2019-2-14
祭詞・献花を行う上田輝久代表取締役社長
(株)島津製作所は,2019年2月8日(金),同社大ホール(京都市中京区)において,「第96回レントゲン祭・記念講演」を開催した。同社は,レントゲン博士の威徳を偲ぶとともに,新たな技術の発展への決意を新たにすることを目的に,レントゲン博士の死去の翌年から毎年,レントゲン祭を行っている。今回は96回目の開催となり,式典の後には,記念講演が行われた。
式典では,はじめに同社常務執行役員医用機器事業部長の伊藤邦昌氏が式辞を述べた。伊藤氏は,X線撮影装置の開発の歴史を振り返った後,2018年の同社の成果について,回診用モバイルX線撮影装置の最新型「MobileDaRt Evolution MX8」や,5月にリリースした血管撮影システム「Trinias unity edition」を中心に紹介した。MobileDaRt Evolution MX8は,国内の装置としては初めて,X線管の支柱に伸縮機構を搭載。装置前方の視界にも優れるほか,走行性を保ったまま車体の幅をさらにスリム化し,ベッドサイドに滑らかにアクセスできることが特長である。また,散乱線の影響を除去する画像処理ソフトも充実し,低線量での高画質な画像撮影を実現したことに加え,カテーテルなどの強調表示により,安全な手術支援が可能になった。伊藤氏はこのようにまとめた上で,これらの特長や低被ばく化を実現したことで,10月には全世界のシリーズ累計実績が4000台を突破したと報告した。また,Trinias unity editionは,高度な画像処理技術はそのままに,術者に必要な情報をメインモニタに集約し,手元のタッチパネルですべての操作が可能になったと説明。これにより,最先端のアプリケーションを素早く簡単に使用できることから,術者はよりいっそう,治療に集中することができると述べた。伊藤氏は,最先端技術の開発から,臨床の最前線に届けるまでの連携が重要であるとし,同社は,X線による可視化の技術により健康長寿を実現するという社会課題に取り組んでいきたいと語り,式辞を締めくくった。
続いて,同社代表取締役社長の上田輝久氏による祭詞・献花が行われ,改めてレントゲン博士の偉業が讃えられた。
式典に続いて行われた記念講演会では,同社医用機器事業部グローバルマーケティング部マネージャーの河合益実氏が,「診断/治療に寄与した可視化技術の進歩と将来展望〜定量化技術とのシナジーに期待するもの〜」と題して講演を行った。河合氏は,まず,X線による人体の可視化技術,特に血液造影技術の変遷をまとめ,時間差分(temporal subtraction)法によるdigital subtraction angiography(DSA)は,1979年の登場以降,体動によるアーチファクトという欠点はあるものの,ゴールドスタンダードとして定着してきたという流れを示した。しかし,CTやMRIの性能が向上し,確定診断が可能になったことに加え,IVRの登場・普及により,DSAに求められる機能が診断から治療目的へと変化し,また,超選択的かつ多方向からの造影や観察が求められるようになったと指摘。その中で同社は,“Realtime Smoothed Mask-DSA(RSM-DSA)”法を着想,“SCORE RSM”機能として実用化に至った経緯を解説した。また,今後の展望として,IVRにより変化する半減期の短いバイオマーカーや,visual analogue scale(VAS)に相当する,客観的尺度に関連づけられるバイオマーカーを探索し,IVRのエンドポイントや治療効果の定量的判定につなげたいと述べ,同社が持つ分析技術との応用と融合により,トータルなヘルスケアサポートをめざすことが同社の使命であると語った。
続いて,医療法人社団祐優会オクノクリニック院長の奥野祐次氏が,「運動器カテーテル治療の最前線」と題して講演を行った。奥野氏は,疼痛の要因の一つである微小異常血管に対する運動器カテーテル治療の第一人者。運動器カテーテル治療は,異常血管にカテーテルを挿入して抗生物質のイミペネム・シラスタチンを投与,血管を塞栓し,壊死させることで疼痛を解消するもの。奥野氏は2007年より治療を開始,治療実績は現在までに2500例以上に上り,その間,正常血管の壊死などのトラブルは1例も生じていない。奥野氏は,五十肩や膝蓋腱炎,テニス肘などの症例を示し,治療の経緯や効果を紹介した。また,治療上の留意点として,やり残しなく治療を行うことを挙げ,そのためには血管を確実に選択することが重要であり,RSM機能などが有用であると述べた。運動器カテーテル治療は,現在国内では約10施設,海外でも韓国やブラジル,アルゼンチンなどを中心に多くの国々で実施されている。奥野氏は,今後,さらに多くの患者が治療を受けられるようにしたいと述べた上で,島津製作所などの新しいテクノロジーを享受しつつ,適切な治療を行っていきたいと語り,講演を締めくくった。
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