2014-8-1
図1 撮影室と調和のとれた
リーフ柄のデコレーションラベルを選択し,
明るく,リラックスできる撮影室
はじめに
当院は,1931(昭和6)年に発足した九州大学の研究所に付置された大学病院で,2011(平成23)年より,福岡県の九州大学病院本院の別府分院として,地域に根ざし,別府市民に親しまれている身近な病院として地域医療を担いつつ,大学病院としての基礎・臨床研究も行っています。2014(平成26)年4月に,老朽化したX線診断装置,マンモグラフィ,透視装置などを更新しました。中でも,当院は,乳腺疾患の患者様の比率が高い施設で,マンモグラフィに関しては,患者様はもとより操作する診療放射線技師にとっても,より優しく快適なマンモグラフィ検査を目的として,富士フイルム社製「AMULET Innovality」を導入しました。
患者様への低侵襲化
本装置には,まず医療機器特有の無機質なデザインを避け,患者様の緊張や不安を低減し,少しでもリラックスしていただけるように,撮影室と調和のとれたリーフ柄のデコレーションラベルを選択しました(図1)。
乳房の圧迫板に関しては,「FS(Fit Sweet)圧迫板」により,乳房全体に優しくフィットさせ,圧力を分散することで,旧装置で撮影経験のある患者様からも,圧迫の痛みが軽減されたと好評を得ています。被ばくに関しては,本装置に搭載されている,X線管球を移動しながら連続的に低線量撮影した画像を再構成し,乳房断層像を生成するトモシンセシス画像の追加をするために,被ばく線量の増加がありますが,プレ撮影の画像情報を解析することで,乳房ごとの線量最適化が可能となりました。
診療放射線技師の操作性とスループット向上
本装置は,CC・MLOのそれぞれの設定角度に,ワンタッチでアームが移動します。また,同一ポジショニングで,トモシンセシスから引き続き,連続で通常の2D撮影を行うことが可能です。照射野も,被写体に合わせた“自動照射野シフト”機能を持っているため,ポジショニング途中で照射野サイズを変更しても,ポジショニングをやり直す必要はありません。以上のように,撮影を行う診療放射線技師の作業効率が良くなっています。
トモシンセシス機能の読影者・乳腺外科医のメリット
当院では,乳房断層像を生成するトモシンセシス画像を,MLOのみ2D通常画像に追加し,読影に関しては,5メガピクセルモニタの専用読影端末を導入して,乳腺外科医,放射線科医のダブルチェックを行っています(図2)。読影法に関しては,2D通常画像を確認後,MLOのトモシンセシス画像をシネ画像表示モードで,全体像を観察し,異常箇所については,静止拡大画像で確認しています。導入後3か月で,デンスブレストによる乳腺との重なりで2D通常画像で同定が困難であった病変が,トモシンセシス画像では,容易に異常所見としてとらえることが可能となった有用症例を経験しています。
最後に
本装置は,患者様はもとより,乳腺疾患に携わる者にさまざまなメリットをもたらす可能性があります。特に,本装置の特長であるトモシンセシス画像の追加により,偽陰性,偽陽性の低減が予測されますが,真のトモシンセシスの有効性を評価するためには,さらなる症例蓄積と十分な期間での観察を行い,エビデンスを確立する必要があると考えられます。
平川 雅和(九州大学病院別府病院放射線科診療科長/准教授)
〒874-0838
大分県別府市大字鶴見字鶴見原4546
TEL 0977-27-1600
http://www.beppu.hosp.kyushu-u.ac.jp
病床数:140床
診療科目:5科