2024-4-26
シーメンスブース
シーメンスヘルスケアは,今回もバリアンと合同でブースを出展し,ITEM 2024初日の開場直後には新製品のアンベールイベントを合同開催した。第5世代DSCT「SOMATOM Pro.Pulse」,ハイエンド3T MRI「MAGNETOM Cima.X」,統合型医療情報プラットフォーム「Syngo Carbon」,トモシンセシスを標準搭載したデジタルマンモグラフィ「MAMMOMAT B.brilliant」,自走式のモバイルCアーム「CIARTIC Move」がアンベールされたほか,同日には超音波診断装置のコーナーでAIアシスト機能を搭載した新製品として「ACUSON Origin」が発表された。これらの製品を一目見ようと,連日多くの来場者が詰めかけ,各製品の周囲は常に活気にあふれていた。ブースには,同社のPurposeとして“We pioneer breakthroughs in healthcare. For everyone. Everywhere. Sustainably.(ヘルスケアを,その先へ。すべての人々へ。)” が掲げられた。一見,これまでと同じに見えるが,新たに“Sustainably.”が追加された。この言葉には企業として利益を上げるだけでなく,サスティナブルに事業を継続していくという意味合いが含まれている。また,地球環境保護はもとより,医療においては世界における十分な医療アクセスの提供や医療従事者の教育およびトレーニング,人材不足の解消など,さまざまな課題の解決に向けた決意が込められている。この言葉が象徴するように,今回の展示では,機器の高性能化はもとより,人工知能(AI)の活用による検査の効率化や医療デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に貢献する技術などが多数紹介され,医療課題の解決に挑戦する姿勢が強調されていた。
なお,ITEM 2024の開催に先立ち,4月4日(木)には,ゲートシティ大崎ウエストタワー(東京都品川区)において「日本におけるSiemens Healthineers事業戦略説明会」が開催され,4月1日付けでシーメンスヘルスケア(株)の代表取締役社長が森 秀顕氏から櫻井悟郎氏に交代したことが報告された。櫻井氏は当面の間,ダイアグノスティックイメージング事業本部本部長を兼務する。事業戦略説明会で櫻井氏は,森氏が築いてきたビジネスを引き継ぎ,より成長させるとともに,自身がこれまでに培ってきたものを生かしながら,さらに日本の医療に貢献できるよう新しいマネージメントチームとともにビジネスを成長させていきたい,との抱負を述べた。
●CT:ハードウエアとソフトウエアを一新し,高精度な心臓CT検査を効率的に実施可能な第5世代DSCT「SOMATOM Pro.Pulse」を発表
●MRI:強力な傾斜磁場コイルを搭載し,研究ニーズにも応えるハイエンド3T MRI「MAGNETOM Cima.X」が登場
●Digital Solutions and Automation:統合型医療情報プラットフォーム「Syngo Carbon」をはじめ,医療DXに貢献するさまざまなソリューションを紹介
●マンモグラフィ:トモシンセシスを標準搭載し,より迅速な撮影を可能とした新製品「MAMMOMAT B.brilliant」
●モバイルCアーム:セルフドライビング機能とリモコンを採用した外科用モバイルCアーム「CIARTIC Move」を発表
●放射線治療:Comprehensive Cancer Careをテーマに,診断から治療までの幅広いポートフォリオを提案
●US:AIアシスト機能を搭載し,心エコー検査の効率化に貢献する超音波診断装置の新製品「ACUSON Origin」を中心に紹介
●CT:ハードウエアとソフトウエアを一新し,高精度な心臓CT検査を効率的に実施可能な第5世代DSCT「SOMATOM Pro.Pulse」を発表
Dual Source CT(DSCT)の可能性をさらに発展させるべく開発された第5世代DSCTとして,SOMATOM Pro.Pulseが発表された。ハードウエア,ソフトウエア共に一新され,従来のDSCTと比べて比較的コンパクトでありながらも,さまざまな最新技術が搭載されている。
DSCTはもともと,Single Source CTの2倍の時間分解能によって高精度な心血管イメージングを可能とした装置として知られるが,SOMATOM Pro.Pulseでは新たに搭載された技術によって,より良好な心臓CT検査の提供が可能となった。ハードウエアは,Photon Counting CT「NAEOTOM Alpha」と同じプラットフォームを採用しつつ,エネルギー積分型検出器(EID)を搭載。86msというきわめて高い時間分解能によって,心拍の影響を受けづらい安定した画像が得られ,高心拍や不整脈の患者でもβブロッカーを使用することなく心臓CT検査を行うことができる。一方,DSCTでは,特に息止め不良患者などにおいて,マルチスライス撮影による画像のつなぎ目にズレが生じるバンディングアーチファクトが発生することが課題であったが,新開発の画像再構成技術「ZeeFree」によって,連続する心拍の位置情報の変位をベクトル解析することで,バンディングアーチファクトを解消し,心臓全体の連続性を担保した信頼性の高い画像の取得が可能となった。
また,SOMATOMシリーズのDSCTとしては初めて,人工知能(AI)を用いて開発された全自動撮影システム「myExam Companion」が搭載された。被検者の身体的特徴や心拍,息止めの可否,体内金属の有無などを選択するだけで最適な撮影条件を自動設定し,検査を実施するほか,検査後には必要な画像の作成や解析などが自動で行われる。これにより,難易度の高い心臓や脳卒中,dual energyなどの検査においても,オペレータのスキルや経験に依存しない正確かつ再現性の高い検査を効率的に実施可能となる。
そのほか,SOMATOM Pro.Pulseでは,従来は天井から吊り下げられていた3Dカメラをガントリ上部に搭載した。赤外線とRGBの2眼で患者の位置や体形などを確認し,最適な位置から撮影できるよう自動でポジショニングされる。また,ガントリ横には,DSCTで初めて操作用タブレットが搭載された。画面をタップするだけで検査を進めることができ,操作がより容易となる。操作用タブレットは取り外し可能で,画面を縦横どちらの向きでも使用することができる。さらに,ハードウエアにおいては電源容量を従来のDSCTの2/3まで小型化したほか,X線発生器をガントリに内蔵し,冷却システムを水冷方式から空冷方式に変更したことでチラーの設置が不要となり,設置面積が狭小化している。消費電力も従来のDSCT比で20%削減された。
●MRI:強力な傾斜磁場コイルを搭載し,研究ニーズにも応えるハイエンド3T MRI「MAGNETOM Cima.X」が登場
MAGNETOM Cima.Xは,ハイエンド3T MRI「MAGNETOM Prisma」の後継機。2010年から米国のマサチューセッツ総合病院とSiemens Healthineersが共同で進めている超強力傾斜磁場システムの研究の知見を集結し,10年以上の歳月をかけて開発された強力な傾斜磁場コイル「Gemini Gradients」を搭載している。Gemini Gradients では,2つのgradient power amplifier(GPA)を同時に駆動させることで,従来機の2.5倍となる最大傾斜磁場強度200mT/mを実現した。これにより,非常に高いb値においてもTEを短縮し,SNRを大幅に改善した拡散強調画像(DWI)の取得が可能となる。高b値DWIでは脳や体内の微細な構造物も高コントラストに描出できるため,脳神経領域をはじめとする研究ニーズに応える装置となっている。強力な傾斜磁場を用いるほど傾斜磁場コイルの冷却時間が延長するが,新開発の冷却方式である「HydroCore Cooling」によって冷却効率を大幅に改善し,高b値DWIの撮像時間を最大75%短縮することが可能となった。さらに,同社独自のハードウエアテクノロジーである「BioMatrix Technology」が採用された。寝台に組み込まれた「BioMatrix Sensor」によって呼吸の動きを検知するため,専用の呼吸センサなどを用いることなく,被検者が寝台に寝るだけで呼吸情報を取得でき,呼吸同期撮像を支援する。また,軽く柔軟性の高い「BioMatrix Body Coil」は,受信コイルを被検者にセットするだけでBeat Sensorによって心拍を検知するため,心拍同期撮像が容易に可能となる。
一方,ソフトウエアにおける最大の特長として,AIを用いた画像再構成アプリケーション「Deep Resolve」が搭載されたことが挙げられる。今回の展示では,Deep Resolveの機能として,ディープラーニングを用いて撮像を高速化した際のノイズ上昇を抑制する「Deep Resolve Boost」と,超解像技術を用いて撮像時間を延長することなく画像を高分解能化する「Deep Resolve Sharp」の2つが紹介された。これらの機能は併用可能であり,撮像時間を大幅に短縮しながら分解能の大幅な向上が可能となる。今回新たにDeep Resolveが3D高速撮像技術CAIPIRINHAにも適用可能となった。
●Digital Solutions and Automation:統合型医療情報プラットフォーム「Syngo Carbon」をはじめ,医療DXに貢献するさまざまなソリューションを紹介
Digital Solutions and Automationのコーナーでは,次世代の統合型医療情報プラットフォームとして「Syngo Carbon」が発表された。これは,Outcome Driven Imaging System(ODIS)としてデザインされた新しいデータマネージメントシステム。診療のアウトカムに焦点を当て,画像はもとより,さまざまな医療データを収集・統合・管理し,提供することで診断プロセスの最適化に寄与する。Syngo Carbonを活用することで,医師は診断だけでなく,一人ひとりの患者に最適な治療計画やアフターケアの立案などにおいて,意思決定に必要な情報の効率的な取得が可能となる。今回のITEMで紹介されたのはSyngo Carbonの一部機能のみであるが,今後,さまざまな機能の追加が予定されているとのことである。
このほか,医療DXに貢献するAIを活用したソリューションなどが紹介された。同社ではこれまで,デジタル化やAIの開発においては撮影,解析,読影などに関連した技術を中心に進めてきたが,今後は医療DXを推進する上でSmart imaging value chain,つまり病院におけるすべてのフローにおいてデジタル化に対するアプローチを行っていくことが強調された。具体的には,患者の病歴・検査歴などに関するデータを蓄積し,それを加味した画像検査や解析を行い,さらには医師の効率的な読影をサポートする。これらのうち,画像データ取得から読影までの自動化を図るものとして,画像診断ITソリューション「syngo.via」が紹介された。syngo.viaは,3Dワークステーションの自動画像処理とPACSの自動画像ソートやナビゲーション,自動表示レイアウト機能などを搭載している。CTやMRIなどの検査画像をサーバが受信するとすぐに,AIを活用した技術である「ALPHA Technology」によってデータ解析と画像処理がゼロクリックで実施され,PACSに自動送信されるため,医師はただちに読影を開始することができる。
さらに,病院全体の医療DX化に貢献するソリューションとして,医療クラウドプラットフォーム「teamplay digital health platform」と医療用コミュニケーションツール「teamplay Images」,マニュアル操作を介さない画像再構成の自動解析アルゴリズムである「syngo.via RRT(Rapid Results Technology)」が紹介された。これらを活用することで,夜間や休日などにおいても画像作成が標準化され,専門医による遠隔からの治療方針決定が短時間で迅速に可能となり,医師の働き方改革や患者のQOL向上などに貢献する。さらに,検査そのものを支援する技術として,遠隔検査プロトコール支援システム「syngo Virtual Cockpit」が紹介された。CTやMRIの検査において,遠隔地においても操作コンソール画面が共有でき,音声チャットやビデオ通話を可能とするため,高い専門性を有する診療放射線技師による支援をいつでも受けることが可能となり,撮影の最適化や標準化に貢献する。
これらのほか,ブースでは,AI技術を活用したクラウド型の画像診断支援プラットフォーム「AI-Rad Companion」などが紹介された。
●マンモグラフィ:トモシンセシスを標準搭載し,より迅速な撮影を可能とした新製品「MAMMOMAT B.brilliant」
令和6年度診療報酬改定において,「乳房撮影(一連につき)」に乳房トモシンセシス加算が新設されることを受け,デジタル乳房トモシンセシス(3Dマンモグラフィ)が注目されている。こうした状況の中,シーメンスは,フラッグシップとなるマンモグラフィ MAMMOMAT B.brilliantを発表した。MAMMOMAT B.brilliantは,「もう悩まない。精度の高い画像診断を迅速に。」をコンセプトとして開発された。トモシンセシスは,X線管球の振り角が大きいほど取得する画像の深度分解能に優れ,病変の描出に有用であるとされているため,同社ではこれまでも±25°,振り角50°という業界最大(同社調べ)の振り角を採用してきた。一方,振り角が大きいほど撮影時間が延長することが課題であったが,MAMMOMAT B.brilliantでは,同社CT装置に搭載されている独自技術「flying focal spot technology」と新開発の検出器の採用によってこの課題を解決。トモシンセシスの撮影時間を同社従来装置の1/5となる5秒にまで短縮しつつ,高速撮影に伴う画像のボケを抑制し,より高画質な画像の取得が可能となった。また,従来装置に搭載されていた,検査時の痛みを軽減するためのソフト圧迫板や,乳房や手に圧迫板が触れると圧迫スピードを自動で緩めるSoft-Speed機構,乳房に合わせて最適な圧迫圧になったところで圧迫が自動で停止するOp-comp機構などはMAMMOMAT B.brilliantでも継承されており,撮影時間の短縮と相まって検査時の痛みや不快感の軽減に貢献している。
これらのほか,MAMMOMAT B.brilliantでは,従来はオプションであったムードライトが標準搭載されたことが紹介された。
●モバイルCアーム:セルフドライビング機能とリモコンを採用した外科用モバイルCアーム「CIARTIC Move」を発表
新製品のCIARTIC Moveは,世界で初めて(同社調べ)自走式とリモコン操作を実現した外科用モバイルCアームイメージングシステムである。X線透視下手術における時間短縮や効率化,人員削減などへの貢献をめざして開発された。最大の特長は,セルフドライビング機能が搭載されたことである。Cアーム位置の調整や車輪の動きが電子制御されているほか,C アーム位置の再現機能が搭載されており,パーキングポジションやベッドサイドポジションに加え,任意の12か所のポジションを保存可能なため,従来の手動の移動式Cアームと比較し,撮影のポジション設定や操作にかかる時間を約半分に短縮することができる。また,ワイヤレスリモートコントロール端末(リモコン)では,装置の位置やCアーム位置の操作,X線照射,装置の非常停止などの操作が可能である。リモコンでは術中のポジションを3つまで保存でき,一度退避させても保存した位置にワンボタンで戻せるほか,診療放射線技師以外のスタッフが操作することも可能である。これにより,術中の煩雑な操作が不要となり,操作スタッフの削減も期待できる。さらに,CIARTIC Moveではパワーアシスト機能が搭載され,女性でも片手で操作することができる。
●放射線治療:Comprehensive Cancer Careをテーマに,診断から治療までの幅広いポートフォリオを提案
放射線治療においては “Comprehensive Cancer Care”をテーマに掲げ,2021年に経営統合したバリアンの製品も含めて,診断から治療までの幅広いポートフォリオを提案できることを強調した。
放射線治療は年々高精度化しており,がんの位置や正常臓器を正確に把握するため,治療計画用イメージングが重要となっている。また,放射線治療計画に当たっては,がんと正常組織の輪郭を描画するコンツーリングが重要となるが,画像1枚1枚に対してマニュアルで輪郭描画を行う必要があるため,非常に時間がかかる。適応放射線治療を行う場合は,この手間のかかるコンツーリングを再度行う必要があるため,医師らの負荷が大きいことが課題となっている。そこで,これを解決する技術として,放射線治療計画支援システム「syngo.via RT Image Suite」におけるコンツーリングの自動化機能「Organs RT」が紹介された。Organs RT では,AI技術を用いることで,治療計画用のCT画像に対し事前に構成された各臓器のテンプレートに従って10分ほどで自動コンツーリングが行われる。バリアンの放射線治療計画システム「Eclipse」と連携していれば,結果の自動転送も可能である。2023年時点では,自動コンツーリングの対応臓器は85以上とのことであったが,今回のITEMでは166部位に増えたことがアピールされた。
このほか,放射線治療のコーナーでは,コンパクトな0.55Tの超伝導型MRI「MAGNETOM Free.Max RT Edition」が紹介された。通常,放射線治療計画にはCT画像が用いられるが,頭頸部や骨盤の腫瘍においてはMRIの描出能が優れている。シーメンスでは今後,バリアンとともにMRIの活用に向けた取り組みを進めていくとのことである。
●US:AIアシスト機能を搭載し,心エコー検査の効率化に貢献する超音波診断装置の新製品「ACUSON Origin」を中心に紹介
超音波診断装置のコーナーでは,AIアシスト機能を搭載したACUSON Originと,「ACUSON Sequoia」の新バージョンとして「ACUSON Sequoia 3.0」が紹介された。
ACUSON Originは,ハードウエア・ソフトウエア共に一新し,5年,10年先を見据えて開発された心エコー検査のための新しいプラットフォームである。20億枚の心臓の検査画像を学習したAIによって,心臓構造をリアルタイムに認識するアシスト機能を搭載している。「AI Assist」は,心不全,構造的心疾患,冠動脈疾患,不整脈などに関する5600以上の項目の計測を自動化し,検査に最適な位置にカラードプラROIやドプラゲートを自動で配置するため,検査の効率化が図れる。また,「2D HeartAI」では,4つの心腔の輪郭作成や2Dストレイン解析を自動で行うほか,「4D HeartAI」では,4D経胸壁心エコーにおいては4つの心腔,4D経食道心エコーにおいては両心室の4D輪郭作成を自動で行い,最大5心拍の解析が可能である。解析や計測の精度が高く,正確な結果が得られるため,ワークフローの効率化にも貢献する。
一方,ACUSON Sequoia 3.0では,新たに経食道プローブがリリースされたことが紹介された。従来は腹部領域の検査に用いられることが多かったが,新プローブの追加によって,より幅広い診療科に対応する。また,今後,ACUSON Originと同様にAI機能が搭載される予定とのことである。
●お問い合わせ先
社名:シーメンスヘルスケア株式会社
住所:東京都品川区大崎1-11-1ゲートシティ大崎ウエストタワー
TEL: 03-3493-7500
URL:https://www.siemens-healthineers.com/jp