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福島県立南会津病院
地域に唯一の病院に導入されたECHELON Smart Plusが高速撮像と高画質で地域医療に貢献
国内初のSmart Windowで安心できる検査を提供
2021-5-25
福島県立南会津病院では,2020年3月より日立の超電導型1.5T MRI「ECHELON Smart Plus」が稼働した。少子高齢化が進む山間地域で救急医療から地域包括ケアまでを担う同院における,地域で唯一のMRIを活用した診療の実際について,佐竹賢仰院長,整形外科の増子遼介医師,放射線科の渡部和男技師長に取材した。
地域唯一の病院として広範な山間地域に医療を提供
福島県立南会津病院は,雄大な自然に包まれた福島県南部の南会津郡(3町1村)で唯一の病院である。1995年に改称し,現在地に新築移転された。南会津郡は,神奈川県とほぼ同じ面積を有する日本有数の山間豪雪地帯で,人口は約2万5000人,急速に過疎化・少子高齢化が進む地域だ。佐竹院長は同院の役割について,「地理的なハンディキャップや人口減少などの課題がある中で,県立病院として,急性期医療と地域包括ケアの中心的役割を担うことが当院の使命です」と説明する。
診療科は,常勤医のいる内科,外科,整形外科,小児科を含め12科を標榜しており,病床数は98床,1日の外来患者数は約250人,24時間体制で受け入れている救急車は年間約700台に上る。高度な治療が必要であるなど同院で対応できない場合には,45kmほど離れた会津若松市内の病院へ紹介するが,佐竹院長は,「二次救急まではしっかりと対応し,住民が住み慣れた地域で最期まで自分らしく暮らせるようにサポートできる病院でありたいと考えています」と,できるかぎりの医療を提供して地域に貢献したいと話す。
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高い性能と短時間撮像を評価しECHELON Smart Plusを採用
同院で稼働するMRI装置は,地域で唯一のMRIである。新築移転時に他社製1.0T 装置を導入し,2004年に日立社製永久磁石型「APERTO」(0.4T)へと更新した。APERTOは高いコストパフォーマンスを発揮し,診療や脳ドックに活用されてきたが,医師からの要望や,他院に依頼している高磁場装置での検査予約が取りにくい状況などを踏まえ,1.5T装置への更新が決定された。入札の結果,ECHELON Smart Plusが採用され,2020年3月から本稼働を開始した。
ECHELON Smart Plusについて渡部技師長は,「最大RF照射出力が18kWなど,検討した装置の中でも高スペックであったことに加え,高速撮像技術のIP-RAPIDにより短時間での撮像が可能な点や省エネ機能を評価しました」と話す。更新工事は雪深い1月半ばから開始されたが,予定どおり37日間で完了し,渡部技師長は,「工期も他社に比べて大幅に短く,院内検査への影響を最小限に抑えることができ助かりました」と述べる。
当時,ECHELON Smart Plus導入について町の広報紙で紹介したところ,大きな反響があった。渡部技師長は,「地域の人たちの関心の高さに驚くとともに,地域唯一の病院に最先端の装置が入ったことを喜んでもらっていることがわかりました」と振り返る。導入後に再開した脳ドックは,IP-RAPIDにより以前の半分の撮像時間(約10分)で,より詳細な評価が可能になり好評を得ていたが,新型コロナウイルス感染症の影響で2020年11月から健診業務を休止している。外来患者数の減少もあり,現在はMRIの検査件数は月間100件程度で推移している。
救急や整形領域に貢献する高速撮像と画質の向上
MRI検査は,整形領域や頭部領域の検査が多く,診察当日に検査から結果説明まで行っている。基本的にIP-RAPIDを適用することで,撮像時間は以前の半分以下となった。緊急性の高い頭部検査も10分以内に撮像可能になったことで,割り込みで検査をしてもほかの検査への影響が少ないことに加え,夜間帯もオンコールで対応する運用に変更し,コールから30分程度で検査結果を提供できる体制とした。佐竹院長は,「救急部門においては,脳梗塞の早期診断が可能になりました。血栓溶解療法の適応がある患者を見つけ,適切な初期治療の上,治療可能な病院に搬送できるようになり,患者さんの予後の改善にもつながっています」と話す。
整形外科の増子医師は,以前から非常勤として診療していたが,2020年10月に常勤として着任した。MRI更新前後の変化について,「検査に行った患者さんが以前よりも早く診察室に戻ってくるようになりました。撮像時間が短くなり,患者さんの負担が少なくなっていると思います」と話す。午前の診察終了間際の患者の検査が午後に回ることもなくなっている。
また,ECHELON Smart Plusの画像について肩関節が専門の増子医師は,「腱板断裂の画質が向上し,患者さんへの説明もしやすくなりました。なかでも肩甲下筋腱断裂はMRIでの評価は難しいのですが,3断面のMR画像とエコー所見で総合的に診断しやすくなっています。肘内側側副靭帯なども,他院の3T装置の画像と比較しても遜色なく明瞭に描出され,断裂の有無をしっかりと診断できます」と,診療における有用性を評価している。さらに,「高齢者の中には『背中が痛いが背中のどこが痛いかわからない』という方もいますが,そのような場合に全脊椎撮像が非常に有用です。2回に分けた撮像でも検査時間は短く,負担の少ない検査で,ひずみのない良好な画像を得られます」と述べる。
■ 症例1:肘内側側副靭帯損傷
■ 症例2:右肩腱板断裂術後
■ 症例3:膵管胆管拡張(MRCP)
安心できる検査環境を提供する「Smart Window」を国内初導入
放射線科では,渡部技師長を含め5名の診療放射線技師がローテーションで各モダリティの検査を担当している。渡部技師長は,この運用においては自動化機能“AutoExam”が有用だと述べる。
「頭部検査では,自動位置決めのAutoPoseや自動クリッピング処理のAutoClipを全検査で使用しています。効率的に作業を進められることに加え,同一の患者さんの検査を別の技師が担当したときにも,データが均一になります」
ポジショニングは,頭頸部と脊椎用のコイルは据え置いたまま,必要に応じてフレックスコイルや膝用コイルを装着するだけとシンプルで,開口径が60cmと広いことから,手術後に肩を装具固定したままでの検査も可能だ。
同院では,ECHELON Smart Plusへの更新と同時に,MRIボア内映像投影システム「Smart Theatre」と検査室壁面への映像投影システムSmart Windowを導入した。国内初導入のSmart Windowでは,会津田島祇園祭などの伝統文化や豊かな自然を紹介する南会津町のPR動画を投影している。渡部技師長は,「MRI検査は金属チェックなどもあり,患者さんが緊張しやすい検査です。緊張すると検査中に無意識に身体が動いたりもするため,映像やBGMで少しでもリラックスしてもらえればと思います。町の紹介映像だと見慣れた風景に安心感が生まれますし,会話のきっかけにもなり好評です」と話す。また,佐竹院長も,「高齢で認知機能が低下している方も多いため,検査中のストレスを軽減できる仕組みは非常に役立つと思います」と効果に期待を示す。
幅広いMRIの活用で地域医療を支え続けていく
同院では,ECHELON Smart Plusへの更新に合わせてインジェクタも導入し,EOB造影MRIなど検査の幅を広げた。渡部技師長は,「医師からは,頭部や整形領域以外の画質も高く評価されているので,泌尿器科や婦人科でもっと活用してほしいですね。患者さんにとっては,地元で検査ができるという利便性が大きいと思いますので,院内だけでなく,地域の開業医にも広く活用してもらえるように,検査を依頼してもらいやすい仕組みをつくりたいと考えています」と話す。頸動脈プラーク解析や全身・前立腺のDWIなど,ECHELON Smart Plusを多様なシーンで活用することをめざしている。
南会津で唯一のMRIが,地域の人々が住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らすための地域医療に大きく貢献している。
(2020年12月17日取材)
〒967-0006
福島県南会津郡南会津町永田字風下14-1
TEL 0241-62-7111
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/25190a/minamiaidubyouin.html
診療科目:12科
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