2019-4-30
長瀬産業ブース
今回の出展で3回目のITEMとなる長瀬産業は,同社がメインで展開している逐次近似画像再構成ソフトウエア“SafeCT”(Medic Vision Imaging Solutions)と,販売の計画をしているMR画像再構成ソフトウエアの“iQMR”(薬機法未承認)の2本立てで展示を構成。来場者にデモンストレーションを行い,その有用性を体感してもらった。
ITEMではまだフレッシュな存在の長瀬産業だが,化学系の専門商社として長い歴史と実績を有している。1832年(天保3年),初代・長瀬伝兵衛氏が京都府に「鱗形屋」を創業。その後1917(大正6)年に株式会社長瀬商店が設立され,1943(昭和18)年には現在の長瀬産業に社名を変更した。さらに,1945(昭和45)年には,東京証券取引所の一部上場企業となった。
同社は,1920年代から米国イーストマン・コダックの映画用フィルムを取り扱ってきたことから,医療分野においてもX線フィルムの輸入販売を行ってきたものの,その後取り引きを終了し,放射線領域と距離を置く時期があったという。
しかし,2016年に策定された2020年までの中期経営計画「ACE-2020」において,注力領域としてライフ&ヘルスケアを挙げ,事業を強化していくこととなった。そこで,グローバルのネットワークを生かして海外の先進的な医療技術を日本に広めることとし,放射線領域にターゲットを絞り込んで,その第一弾としてSafeCTの販売を開始した。さらに,第二弾となるのが,現在販売の準備進めているiQMRである。
●すべてのCT画像でノイズ低減が可能な逐次近似画像再構成ソフトウエア“SafeCT”
長瀬産業が主力製品として販売に力を入れているのが,イスラエルのMedic Vision Imaging Solutionsが開発した逐次近似画像再構成ソフトウエア“SafeCT”である。イスラエルは,GEやシーメンス,フィリップスなどのモダリティメーカーの研究施設が多くあり,そこで働いていたエキスパートたちが独立し,2006年に設立したのが,Medic Vision Imaging Solutionsである。そして,彼らがモダリティメーカーで学んだ技術やノウハウを土台として,開発したのがSafeCTだ。SafeCTは,CT画像のノイズを低減する逐次近似画像再構成処理を画像ベースで行うソフトウエアである。逐次近似画像再構成技術を搭載していないCTでも,低線量での検査を可能にする。撮影したCT画像から演算処理を行い,ノイズを除去しつつ,従来の逐次近似画像再構成法の画像で問題となっていた違和感のない画質を実現している。設定できる部位または領域は,頭部,胸部・肺,腹部・骨盤,脊椎,整形外科で,sharp,default, soft+,soft++,soft+++の5段階の調整が可能である。
SafeCTの画像再構成処理は,基本的に次のような流れとなる。まず,CTで撮影したデータをSafeCTに送信すると,DICOM tagの情報に基づき部位が特定され,あらかじめ設定しておいたパラメータで処理が行われる。処理後のデータはPACSに保管された後,読影が行われる。また,SafeCTは,過去に撮影したCT画像に対しても適用できる。その場合は,PACSに保管してある画像をSafeCTに送り,ノイズ低減処理を行う。解析時間は400枚のスライス画像ならば90秒以内に完了し,通常の逐次近似画像再構成法よりも短時間での処理が可能だという。
米国では2011年にFDAの承認を受けてその後販売が開始され,すでに250施設を超える稼働実績がある。日本国内では,2018年から販売を開始。導入施設はまだ多くないものの,導入施設はもとより,現在評価を行っている施設からも多くの反響があるという。長瀬産業としては,当初逐次近似画像再構成技術を搭載していないCTを使用している施設をターゲットとしていたが,いざ国内販売を開始してみると,逐次近似画像再構成技術を搭載したCT導入施設からも高評価を得ているそうだ。これは,装置に搭載された逐次近似画像再構成技術で生成したデータを,さらにSafeCTで処理することにより,より読影しやすい,自然なテクスチャを持った画像にできるためである。実際の運用としては,まずCT搭載の逐次近似画像再構成技術を用いて金属アーチファクトの低減処理などを行った上で,SafeCTで画質の改善を図るといったことが行われている。なお,SafeCTは,原理的にコーンビームCT画像にも適用可能であり,同社としても今後検証を行っていくこととしている。
●MRIの撮像時間を大幅に短縮可能な“iQMR”
今回,参考出品された“iQMR”は,SafeCTの原理を応用して,MRIのノイズ低減処理を行う画像再構成ソフトウエアである。運用しては,SafeCT同様,検査データをiQMRに送り,画像処理を行った上で,PACSに保管する。MRIの撮像時間を短縮することで発生するノイズを低減し,短縮しない場合と同等の画質を維持する。これにより,撮像時間の短縮が可能となる。先行して販売されている米国では,1検査あたり30〜40%程度の撮像時間の削減が図れているという。スループット向上により検査枠を増やすことが可能になるほか,撮像時間が短縮することで,再撮像のリスクを低減し,被検者の負担も軽減する。また,短時間での撮像はモーションアーチファクトの抑制にもつながり,画質向上も図れる。同社では,現在,日本での販売に向けた準備を進めている。今回のITEMでも多くの来場者から,iQMRの早期販売を望む声が多く聞かれたそうだ。
●お問い合わせ先
社名:長瀬産業株式会社
住所:東京都中央区日本橋小舟町5-1
TEL:03-3665-3640
URL:https://www.nagase.co.jp/safect/