2017-8-22
メイン会場のJP TOWER Hall & Conference, TOKYO
東芝メディカルシステムズの「Global Standard CT Symposium 2017」が,2017年8月19日(土),JP TOWER Hall & Conference, TOKYO(東京都千代田区)を会場として開催された。同社が世界に先駆けて開発,販売したArea Detector CT(ADCT)であるAquilion ONEシリーズの最新技術の紹介や臨床報告を中心としたイベントで,今年で7回目となる。サテライト会場として,札幌,名古屋,大阪,福岡,沖縄の5か所が設けられ,講演の模様が中継された。
開催に当たって,同社代表取締役社長の瀧口 登志夫氏が挨拶した。瀧口氏は,キヤノングループ入りから8か月が経過し,生産現場の革新や新技術・製品の創出など両社の技術を融合するための50を超えるプロジェクトが進行していることを紹介し,「異なる文化,技術の融合が新たな化学変化を起こし充実したものとすべく鋭意努力している」と述べた。さらに,今回のGlobal Standard CT Symposiumは,Aquilion ONE発売から10年の節目の年に当たることから,「これまでの成果を振り返ると同時に,これからの臨床応用の新たな方向性についてCTの最前線の先生方から報告いただきたい」と述べた。
続いて,杉原直樹氏(東芝メディカルシステムズ技監,CT事業部・CT開発部)が「面検出器CTの技術開発」を報告した。最初のAquilion ONEの開発メンバーである杉原氏は,面検出器CTの開発の経緯を振り返り,“Genesis(創世,始まり)”を開発コードネームとして,従来のマルチスライスCTとはまったく異なるコンセプト(1回転での撮影,動態撮影)で進められた面検出器開発の技術的なチャレンジについて解説した。さらに,最初の開発コードと同じ名前が与えられた第4世代の“Aquilion ONE/GENESIS Edition”について,“PUREViSION Optics”やモデルベースのIRである“FIRST”などによる高画質,低被ばく撮影の取り組みを紹介した。
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Session1は,粟井和夫氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究科放射線診断学研究室)を座長として3題の講演が行われた。
最初に「Aquilion ONEの進化 / ADCT研究会」と題して,井田義宏氏(藤田保健衛生大学病院放射線部)が登壇。片田和広教授の下,プロトタイプの時代から面検出器CT(Area Detector CT:ADCT)開発に関わってきた井田氏は,ADCTの登場で従来のCTとは異なる新たな概念(広いコーン角による画像特性の変化,1回転ボリューム撮影や連続回転の4D撮影など)への対応が必要になったことから,ADCTの普及と啓発,臨床での有効活用を目的として設立された「ADCT研究会」の歩みを振り返って紹介した。また,登場から10年のAquilion ONEの進化をハードウエア,ソフトウエアの面で紹介した上で,小児の肺のダイナミックイメージやガントリーチルトによる嚥下機能評価などADCTが可能にしたさまざまな検査を紹介した。
続いて,檜垣 徹氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究科放射線診断学研究室)が登壇して「Area Detector CTが変えたもの(IR & DE)」を講演した。檜垣氏は,ADCTが変えたものとして画質(Image Quality)にフォーカスをあて,モデルベース逐次近似再構成“FIRST”とDual Energyについて解説した。最初にFIRSTの原理を説明した上で,空間分解能の向上について高コントラスト領域(骨),中コントラスト領域(冠動脈CTA)での効果などについて解説した。さらに,Dual Energy CTの仮想単色X線画像での線質硬化現象の補正効果によるアーチファクトの低減と低コントラスト分解能の向上について概説した。
Session1の最後の演題として,相田典子氏(神奈川県立こども医療センター放射線科)が「最新技術を生かした子どもに優しい画像診断〜被ばく低減・リスク低減をめざして」と題して講演した。相田氏は,小児のCT被ばくリスクの低減について,画像診断ガイドライン(日本医学放射線学会)などを基にした小児画像診断の正当化と最適化を進めることが重要であり,最終的には放射線診断専門医が正当性を判断することが必要だとした。小児については不要なCT検査を省き適用を明確にすることが最大の被ばく低減となると述べ,神奈川県立こども医療センターでは単相CTを基本としていることを紹介し,小児単相造影CTの撮影プロトコールなどを紹介した。その上で,小児の画像診断では必要な検査であれば,診断が可能な画像を得るために鎮静や安全性に十分配慮した上で,適切な検査を遂行することが必要だと強調した。
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休憩を挟んでSession2では,陣崎雅弘氏(慶應義塾大学医学部放射線科学教室)を座長として4名が登壇した。
最初に,山城恒雄氏(琉球大学大学院医学研究科放射線診断治療学講座)が,「Area Detector CTがもたらしたもの(胸部領域):ACTIve Study Groupの8年間の成果から」を講演した。山城氏は,琉球大学など全国10施設が参加する研究グループ「ACTIve Study Group」でのAquilion ONEを用いた胸部CT診断の成果を報告した。ACTIveは,Area-Detector Computed Tomography for the Investigation of Thoracic Diseasesの略称で,ボリュームスキャンのStep and Shootによる全肺撮影,AIDR 3Dによる低線量撮影などに取り組み,多施設共同研究をはじめさまざまな研究成果を発表している。山城氏は,呼吸ダイナミックCTを用いた術前評価など最新の検討結果を含めて発表した。
続いて,山口隆義氏(華岡青洲記念心臓血管クリニック)が,「Area Detector CTが変えた撮影技術」を講演した。山口氏は,ADCTがもたらした冠動脈CT検査の変化について,1回転で心臓全体をカバーできることで,冠動脈の描出能が向上し低被ばくで造影剤量の低減が可能になったと述べた。さらに自らが考案した造影剤注入プロトコールであるTBT(Test Bolus Tracking)法を用いることで,簡単に少ない造影剤量で高い造影効果が得られることを紹介し,ステント内腔評価や石灰化病変の描出のためのサブトラクションにおいても,TBT法の併用でルーチン検査が可能になったことを紹介した。山口氏は,ADCTによってカルシウムスコア,サブトラクションCCTA,CT-FFR,心筋バイアビリティ評価のSMILIE(Subtraction Myocardial CT for Late Iodine Enhancement)を行う心臓のワンストップ検査が可能だと述べた。
3題目として,隈丸加奈子氏(順天堂大学医学部大学院医学研究科放射線医学教室放射線診断学講座)が「Area Detector CTが変えたもの(心臓領域)」を講演。隈丸氏は,心臓領域ではADCTの登場によって1心拍での撮影ができ,冠動脈内腔の評価が低被ばくかつ高画質で可能になり,心筋灌流画像など機能評価まで含めた包括的心臓検査が可能になったと述べた。さらに,血流の定量評価の手法として,TAG(Transluminal Attenuation Gradient)やCT-FFRについて言及し,オンサイトで可能なCT-FFRである東芝メディカルシステムズの流体構造連成解析によるCT-FFR計算(W.I.P.)の順天堂医院でのトライアルの概要について解説した。
最後に,南 哲弥氏(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科内科系医学領域放射線科学)が,「Area Detector CTが変えたもの(腹部領域)」を講演した。南氏は,金沢大学に導入された「Aquilion ONE/Global Standard Edition」と血管撮影装置「INFX8000C」を組み合わせた“Aquilion ONE IVR-CT System”の運用状況について,肝腫瘍の診断と治療,CTガイド下手技(腎癌凍結療法など)を中心に紹介した。ADCTを組み合わせることで,全肝の4Dデータ作成(Dynamic Volume Scan:DVS)やCTガイド下手技でのVolume One Shotなど多断面CT透視によって,低被ばくで自由度の高いアプローチが可能になることを紹介した。
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東芝メディカルシステムズ株式会社
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