2017-11-29
RSNA 2017 粒子線治療システム
Hitachi Healthcare(日立製作所)の粒子線治療システムを紹介するコーナーでは,映像やスライド,模型を用いて,日立独自の技術や世界各地の治療施設へのシステム導入状況などを紹介した。
内閣府最先端研究開発支援プログラム(FIRST)のプロジェクトとして,北海道大学と共同開発した独自技術“動体追跡粒子線がん治療技術”は,腫瘍近くに金マーカを留置し,透視画像で追跡することで精度の高い照射を可能にする技術である。北海道大学では2014年からこの技術を使った治療を開始している。今回,動体追跡粒子線がん治療技術が,全国発明表彰にて最も優れた発明に贈られる「恩賜発明賞」を受賞したことが報告され,その技術を来場者に紹介した。
現在,日本,米国を中心とした世界12サイトへ粒子線治療システムを提供(稼働前を含む)しており,これまでに1万6000人を超える患者に陽子線治療を提供してきた。初めてスポットスキャニング技術を導入したMDアンダーソンがんセンター(米国テキサス州ヒューストン,2006年導入)だけで,患者数は約8000人に上る。なお,MDアンダーソンがんセンターとは,従来の放射線治療と比べた陽子線治療の有用性についての共同研究で合意したことが2017年6月に発表されている。
日立は,さまざまなタイプの治療システムの提供が可能となっている。陽子線治療では,1ガントリやマルチガントリのシステム,1ガントリからスタートしてあとから拡張できるExpandableシステム,重粒子線システム,陽子線と重粒子線の治療が可能なハイブリッドシステムなどを紹介した。なかでも今回は,1治療室に特化した小型システムにフォーカスし,小さい設置スペース(約27m×13m),安価な設置費用,短い設置期間などの特長をアピールした。
初の重粒子線治療システムを提供した大阪重粒子線センター(大阪府)でも試運転が始まっており,2018年の治療開始を予定している。水平・垂直照射が2室,水平・オブリーク(斜め45°)照射が1室の計3室で治療を提供していく予定である。