2024-4-18
キヤノンメディカルシステムズブース
キヤノンメディカルシステムズは,「Meaningful innovation. Made possible.」をテーマに,展示ホールAに1300㎡の広大なブースを展開し,AIソリューションブランド「Altivity」がもたらすさらなる臨床,運用,経営の価値と,最新の技術・ソリューションを来場者に披露した。ハード・ソフトの強化で高分解能・短時間撮像を実現する3T MRI「Vantage Galan 3T / Supreme Edition」やRSNA 2023でローンチされた新たなフラッグシップCT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」を国内初展示したほか,超音波診断装置「Aplio me」や血管撮影装置「Alphenix / Evolve Edition」などの最新モダリティからやヘルスケアITまで,AI技術も活用・実装した技術・製品群を紹介した。
また,ブースでは企業として取り組む社会貢献活動も紹介。一つがグループ全体で取り組むキャンペーン「Minimum Energy 360」で,サステナビリティを推進するため,あらゆる事業活動において「できるだけ小さなエネルギーで大きな価値を生み出す」というもの。昨年の「Canon EXPO 2023」から展開され,メディカルでは今年からキャンペーンを開始した。また,社会課題への取り組みについてパネル展示し,ピンクリボン活動,小児医療への取り組み,プロスポーツチームとの提携によるスポーツ医療・整形外科領域への貢献などが紹介された。
●Altivity:2018年から現在までのAltivityの歩みと広がりを紹介
●MRI:自社開発のマグネットと傾斜磁場コイル×AIソフトウエアで進化した「Vantage Galan 3T / Supreme Edition」
●CT:新たなフラッグシップCT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」に体動補正技術「CLEAR Motion」を搭載し臨床価値を向上
●X線:血管撮影装置にAI技術によるリアルタイム画像処理「αEvolve Imaging」を初搭載
●超音波:高画質とコンパクトを両立する新製品「Aplio me」が登場
●ヘルスケアIT:AI技術を活用し,Clinical ValueとOperational Valueを提供するソリューションを紹介
●核医学:高画質・短時間撮像でアミロイドPETを支援するデジタルPET-CT「Cartesion Prime / Luminous Edition」
●Altivity:2018年から現在までのAltivityの歩みと広がりを紹介
キヤノンメディカルシステムズではAIソリューションブランド「Altivity」を旗印に,Scan,Analyze,Diagnose,Treatment/Monitorの各段階にAI技術を適用することで,医療データの高品質化・オペレーションの最適化をさらに進め,迅速な治療方針の決定を支援し,一人ひとりに最適な質の高い医療を提供することをめざしている。今回もAltivityを企画の一つに据え,ブース入り口に設けたエリアでその歩みや概要を紹介した。
同社はAltivityブランドの下,2018年にCT向けに製品化されたノイズ除去技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」を皮切りに,MRI,ヘルスケアIT,超音波,核医学と,矢継ぎ早にAI技術を実装し,モダリティをソフトウエア面からも進化させてきた。2023年にはディープラーニングを活用したリアルタイム画像処理「αEvolve Imaging」を搭載した血管撮影装置「Alphenix / Evolve Edition」も登場し,さらなる拡充が図られている。
●MRI:自社開発のマグネットと傾斜磁場コイル×AIソフトウエアで進化した「Vantage Galan 3T / Supreme Edition」
MRIは,ITEM直前に発売された新製品の「Vantage Galan 3T / Supreme Edition」を初披露した。一新したハードウエアと最新のAI技術を組み合わせることで,高精細化と撮像時間短縮を両立している点が特長だ。ハードウエアにおいては,3T装置では初めてとなる自社開発のマグネットを搭載し,高い磁場均一性を実現。さらに,自社開発の傾斜磁場コイルと新システム「Real-time Platform」を搭載してシステム全体を最適化した。より安定した高画質の取得やFOVの拡大(55cm)が可能になるほか,撮像中変動のリアルタイム補正や再構成速度の最大42%向上(2D)を実現でき,呼吸同期撮像においてもブレの少ない画像を得られる。また,傾斜磁場コイルの保持システム「CSGC」により寝台振動を最大79%低減し,患者快適性にも優れる。一方,ソフトウエアでは,超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine (PIQE)」やノイズ低減技術AiCEを搭載している。PIQEは拡張性が向上し,2D撮像のほとんどのシーケンスに適用可能となった。
これらハードウエアとソフトウエアを掛け合わせることで,これまで以上の高分解能化や広範囲・短時間撮像を実現する。高速撮像シーケンスFASE 2DとPIQEを組み合わせることで自由呼吸下での高画質・短時間の撮像も可能だ。すでに,本城クリニック(山口県) ,箕面市立病院(大阪府),藤田医科大学で臨床稼働を開始しており,会場では臨床画像も紹介された。
●CT:新たなフラッグシップCT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」に体動補正技術「CLEAR Motion」を搭載し臨床価値を向上
CTでは,新たなフラッグシップCT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」と,バージョンがV1.5に進化した80列マルチスライスCT「Aquilion Serve」を展示した。
国内初展示となったAquilion ONE / INSIGHT Editionは,ハードウエア・ソフトウエアの両面において進化した高精細ADCTとして大きくアピールした。ハードウエアにおいては,0.24秒/回転の高速撮影を実現したほか,X線光学系技術を一新。新開発のX線管球「CoolNovus」は70kV/1400mAの低管電圧/高出力撮影を実現し,低管電圧撮影の適用拡大などに貢献する。また,新たな検出器「PUREINSIGHT Detector」により,従来比約40%の電気ノイズを低減し,低線量撮影時のSDを改善させる。
ソフトウエア面では,AI技術により画質改善とワークフロー改善を実現した。PIQEが心臓に加えて胸部・腹部にも適用を拡大するとともに,1024マトリックスでの再構成にも対応した。また,ディープラーニングを用いて設計した新たな体動補正技術「CLEAR Motion」が実装された。肺野領域の構造物の動きの方向や量の推定にディープラーニングを活用することで高精度にモーションアーチファクトを低減でき,PIQEや最大450mm/秒の高速ヘリカルスキャンと組み合わせることで,さらなる被ばく低減と高画質が可能になる。
さらに,新たなワークフローを実現する「INSTINX」も搭載されている。ガントリ内蔵カメラで取得した映像を基にした「Automatic Camera Positioning」や「Automatic Scan Planning」によるポジショニングやスキャン計画の自動化,「Automatic Hanging Layout」による画像の自動展開により,操作者の負担を軽減しつつワークフローを改善し,一貫性のある検査を実現する。
Aquilion Serveについては,INSTINXの機能の一つである低線量ヘルカルスキャンによる位置決め「3D Landmark Scan」を活用している施設が増えていることを紹介し,精度向上や時間短縮などの新たな価値を提供していることをアピールした。
また,展示場屋外には,80列CT「Aquilion Lightning / Helios i Edition」を搭載した災害・感染症対策医療用コンテナCTも展示。検査・操作・発電のオールインワン提供やゾーニングが可能で,患者との接触を避けつつスムーズに検査を行えることなどを紹介した。
●X線:血管撮影装置にAI技術によるリアルタイム画像処理「αEvolve Imaging」を初搭載
X線では,新製品の血管撮影装置「Alphenix / Evolve Edition」のほか,デジタルX線TVシステム「Astorex i9」,デジタルマンモグラフィ「Pe・ru・ru LaPlus」,デジタルラジオグラフィ「CXDI-Elite」シリーズやCXDI-Eliteと組み合わせ可能な回診車「Mobirex i9」などの実機を展示した。
2023年8月に発売されたAlphenix / Evolve Editionは,同社の血管撮影装置で初めてAI技術(ディープラーニング)を活用したリアルタイム画像処理「αEvolve Imaging」(オプション)を搭載する循環器用システムである。αEvolve Imagingはリアルタイムにニューラルネットワークを適用することで透視像のノイズを低減することができる。ノイズ低減によりコントラストも上昇し,低線量の透視においても,デバイスだけでなく背景に埋もれやすい細い血管の視認性も向上する。
また,新たに心電図同期を活用したX線制御技術「ECG Sync」も利用できる。心電図波形の同じ位相でX線を照射することで心拍動の影響を低減し,動きの少ない透視像を提供する。1心拍に1回の照射となるため,1秒間に7.5回程度のX線照射を行っていた従来と比べて60 bpmであれば線量を1/7.5程度に抑えられ,患者の被ばく低減にも貢献する。
多機能かつコンパクトなAstorex i9は,内視鏡検査との併用や多目的検査を想定した展示を行った。寝台や映像系を動かさずに視野移動ができる「i-fluoro」を搭載し,患者を動かすことなく安全に手技を行える。また,デバイスを強調表示する新たな画像処理条件「Accent」は,透視中に通常の条件から切り替えられるため検査の流れを妨げることなく適切な画像を提供できる。高画質・低線量検査コンセプト「octave i」により,従来比で照射線量を約65%低減しつつデバイスの視認性の高い画像を提供できることも特長だ。
また,長尺撮影「i-stitch」はX線制御機構がバージョンアップした。AECと濃度調整機能により,正面・側面撮影での体厚の違いや頸部と腰部など領域の違いでX線透過性が変わる場合にも,コントラストの優れた視認性の高い画像を得られるようになった。
コンパクトなデジタルマンモグラフィ「Pe・ru・ru LaPlus」は,「Pe・ru・ru Digital」の使いやすさやデザインを踏襲しつつ,±7.5°のトモシンセシス撮影に対応する。2D・トモシンセシスともに85μmで画像を収集し,ノンビニニングで再構成を行うことから,2Dとトモシンセシスの比較読影をしやすい。85μmはピクセル等倍表示で画面にフィットする画素サイズであり,読影時の手間を削減しストレス軽減にも貢献する。また,24時間の通電が不要で,電源を入れて約5分で検査を行える。ユーザーからは,フットスイッチを踏むとすぐに圧迫板が動作するタイムラグのない動きが高く評価されており,検診においてもスループット良く検査を行うことができる。
●超音波:高画質とコンパクトを両立する新製品「Aplio me」が登場
超音波診断装置は,プレミアムハイエンドの「Aplio i800 / Prism Edition」と新製品の「Aplio me」,タブレット型の「Viamo sv7」の3機種を展示した。このうちAplio meは,ハイエンドとコンパクトを両立する装置で,患者と操作者の両方に配慮したCanon Medical Grand Design Conceptに基づいて設計されている。プローブのコネクタ部など装置の足回りに空間があることで,装置前に座る操作者が膝を入れることができ,無理のない姿勢で操作を行える。画質面においては上位機種に採用されているaBeam Forming技術を搭載し,浅部から深部まで均一で鮮明な画像を提供する。アプリケーション(オプション)は,微細で低速な血流をとらえる血流イメージング「iSMI」や,近年注目される肝臓向けのLiver Package Basicを利用可能。組織の硬さを数値やカラーマップで表示する「Shearwave Elastography(SWE)」や減衰レベルを数値でも表示可能な「Attenuation Imaging(ATI)」により定性的に評価でき,定期的なフォローアップにおける変化の把握に役立つ。
Aplio meの発売に合わせて,コネクタ部分を小型化し,柔軟性の高いケーブルを備えた薄型・軽量な4本のプローブもリリースされた。コンベックスプローブ「PVU-475BT」は,従来のコンベクスプローブと比べて厚みが半分ほどになり,体表に接触する部分に丸みを持たせたことで,日本人の狭い肋間にもフィットしやすく痛みの少ない検査を提供できる。
●ヘルスケアIT:AI技術を活用し,Clinical ValueとOperational Valueを提供するソリューションを紹介
2024年度の診療報酬改定を受けAIの需要がさらに高まると想定されることから,展示ではAI技術を活用したヘルスケアITソリューションを中心に,医療現場にClinical ValueとOperational Valueを提供する製品群を紹介した。
目玉の一つがPACSとAI技術を活用した読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」による読影支援で,協業するPSPのビューワ「EV Insite R」とAI解析結果を確認する「Findings Workflow」を統合し,ビューワ上でAI解析結果をシームレスに確認できる読影環境を参考展示した(W.I.P.)。AI解析結果があるとEV Insite R画面上に通知され,ボタン一つで解析結果を閲覧できる。胸部CTの肺結節を対象にしたAI解析アプリケーション「EIRL Chest CT」(エルピクセル)では,過去に検出した結節が今回画像の結節と自動でペアリングされ,結節サイズの変化を一目で把握できことをデモで紹介した。
また,ビューワにはFindings Workflowの結果を自動でテキスト化する機能が搭載されており,自動計測結果も併せてレポートに貼り付けられる。リニューアルにより使いやすさが向上した医用画像情報システム「RapideyeCore」のレポーティングシステムを併せて展示し,読影の流れを妨げずにストレスのない読影環境を構築できることをアピールした。
医療情報統合ビューワ「Abierto Cockpit」は,画像解析ワークステーション「Vitrea」と併せて展示し,オンコロジー領域における意思決定支援,治療効果判定のワークフロー改善を紹介した。Abierto Cockpitは,電子カルテシステムやPACSからカルテ記載や検査結果,バイタルサイン,ドキュメント,薬剤処方などの情報を集約,パネルとして画面にレイアウトでき,タイムラインでは時間軸で各イベントを連動して表示する。必要な情報を一覧でき,カンファレンスや治療計画作成などを効率化する。Vitreaと連携することで,腫瘍のフォローアップを支援する「Region Tracking」やRECISTレポート作成支援機能などを活用してよりスムーズなワークフローを実現する。腫瘍のトラッキングや計測を自動化するRegion Trackingは,最新のバージョンから従来の肝低吸収域だけでなく,肺高吸収域,リンパ節にも対応したことを紹介した。
Clinical Valueとしては多彩なAIアプリケーションを紹介した。Vitreaの新しいアプリケーションとして展示された「Open Rib」は,肋骨を開いて表示することで一目で骨折箇所を確認でき,胸椎番号が自動ラベリングされるためレポート作成を支援する。背景信号を残すことで皮下気腫の有無や骨折周辺の損傷,肋軟骨の損傷や石灰化も確認することができる。
キヤノンメディカルシステムズでは現在,医用画像ワークステーションとしてVitreaと「VirtualPlace」をラインアップしているが,将来的には統合を予定している。統合に向けた第一段階として,プラットフォームを一つにしてVirtualPlaceでVitreaの解析アプリケーションを利用可能にするバージョンアップが図られた。VirtualPlaceで脳血流動態の評価判定を支援する「CTパフュージョン解析」とdual energy撮影画像から仮想単色X線画像やヨードマップ画像などを作成・表示する「スペクトラル解析」を行えるようになり,画像作成・解析におけるワークフロー改善を支援する。
●核医学:高画質・短時間撮像でアミロイドPETを支援するデジタルPET-CT「Cartesion Prime / Luminous Edition」
核医学では,デジタルPET-CT「Cartesion Prime / Luminous Edition」を展示した。体軸方向有効視野27cmの半導体PET検出器による高いTOF時間分解能と感度で高画質なPET画像を取得でき,80列CTを組み合わせることにより効率的な検査を提供する。PETとCTへのAiCE適用や,デバイスレス呼吸同期機能を搭載し,患者・検査者の負担を軽減できることも特長だ。2023年にアルツハイマー病治療薬が日本国内でも承認されたことを受け,今後アミロイドPETの需要増加が見込まれる。Cartesion Prime / Luminous Editionは高感度の検出器を搭載していることから,従来は30分ほどかけて収集していた脳アミロイドPETを10分程度に短縮しても遜色のない画像を得ることができる。軽度認知症患者が対象となるため,より短時間で収集できることで患者が検査を受けやすくなることが期待される。
●お問い合わせ先
社名:キヤノンメディカルシステムズ株式会社
住所:栃木県大田原市下石上1385番地
TEL:0287-26-5100
URL:https://jp.medical.canon