2024-4-25
コニカミノルタジャパンブース
コニカミノルタジャパンでは,ブースのコンセプトに「臨床に,技術でよりそう。We DESIGN Your Time」を掲げた。このコンセプトに謳われているとおり,コニカミノルタと言えば,独創的な技術で臨床現場に存在感を示してきた。近年では一般撮影をベースにしたX線動態撮影(Dynamic Digital Radiography:DDR)技術が,呼吸器領域の画像診断に変革をもたらす可能性があるとして,話題を呼んでいる。今回のブースでも,メインステージのプレゼンテーションでは,X線動態撮影に加えて,業務効率化に寄与する人工知能(AI)とITソリューションをアピールした。
X線動態撮影は,ブースの前面に紹介するエリアを設けて,特に移動型X線撮影装置(回診車)によるICUでの活用を提案した。2022年のITEMで初披露した移動型X線撮影装置「AeroDR TX m01」は,診療現場から高い評価を得ている。X線動態撮影ができるだけでなく,一般撮影装置としても取り回しの良いサイズや検査をサポートする機能により,ICUだけでなく病棟などのベッドサイドでの撮影で活用されてている。さらに,組み合わせてX線動態撮影を行うカセッテ型X線撮影装置「AeroDR fine motion」は,散乱線補正処理技術である「インテリジェントグリッド」によってグリッドの使用が困難なベッドサイドでのX線動態撮影においても高品質な画像を得られる。取得したデータは,X線動画解析ワークステーション「KINOSIS」で解析処理することで呼吸器の機能評価が可能となる。
AI関連では,胸部X線画像診断支援AIソフトウエア「CXR Finding-i」などを紹介した。CXR Finding-i胸部X線画像から結節・腫瘤影,浸潤影を検出する。医師の業務を支援するとともに,高精度な診断を可能にする。
また,ITソリューションとしては,「RAD Link」などをPRした。RAD Linkは,一般撮影において過去画像や撮影条件,写損画像などの情報を一覧表示して,撮影の効率化と精度向上を図れる。また,PACS「FINO.VITA.GX」は,CT画像の比較読影で過去画像との位置合わせを高速に行うことが可能になり,読影業務を効率化する。
●執行役員ヘルスケアカンパニーIoT事業統括部長・青野一大氏インタビュー:X線動態撮影や業務効率化のためのAI・ITソリューションなどユーザーのニーズに応える提案をしていく
−−今回の展示についてご紹介ください。
青野氏:今回のITEMは「臨床に,技術でよりそう。We DESIGN Your Time」をコンセプトに,X線動態撮影,業務効率化につながるAI・ITソリューションを中心に展示し,多くの方から好評をいただきました。
−−独自のX線動態撮影は,診療現場からどのような評価を得ていますか。
青野氏:2023年は,移動型X線撮影装置AeroDR TX m01によるICUでのX線動態撮影に中心に提案を行い,良い成果を得ています。2024年3月に開催された第51回日本集中治療医学会学術集会では,X線動態撮影に関する2つの発表が優秀演題賞を受賞しました。2024年度は,当初から展開してきた呼吸器,循環器,そしてICUに加えて整形など,さらに適応を拡大していきたいと考えています。
−−業務効率化のためのAI・ITソリューションはどのように展開していきますか。
青野氏:医師の働き方が始まったことで診療現場の業務負担軽減が求められています。コニカミノルタでは,一般撮影のワーフクローを改善するRAD Linkを提供していますが,診療放射線技師の撮影業務を効率化し,業務拡大にも寄与するソリューションであり,さらにお客様の関心が高まっていくと期待しています。AIについてもお客様のニーズが高まっており,胸部X線画像の診断を支援するCXR Finding-iの販売も伸びていて,この動きは今後も続いていくと考えています。また,X線動態撮影も,AeroDR TX m01は被検者を移動させずベッドサイドで検査を施行できることから診療放射線技師の負担軽減につながるので,働き方改革に貢献する製品として提案していきます。
−−読者へのメッセージをお願いします。
青野氏:おかげさまでX線動態撮影はユーザーの皆様に支えられて普及が進んでいます。私たちも皆様に活用していただき,新しい価値を生み出せるような提案をしていきます。また,業務効率化についても,医師の働き方改革に沿ってユーザーのニーズに応えるる技術を提供し,臨床に寄り添っていきたいと思います。
●ICUをはじめベッドサイドでのX線動態撮影の可能性を広げる移動型X線撮影装置「AeroDR TX m01」
●グリッドレスでのX線動態撮影が可能なAeroDR fine motion
●肺血流などの機能評価が可能なX線動画解析ワークステーション「KINOSIS」
●「CXR Finding-i」をはじめとしたAI技術が検査・診断の支援による業務の効率化,働き方改革を促進
●一般撮影のワークフローを最適化する「RAD Link」など業務改善を実現するITソリューション
●ICUをはじめベッドサイドでのX線動態撮影の可能性を広げる移動型X線撮影装置「AeroDR TX m01」
ブース前面には今回,移動型X線撮影装置AeroDR TX m01を3台用意した。コニカミノルタ独自のX線動態撮影技術は,2018年11月にX線動画解析ワークステーション「KINOSIS」の発売以降適応を拡大し,ユーザー数を増やしてきた。2022年3月に発売されたAeroDR TX m01は,カセッテ型デジタルX線撮影装置「AeroDR fine motion」と組み合わせて使用することで,ICUなどベッドサイドでのX線動態撮影を可能にする。本体には,カセッテ型FPDを3枚まで収納でき,充電も可能。540mm(W)×1220mm(D)×1290mm(H)というコンパクトなサイズで,X線管操作部は4段階の伸縮式アームを採用した。移動時などはアームを短くして,検査時には最大1220mmまで伸ばせるほか,317°回転することから室内や周囲の状況に応じ装置を配置して検査できる。このような取り回しの良さもICUや病棟,手術室などでのセールスポイントである。撮影支援機能も充実しており,X線管とAeroDR fine motionの角度を容易に一致させることが可能な「アライメントサポート機能」を搭載。さらに,X線管と被検者の距離を自動計測してX線管操作部に配置されたセカンドモニタに表示し,それを参照しながらポジショニングを行える。これにより,ベッド上の被検者のポジショニングも高精度に行うことができる。このほか,19インチのタッチパネルタイプのメインモニタを搭載。撮影後の画像確認でも詳細な観察が可能だ。撮影支援機能や見やすい大型モニタによって再撮影のリスクを低減し,業務の効率化にも貢献する装置に仕上がっている。
X線動態撮影については,これまで呼吸器領域での検査が多かったが,AeroDR TX m01によってベッドサイドでの検査が可能となったことで嚥下機能の評価などへの適応が広がっている。
●グリッドレスでのX線動態撮影が可能なAeroDR fine motion
AeroDR TX m01と組み合わせて使用するカセッテ型デジタルX線撮影装置AeroDR fine motionは,X線動態撮影対応のワイヤレスFPD。画素サイズは100μmで,量子検出効率(DQE)は従来製品よりも高い56% (1mR,1cycle/mm)となっており,高解像度でノイズを抑えた高品質な画像を得ることができる。外装は裏面にくぼみを設けて持ち運びやすくしており,素材には抗菌剤を混練したカーボンSMC(炭素繊維強化シート成形複合材料)を採用。高い抗菌性能を実現しており,感染リスクを抑え安全・安心な検査に寄与する。また,診療現場でのハードな使用にも対応できるようIPX6の防水性能と米国国防総省のMIL規格をクリアする耐衝撃性能を有し,耐荷重も面荷重が400kg,点荷重が180kg,2辺指示荷重が130kgと,堅牢な設計も評価されているポイントだ。さらに,「インテリジェントグリッド」と呼ばれる散乱補正技術を搭載しており,AeroDR TX m01と組み合わせたベッドサイドでのX線動態撮影もグリッドレスで行える。
カセッテ型デジタルX線撮影装置では,このほかにも静止画撮影専用タイプのフラッグシップモデル「AeroDR swift」を紹介した。14×17インチの「AeroDR swift 1417H」は,わずか1.9kgの軽量設計で,AeroDR fine motion同様,裏面にはくぼみを持たせて持ちやすくしている。また,コニカミノルタのワイヤレスFPDで最高のDQEとなる59%(1mR,1cycle/mm)を実現している。
●肺血流などの機能評価が可能なX線動画解析ワークステーション「KINOSIS」
X線動態撮影の最大のメリットは,一般撮影の技術を応用し,パルスX線を15fpsで連続照射して得られた画像を動画像のように表示することにより,機能評価が可能となることである。X線動画解析ワークステーションKINOSISでは,各種のアプリケーションが用意されており,動画像だけではなく,呼吸の情報などの機能を解析できる。
今回の展示では,KINOSISに搭載された「PH2-MODE」による肺塞栓症の診断などを紹介した。PH2-MODEは心拡張期のフレームを基準に,各フレームと差分して心拍波形と同期する信号を抽出する。サマライズ機能により複数のフレーム画像からMIP画像を作成することも可能だ。これにより,肺血流の定量評価ができると期待されている。造影CT,肺血流シンチグラフィと同様の結果を得られることから,より低被ばく・低侵襲で簡便な検査が可能となり,被検者の負担軽減につながる。
●「CXR Finding-i」をはじめAI技術で検査・診断の支援による業務の効率化,働き方改革を促進
コニカミノルタでは,検査・診断を支援するAI技術を用いた製品を展開しており,今回のブースでも強力にアピールしていた。
医師の診断を支援するのが,胸部X線画像診断支援AIソフトウエアのCXR Finding-iだ。これは胸部単純X線画像から結節・腫瘤影と浸潤影を所見候補として検出し,マーキングして提示する。ディープラーニングにより,専門医が所見の有無を判定したそれぞれの画像を学習データしており,それを基に検査画像を解析して所見の候補をマークする。感度は結節・腫瘤影が83%,浸潤影が80%となっている。
さらに,画像処理ゲートウェイの「Senciafinder」にCXR Finding-iをインストールすることで,胸部骨減弱処理技術の「Bone Suppression処理」と胸部経時差分処理技術の「Temporal Subtraction処理」と組み合わせて使用できる。Bone Suppression処理では肋骨と鎖骨を減弱して視認性を向上させる。Temporal Subtraction処理は過去画像との差分画像を生成して経時的な変化を確認できる。CXR Finding-iと併用することで,病変の見落としを防ぐとともに確信度の向上を図れ,読影業務の効率化にもつながる。
一方,検査業務を支援するAI技術としては,画像診断ワークステーション「CS-7」に搭載される「Positioning-i」がある。Positioning-iは,整形領域の一般撮影において,関節の左右間違いやポジショニングのズレを検知して,再撮影の要否の判断を支援する。施設内で診療放射線技師ごとに異なる再撮影の判断を統一させることにもつながる。これにより,不必要な再撮影を削減し,検査業務の効率化を図れる。
●一般撮影のワークフローを最適化する「RAD Link」など業務改善を実現するITソリューション
ヘルスケアIT関連でも業務効率化を実現するソリューションを紹介した。一般撮影のワークフローを構築するソリューションであるRAD Linkは,RIS「FINO.WorkManage」,一般撮影マネジメントシステム「RADInsight」,被ばく線量管理システム「FINO.XManage」を連携させて,検査のオーダ情報や撮影条件,過去画像,写損画像などを一元的にCS-7上で参照できる。これにより,検査前に留意点を確認して,確実な撮影を支援する。写損率の低減,業務効率の向上を図れるほか,診療放射線技師の教育にもつなげられる。さらに,撮影線量のデータから照射録も作成できる。
また,PACS「FINO.VITA.GX」は,読影業務を効率化する機能を強化している。CT検査の過去画像との比較読影において,画像を表示するときに臓器の位置情報を認識。同期アシストボタンを押すことで,両画像を自動で位置合わせして読影できる。さらに,統合画像診断レポートシステムの「FINO.Report」は,放射線部門の画像だけでなく,内視鏡,超音波検査など各種検査レポートのテンプレートを豊富に用意しており,施設の運用に合わせて柔軟に使用できる。
●お問い合わせ先
社名:コニカミノルタジャパン株式会社
住所:〒105-0023 東京都港区芝浦1-1-1 浜松町ビルディング
TEL: 03-6324-1080
URL:https://www.konicaminolta.jp/healthcare/index.html