理よりも短時間で高精度なノイズ除去が可能であり,高速撮像技術をはじめ,さまざまなシーケンスとの併用も可能である。なかでも,腹部血管への応用としてUTE time SLIP MRAとの併用について臨床画像を供覧し,dDLRを用いることで欠点を補いつつ短時間で高SNR化が図れる可能性を示唆した。
堀 正明氏(順天堂大学医学部・大学院医学研究科放射線医学教室放射線診断学講座)は,「Ultra Gradientシステムの脳神経領域におけるインパクト」と題して講演した。Vantage Galan ZGOがGmax 100mT/mを実現するための技術的背景や各種画像にもたらす効果などについて概説したほか,拡散強調画像(DWI)とその定量マップに対するDLRの効果として,定量マップの画質向上やNODDI(neurite orientation dispersion and density imaging)など先進的な画像解析への適用が可能であることなどを報告した。また,装置性能が向上したことで,従来は難しかった高空間分解能DWIやdouble diffusion encoding(DDE)などの検討が可能になったと述べた。
本セッションの最後は,檜垣 徹氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究科先進画像診断開発共同研究講座)が,「Olea SDKを用いた医用画像処理プラグインの構築」と題して講演した。Olea SDK(Olea Software Development Kit:W.I.P.)は,2015年に同社(旧・東芝メディカルシステムズ社)が傘下に収めたオレアメディカル社の研究用ソフトウエアで,自作の画像解析プログラムをより簡便に構築することが可能となる。プログラムの作成には,従来は煩雑な手続きが必要だったが,Olea SDKではさまざまな機能を持つ“box”を組み立てることで簡単にプラグインの構築が可能になるとし,computed DWIプラグインの構築を実演した。
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後半では,はじめに宇都宮大輔氏(横浜市立大学学術院医学群放射線診断学)が座長を務め,「Session2-1:CT 技術・臨床アプリ『装置の性能を最大限に切り拓く』」をテーマに4題の講演が行われた。
町田治彦氏(杏林大学医学部放射線医学教室)は,「Dual-energy CTの臨床的ポテンシャル」と題して講演した。dual energy CTによって得られる画像のうち,特に仮想単色X線画像と物質弁別(密度)画像を挙げ,多様なコントラストの画像をレトロスペクティブに取得可能であることや,詳細な物質弁別に有用であることなどを多数の症例画像を供覧して報告。さらに,同社が現在開発中のSpectral CTに言及し,技術的な特長などを概説した。
野水敏行氏(富山労災病院中央放射線部)は,「Dual energyによる新しいコントラスト表示 Bone Bruise Image(骨挫傷イメージ):BBI」と題して,骨関節領域へのdual energy CTの活用について講演した。BBIは,three-material decompositionによる物質弁別を応用したVirtual Non Calcium Imageであり,髄内血腫の描出が可能である。これにより,CTのみで早期骨折診断が可能となり,骨折の見逃し防止にも有用であることなどが,多数の臨床画像とともに報告された。
瓜倉厚志氏(静岡県立静岡がんセンター画像診断科)は,「造影CT画像の特性を活かし正確な画像診断へ」と題し,非剛体レジストレーションとサブトラクションを組み合わせた技術“SURESubtraction”の有用性を報告した。SURESubtractionでは,dual energyのiodine mapと比較してより高いヨード定量性が得られるほか,Aquilion Precisionと組み合わせることで詳細な解剖を反映したコントラスト情報が得られることから,画像診断精度の向上や治療戦略の決定に大きく寄与すると述べた。
山口隆義氏(華岡青洲記念心臓血管クリニック)は,「循環器領域における新しい画像診断技術」と題して,同クリニックが開発した心筋バイアビリティの評価法“SMILIE(Subtraction Myocardial Image for LIE)”を中心に報告した。SMILIEは,従来の遅延造影CTでは不明瞭だった遅延造影効果が明瞭となるため,CTによる心筋バイアビリティの評価を可能とするほか,非虚血性心筋疾患の検出にも有効となる可能性が同院での検討により示唆されている。講演ではSMILIEの撮影プロトコールや技術的な特徴が紹介され,多数の症例画像が供覧された。
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続いて,高瀬 圭氏(東北大学大学院医学系研究科放射線診断学分野)が座長を務め,「Session 2-2:CT 診断から治療まで『画像を最大限に活かした治療』」をテーマに2題の講演が行われた。
齊藤邦昭氏(杏林大学医学部脳神経外科学教室)は,「超高精細CTを用いた脳神経外科手術支援」と題して講演した。Aquilion Precisionがもたらす超高精細CT画像は,脳表の細動脈や穿通枝まで描出可能であり,脳腫瘍や脳動脈瘤などの手術計画や合併症の回避,術後の血管評価に有用であることが,実際の手術の映像とともに多数の症例を挙げて報告された。
セミナーの最後には,曽我茂義氏(防衛医科大学校放射線医学講座)が,「超高精細CTによる腹部の画像診断から治療までのパスウェイ」と題して講演した。冒頭,Aquilion Precisionの基本性能として,最も高精細なSHR(super high resolution)モードでは0.25mm×1792ch収集が可能であり,面内はもとより体軸方向にも高精細な画像が得られることを紹介。その上で,初期使用経験として体幹部の各領域における実際の画像を多数供覧し,微小病変や末梢血管の描出などで多くの恩恵が得られているほか,血管造影に近い画像が得られるため,IVRにおいて強力なプランニングツールとなっているとまとめた。
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キヤノンメディカルシステムズ(株)
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