2017-8-30
SOMATOM CTの最新動向が報告された
SOMATOM Symposium 2017
シーメンスヘルスケア(株)は2017年8月26日(土),TKPガーデンシティ品川(東京都港区)を会場に,同社CT装置の最先端技術と臨床応用を報告する「SOMATOM Symposium 2017」を開催した。本シンポジウムは,2009年にDual Source CT(DSCT)をテーマとした「Definition Symposium」としてスタートし,2014年からは「SOMATOM Symposium」として,同社のSingle Source CT,DSCTそれぞれの最新技術が幅広い領域で臨床応用され,診療に貢献していることが報告されてきた。また,2013年から設けられている画像コンテスト「CT Image Contest Japanese Edition」には,毎回,全国のユーザーから多くの応募があり,優れた撮影テクニックとそのノウハウの情報共有の場となっている。第9回目となった今回のシンポジウムは,5つのセッションに分けてプログラムが組まれ,250人を超えるユーザーが講演に熱心に耳を傾けた。
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開会に当たり,従来に引き続きモデレータを勤めた内藤博昭氏が挨拶に立ち,画像診断の状況について,現在CTとMRIは画像診断の2本柱であるが,今後10〜20年は同じような状況が続くであろうとの展望を述べた。その上で,MRIについてはまだ新しい診断技術や医学情報が引き出せる余地が大いに残されている一方,高精細三次元データの収集という点ですでに完成の域に達しているCTについて,シーメンス社が毎年このようなシンポジウムを開催し続けられることはすばらしいことであり,そのポイントとして,きわめて高い時間分解能が心臓以外の領域でも有用性を発揮していること,また,早くからマルチエナジーCTの技術開発に取り組み,新しい情報を生み出してきたことを挙げた。
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SessionⅠ「CT Image Contest 2017 Japanese Edition」は,今井 裕氏(東海大学)が座長を務めた。今回は全国から,前回よりも多い62症例の応募があり,審査員の今井氏,内藤氏,尾尻博也氏(東京慈恵会医科大学),平野雅春氏(東京医科大学),市川勝弘氏(金沢大学)が全応募症例を評価した。昨年まで単独の賞として設定されていた“Best Overall”の位置づけが今回から変更され,“General-Single Source” “General-Dual Source” “Cardio-Vascular-Single Source” “Cardio-Vascular-Dual Source” “Dual Energy-Single Source” “Dual Energy-Dual Source” “Exceeding Expected Performance of 1-16 MSCT”の各部門賞がまず選出され,その中から最優秀賞としてBest Overallが選ばれる方式となった。Best Overallは,エントリー数が18症例と最多だったCardio-Vascular-Dual Source部門から,末廣瑛里奈氏(神戸大学医学部附属病院)が選出された。
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SessionⅡ「Special Lecture」は,平野氏が座長を務め,内藤氏が「History of Cardiac CT——心臓CTの日本史」と題して講演した。国立循環器病研究センター・前院長の内藤氏は,同センターが1980年にCT装置を導入した当初から長年にわたり心臓CTの研究に携わっており,その歴史を語れる数少ない人物の一人である。講演では,装置の進歩とともに冠動脈CTAや造影心筋イメージングがどのような進化を遂げたかを実際の症例を供覧しながら述べ,さらなる進化のポイントとして,冠動脈CTAでは動きのブレのない精密形態評価,造影心筋イメージングでは定量的組織構築評価に結びつくような造影効果の定量化を挙げた。さらに,マルチエナジーCTの登場を受け,単純CTでの心筋成分分析的性状評価など,心筋CT値に再注目すべきとの考えを示した。
SessionⅢ「Focus on Acute Care」も,引き続き平野氏が座長を務め,急性期診療をテーマに3演題が設けられた。はじめに,土谷飛鳥氏(水戸医療センター)が,「Dual Energy CT in Emergency Radiology」をテーマに講演した。DECTの物質弁別能の高さや,DEイメージングの有用性,時間分解能の高さなどの技術的な特長を概説した上で,それらの特長の救急領域への応用について,出血,虚血,多発外傷,肺塞栓,骨折,循環器系(大動脈解離)などの実際の症例を供覧しながら述べた。2題目は,山宮 知氏(昭和大学)が,「Volume Perfusion imaging for Acute Pancreatitis」について講演した。急性膵炎の重症度判定の重要性や,重症膵炎の重症化因子の一つである膵壊死の診断にperfusion CTが有用であることなどを述べ,同院における「SOMATOM Definition Flash」を用いたWhole Pancreatic Perfusion CTの方法を示して,実際のCT画像所見を供覧。より早期の膵虚血を数値化,視覚化することで,急性膵炎の重症度の予測が可能になったと述べた。3題目は,西島 功氏(中部徳洲会病院)が,「Sliding Gantry System for Emergency Room and Operation Room」と題し,同院のHybrid ORを紹介した。シーメンス社製CT装置のSliding Gantryと,床置き式のX線血管撮影装置「Artis zeego」を組み合わせ,2 Room仕様のHybrid ORを実現したことで,CTの単独利用が可能なほか,外科,泌尿器外科,整形外科,脳神経外科,呼吸器外科,肝臓外科など複数診療科での活用や,Hybrid ERとしての運用も実現したと紹介した。
SessionⅣ「Focus on Oncology and Therapy」は,尾尻氏が座長を務め,3演題が行われた。まず,的場宗孝氏(金沢医科大学)が,「The Role of 4D imaging in Head and Neck——頭頸部癌に対する4D Volume Perfusion CTの臨床応用」と題して講演した。多種の腫瘍性病変における診断や治療効果予測について,perfusion imagingの有用性が多数報告されており,同院では主に頭頸部癌患者の化学放射線療法前検索などに「SOMATOM Force」を用いた全頸部のvolume perfusion CTを実施している。講演では,同院におけるperfusion CTの実際が症例を供覧しながら紹介され,原発巣の同定と周囲組織浸潤の評価への有用性や,腫瘍内の悪性度および虚血部の推定,化学放射線療法の予後予測のためのバイオマーカーイメージングの可能性などが示唆された。2題目は,篠﨑賢治氏(九州がんセンター)が,「Routine use of TwinBeam Dual Energy」と題して講演した。同院で稼働する「SOMATOM Definition Edge」は,TwinBeam Dual Energyにより1管球でのDual Energy Imagingを可能としており,Virtual Non Contrast(VNC)やmonoenergetic image,ヨードマップなどを得ることができる。講演では,これらの画像が腫瘍の特定や鑑別診断,周囲浸潤診断や,造影剤量の低減などに有用なほか,被ばくが増加することなくさまざまな画像が得られるメリットなどが紹介された。3題目は,中村和正氏(浜松医科大学)が,「Accuracy for Radiation Therapy Planning—治療計画CTの精度を考える—」と題して講演した。近年,放射線治療の高精度化に伴い,治療計画用CTにも高い精度が求められている。中村氏は,CT画像の高い位置精度を実現するために重要なCT装置の要件などを概説した上で,シーメンス社製CT装置のハードウエア面での有用性を述べたほか,線量分布計算の際に管電圧に依存することなくCT値を一定の電子密度に変換できる画像が得られる新しい画像再構成技術“DirectDensity”の有用性が紹介された。
シンポジウム最後のSessionⅤ「Focus on New performance of Dual Source CT」は,内藤氏が座長を務め,2演題が講演された。吉田守克氏(天草地域医療センター)は,「SOMATOM Drive:Drive Precision for all——最新型Dual Source CT『SOMATOM Drive』の臨床活用について」と題して講演した。同センターは近隣に大学病院などはなく,遠方からの受診者も多いため,CT装置には迅速かつ幅広い疾患に対応可能であることが求められる。SOMATOM Driveは,SOMATOM Forceと同等の検査が施行可能であり,日常臨床でもスループットを落とさずにDual Source検査が行えるほか,症例を選ばずに良好な画像が得られるため,医師や診療放射線技師のモチベーションの向上にも貢献していると述べた。本シンポジウム最後の講演は,「SOMATOM Force:Tin(Sn) Filtration imaging」と題し,岡田宗正氏(山口大学医学部附属病院)が,錫(Tin)filterの被ばく低減効果について報告した。錫が持つ金属特性から,Tin filterを用いることで実効線量が増加し,かつ画像ノイズの低減が可能となる。講演では,同院における実効線量測定の結果が示されたほか,胸部,頸部,腹部における実際の画像が供覧され,Tin filterの効果により対象臓器によっては一般撮影と同等の線量でも診断に十分な画像が得られており,人類にとって大きなメリットがあるとまとめた。
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●CT Image Contest 2017 Japanese Editionの受賞者
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クリニカルカテゴリ | 氏名 | 所属 | ケースタイトル |
Best Overall / Cardio-Vascular-Dual Source | 末廣瑛里奈 氏 | 神戸大学医学部附属病院放射線部 | 冠動脈解離とSMA解離を同時に描出できた緊急造影CT |
General-Single Source | 垣見明彦 氏 | 大阪市立大学医学部附属病院中央放射線部 | 腎動脈における超低造影剤量4次元イメージング |
General-Dual Source | 前林知樹 氏 | 神戸大学医学部附属病院放射線部 | 腎移植前小児患者に対する包括的全腹部動静脈撮像 |
Cardio-Vascular-Single Source | 伊藤進吾 氏 | 新東京病院放射線科 | 1管球CTによる包括的心臓検査 |
Dual Energy-Single Source | 南出哲也 氏 | 九州がんセンター診療放射線技術部 | TwinBeam DECTによる腫瘍浸潤評価 |
Dual Energy-Dual Source | 稲田発輝 氏 | 天草地域医療センター放射線部 | 腰椎圧迫骨折評価におけるBone Marrow解析の有用性 |
Exceeding Expected Performance of 1-16 MSCT | 松井誠一 氏 | 慶友整形外科病院画像診断科 | 第一肋骨奇形による胸郭出口症候群におけるCTの有用性 |
●お問い合わせ先
シーメンスヘルスケア株式会社
TEL 0120-041-387
http://www.siemens.co.jp/healthineers