2016-8-29
シーメンス社製CTの最新動向を
テーマにしたシンポジウム
シーメンスヘルスケア(株)は2016年8月27日(土),同社CTの技術開発と臨床応用の最新動向に焦点を当てた「SOMATOM Symposium 2016」を開催した。同社は2009年に「Definition Symposium」をスタートさせ,2014年に「SOMATOM Symposium」へ名称を変更。国内外のユーザーが,同社CTの持つ有用性や可能性を報告してきた。また,2013年には,ユーザーの撮影技術を評価する「CT Image Contest 2013 Japanese Edition」を設け,テクニックとそのノウハウを広く周知する機会となっている。今回は,従来同様,内藤博昭氏(日生病院)がモデレータを務め,4つのセッションに分けてプログラムが組まれた。
開会に当たり挨拶に立った内藤氏は,自身が医師になった1975年はシーメンス社の最初のCT「SIRETOM」が発表された年であり,40年間一緒に成長してきたようなものだと述べた。その上で,CTの歴史の技術的なトピックスとして,連続回転型CTの登場によるヘリカルスキャン,検出器の多列化によるマルチスライス,2管球により時間分解能の向上とマルチエナジー撮影を実現したdual source(DSCT)を挙げた。そして,CTのオリンピックがあるならば,シーメンス社の装置は,時間分解能とマルチエナジーで“金メダル”を獲得できるとし,SOMATOM Symposiumは金メダリストが最新の情報を提供する場であるとまとめた。
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この後,今井 裕氏(東海大学)が座長を務め,Session I「CT Image Contest 2016 Japanese Edition」が設けられた。今回のコンテストからカテゴリと選考方法が変更され,審査員の今井氏と内藤氏,市川勝弘氏(金沢大学),平野雅春氏(東京医科大学)が全応募症例を評価した。応募のあった58症例の中から,“General(Single Source/Dual Source)”“Cardio-Vascular(Single Source/Dual Source)”“Dual Energy(Single Source/Dual Source)”“4D Spiral-Dual Source(4D Single-Dual Sourceは該当なし)”“Technical(Single Source/Dual Source)”“Exceeding Expected Performance of 1-16MSCT/20-64MSCT”の各部門と最優秀賞である“Best Overall”の発表が行われた。低線量であるだけでなく,臨床目的を満たす画質を担保した適正な線量である“Right Dose”の視点から評価がなされ,Best Overallには南 汐里氏(金沢医科大学病院)が選出された。
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続く,Session IIの「The frontiers of CT technology」では,内藤氏と市川氏が座長を務めた。まず,村上省吾氏(村上記念病院)が登壇し,「TwinBeam Dual Energy:ルーチン検査でDECTを」と題して,single source(SSCT)のデュアルエナジー技術である“TwinBeam Dual Energy”の使用経験を報告した。同院では「SOMATOM Definition Edge」を導入している。同機種に搭載されているTwinBeam Dual Energyは120kVのX線を“Split filter”により2つに分離して,80kVと140kV相当の実効エネルギーにする。同院では,TwinBeam Dual Energyと自動で管電圧を最適化する“CARE kV”を用いて,造影CT検査を日常的に施行している。村上氏は,症例画像を交えその有用性を説明したほか,TwinBeam Dual Energyを適用したbone marrow imagingなど非造影CT検査も解説した。
次に登壇した市川泰崇氏(三重大学)は,「Advanced Visualization System “syngo.via”:当院におけるsyngo.via CT用アプリケーションの臨床活用」をテーマに講演した。市川氏は,心臓CT(心筋パーフュージョンCT/遅延造影CT),経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の術前CT,デュアルエナジーにおけるsyngo.viaの使用経験について,検査プロトコールとアプリケーションを紹介。今後の展望として,腹部パーフュージョンCTやCADなどでのアプリケーションの活用について言及した。
Session IIの最後は,室伏景子氏が「Therapy Planning:子宮頸がんの小線源治療における3次元治療計画」をテーマに,治療計画用CTとしての「SOMATOM Definition AS」の使用経験を報告した。室伏氏は,子宮頸がん小線源治療について,病期別の治療スケジュールなどを解説し,3次元治療計画による治療精度の向上について,2009年7月~2015年9月に行ったIb2期以上の216症例の治療成績を交えて説明した。
この後,Session IIIの「Keynote lecture」が行われた。座長を内藤氏が務め,「The Innovations of SOMATOM CT」をテーマに,伊藤俊英氏(シーメンスヘルスケア)が講演した。伊藤氏は2005年にDSCTが登場して以降の技術進歩について解説を行い,ハイパワーX線管の“Vectron”と最新検出器の“Stellar Infinity Detector”により,被ばく低減を図りつつ,高分解能画像を実現していると述べた。その上で,伊藤氏は,次の10年に向けた技術として,フォトンカウンティングCTについて説明した。現在,同社はフォトンカウンティングCTの開発を進めており,メイヨークリニックにおいて「SOMATOM Definition Flash」の検出器の1つをフォトンカウンティング検出器にした装置で研究を行っている。伊藤氏は研究開発の成果を示しつつ,CNR,被ばく低減,物質弁別画像,分子イメージングの観点からの利点と課題を解説した。
休憩を挟んだ後に行われたSession IVでは,内藤氏と平野氏が座長を務め,DSCTの臨床応用をテーマにした「The frontiers of Dual Source CT」が行われた。最初に登壇した西井達矢氏(神戸大学)は,「Personalized CT in Cardiovascular Imaging;The force drives personalization in the cardiovascular imaging」をテーマに,「SOMATOM Force」の心大血管領域での使用経験について報告した。西井氏は,個々の被検者に対して正しいX線線量・造影剤量・プロトコールなど,個別化した検査の施行が重要だとして,被ばく量や造影剤量の適正化のためのシーメンス社のCT技術を説明。その上で,心臓CTやTAVIの術前CTにおけるストラテジーと検査プロトコールを説明し,個々の被検者に対して適正化された検査で得られた症例画像を示した。そして,被検者ごとに適正な検査を行うためには,放射線科医や循環器科医,診療放射線技師のチームでの取り組みが重要だと述べた。また,技術やアプリケーションを“つみき”のように組み合わせることも必要だと説明した。
次いで,福田健志氏(東京慈恵会医科大学)が登壇し,「Dual Energy CT in Rheumatology」と題して講演した。福田氏はリウマチ診療においては乾癬性関節炎(PsA)の早期診断が重要であるとし,その診断に求められる理想的な画像検査として,炎症性病変が描出できること,アクセスの良い検査であること,末梢関節の評価に優れていること,客観的で施行者依存性の少ないことを挙げた。さらに,福田氏は,SOMATOM Definition Flashでのデュアルエナジー撮影によるヨードマップについて,造影MRIとの比較を交えて解説した。
Session IV最後の講演では,「Dual Energy CT in Neurology」をテーマに,野口 京氏(富山大学)が講演した。野口氏は,SOMATOM Forceによる頭部領域のデュアルエナジー撮影によるvirtual non-contrast mapとヨードマップ,bone removal CT(BRCT),仮想単色X線画像について説明。さらに,BRCTや仮想単色X線画像の症例画像を示したほか,新たな撮影法であるX-mapについて,急性期脳梗塞症例などの画像を供覧し,コントラストメカニズムの解説を行った。
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事前の参加登録者が400人を超え,当日は会場内がほぼ満席となるなど,例年同様の多くの参加があった。会場内には,「syngo.via」や国際医用画像総合展2016(ITEM in JRC 2016)で発表されたクラウドサービス「teamplay」も展示され,参加者の関心を集めていた。
●CT Image Contest 2016 Japanese Editionの受賞者
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クリニカルカテゴリ | 氏名 | 所属 | ケースタイトル |
Best Overall | 南 汐里 氏 | 金沢医科大学病院医療技術部診療放射線技術部門 | 心電図同期Sequenceモードによる小児心臓2beat撮影 |
General-Single Source | 松本一則 氏 | 魚沼基幹病院医療技術部放射線技術科 | 高度腎機能低下患者に対する低管電圧撮影を駆使した緊急造影検査 |
General-Dual Source | 谷 和紀子 氏 | 神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門 | 時相毎に撮像エネルギーを最適化した小児腎ダイナミック撮像 |
Cardio-Vascular-Single Source | 津田 守 氏 | 総合病院国保旭中央病院放射線科 | ルーチン下肢CTA LowkVによる被ばく,造影剤低減症例 |
Cardio-Vascular-Dual Source | 小田志穂美 氏 | 東海大学医学部付属病院放射線技術科 | 透析シャント血管における動静脈撮影 |
4D Single-Dual Source | 該当なし | ||
4D Spiral-Dual Source | 関谷俊範 氏 | 神戸大学医学部附属病院医療技術部放射線部門 | 少量造影剤と4D撮像で達成した肺動脈および心臓大動脈評価 |
Dual Energy-Single Source | 猪股崇亨 氏 | 富士市立中央病院中央放射線科 | 下腿部DVT検出に対するDualEnergy追加撮像の有用性 |
Dual Energy-Dual Source | 中井雄一 氏 | 昭和大学病院放射線室 | 絞扼性イレウスの鑑別診断におけるヨードマップ画像の有用性 |
Technical-Single Source | 石田智一 氏 | 福井大学医学部附属病院放射線部 | 非造影CTにおける下肢表在静脈瘤の描出 |
Technical-Dual Source | 福田剛史 氏 | 鈴鹿回生病院放射線課 | 心電同期4D撮影による脳動脈瘤ブレブ評価 |
Exceeding Expected Performance of 1-16MSCT | 津田 守 氏 | 総合病院国保旭中央病院放射線科 | ルーチン下肢CTA LowkVによる被ばく造影剤低減症例 |
Exceeding Expected Performance of 20-64MSCT | 林 圭吾 氏 | 製鉄記念広畑病院診療技術部放射線科 | 脳色図:VRカラーマップ画像 |
●お問い合わせ先
シーメンスヘルスケア株式会社
TEL 0120-041-387
http://www.siemens.co.jp/healthineers