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医療法人杉山会すぎやま病院
省スペースでリプレイス可能な1.5TのECHELON Smartが高画質・高スループットの検査を実現
共同利用の推進で地域医療機関との連携も強化
2018-9-25
名古屋市名東区の医療法人杉山会すぎやま病院は,1980年に杉山外科として開院し,時代のニーズに合わせて分野を広げながら地域に密着した医療を展開してきた。2017年9月,MRIの画質向上をめざしてオープンMRIが入っていた検査室に1.5T MRI「ECHELON Smart」をリプレイスし,診療はもとより,地域医療連携の要として共同利用にも活用している。ECHELON Smartへの更新の経緯や,実際の使用状況について,杉山良太院長,梶原滋人事務長,伊藤暢子技師長に取材した。
地域の“かかりつけ医”として患者に寄り添う医療を実践
すぎやま病院は,2001年に杉山外科から名称を変更して現在地に新設移転,2003年に法人化し,創設から38年にわたり地域に医療を提供してきた。かかりつけ医として住民の健康を守りながら,より高度な診療が必要な患者を周辺の基幹病院へ橋渡しする役目を担っている。
名東区には4つの病院があるが,同院は療養病棟(21床)に加え,一般(障害者施設等)病棟(34床)を有している点が特徴である。病院の機能分化や在院日数短縮が推進される中,地域には神経難病などで長期入院を必要とする患者を受け入れられる病院が少なかったことから,通常の一般病棟から障害者施設等病棟へと変更した。杉山院長は,「当院は,在宅に戻ることが難しい患者さんに安心して入院してもらえます。そして,地域住民にとっては,すぐに診療,入院が可能な身近な病院でもあります。高齢化率はますます上がっていくので,大病院ではできない治療やケアを担っていこうと思います」と,同院の役割について述べる。
かかりつけ医として,さまざまな症状で受診する患者に適切な診療を提供するため,現在地への移転を機に,0.3TオープンMRI「AIRIS-Ⅱ」を導入し,整形や脳神経外科,消化器内科領域などで活用してきた。AIRIS-Ⅱは15年以上にわたって安定稼働してきたが,診療現場からは高磁場化によるレベルアップを求める声も上がっていたことから,2017年春に装置更新に向けての検討が開始された。
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省スペース設計が採用の決め手となったECHELON Smart
MRI更新の目的は画質の向上であったため,当初から高磁場装置にすることを前提に機種選定が行われた。他社製MRIも含めて検討を行った結果,発売されてまもない1.5T MRI ECHELON Smartが採用された。
検討では,ECHELON Smartの画像や静音化技術“Smart Comfort”の静音性も評価されたが,最大の決め手となったのが特長の一つである省スペース設計だ。ECHELON Smartは,最小設置面積16m2のコンパクト設計と電源ユニットケーブルの延長によるレイアウトフリーな設計により,永久磁石型オープンMRIが設置できるスペースでも導入可能である。梶原事務長は,「AIRIS-Ⅱが入っていた検査室を拡張することができなかったため,設置スペースの条件をクリアする必要がありました。ECHELON Smartは,MRI室の広さは変えずに操作室のレイアウトを変更することで設置できました」と説明する。
また,同院では,ほかにも日立社製のモダリティやシステムを導入しており,同社製品の安定性や,営業担当者とシステム担当者の連携による迅速なサポートなども高く評価された。
スループット向上と高画質化が診療と患者双方にメリットをもたらす
ECHELON Smartの導入により,同院のMRI検査は大きく変化した。0.3T MRIでは撮像が難しく他院に依頼していた検査も,臨床医が納得する画像を提供できるようになったことで,すべての検査を院内で行えるようになった。杉山院長は,ECHELON Smartの画質の高さを評価し,臨床的有用性を次のように述べる。
「拡散強調画像(DWI)で早期脳梗塞の診断も可能になり,基幹病院に送る判断ができるようになったことで,とても助かっています。MRCPは,AIRIS-Ⅱよりも細かいところまで描出され,格段に見やすくなりました。また,かかりつけで通っている患者さんの高齢化で認知症の方も増えていますので,VSRADも役立っています」
放射線科では,3名の診療放射線技師でMRI,CT(16列マルチスライスCT「ECLOS」),X線撮影装置の検査を行っている。伊藤技師長は画質について,「特に,手首や足関節,頭部血管の画像が非常にクリアになり,整形領域では脂肪抑制画像も明瞭に撮像できます。診断にはもちろん,患者さんに説明する際もわかりやすい画像だと思います」と述べる。
磁場強度の向上で,撮像時間も短縮している。AIRIS-Ⅱでは1検査30分ほどで実施していたが,ECHELON Smartでは撮像内容を以前より充実させながら,検査時間が20分ほどに短縮した。高磁場化でシーケンスごとの撮像時間が短くなることに加え,“Multi Contrast”や3D撮像の効果も大きい。Multi Contrast は,DIXON法による脂肪抑制“FatSep”のスキャン1回で,脂肪抑制画像とT2強調画像を同時に取得できる。また,3D撮像は,3方向撮像のオーダが多い整形領域でメリットが大きく,「2Dを3方向撮像するトータル時間の半分程度で3D撮像が可能です。また,後からスライス厚や角度を決めることができるため,位置決めが特にシビアな整形領域では大変有用です」と,伊藤技師長は説明する。
このほか,体動補正“RADAR”や呼吸同期による頭部や腹部のモーションアーチファクト低減,頭部領域の位置決め支援機能“AutoPose”といった機能の活用をはじめ,シンプルなワークフローのコイルシステムなどにより,高スループットで精度の高い検査が可能になっている。
■症例1:膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
■症例2:シェーングレン症候群
共同利用の促進で地域医療機関との連携を強化
装置更新後は共同利用にも注力し始めたことで,検査件数は徐々に増加している。杉山院長は,「近隣のクリニックや病院の先生方にECHELON Smart導入について話をする機会があり,共同利用は少しずつ増えています。画質がとても良いと評判で,今後は依頼が増えていくと見込んでいます」と述べる。2018年5月の月間検査数約80件のうち,半数近くが共同利用によるものだ。共同利用の周知に努める梶原事務長は,更新検討を行った当時を振り返り,次のように話す。
「医療資源の適正配置が国の方針でもある中,1.5T MRIの導入には迷いもありました。しかし,基幹病院に患者が集中して検査待ちが長くなれば,患者さんのためにならない部分も出てきます。高磁場MRIがある病院は限られているため,ECHELON Smartを導入し,共同利用ですぐに検査できる環境を整えれば,地域にとってプラスになると考えました」
現在は,64列マルチスライスCTを所有する近隣の病院と互いに共同利用を強化するなど,地域との連携が進んでいる。地域には在宅医療に力を入れているクリニックも多いことから,検査を予約しやすい仕組みを構築し,さらにECHELON Smartの利用促進を図っていく予定だ。
ECHELON Smartを要とした連携が地域住民の幸せにつながる
近年は在宅医療へのシフトが推進されているが,同院でも患者の高齢化の進展に伴い,訪問診療や訪問看護の依頼が増えている。その担い手となることがかかりつけ医としての同院の使命と考える杉山院長は,「ECHELON Smartを地域で有効活用し,より円滑に地域の医療機関と連携していくことが,地域住民の幸せにつながると信じています」と述べ,ECHELON Smartを要とした地域医療連携の強化に期待を示した。
(2018年6月26日取材)
〒465-0092
愛知県名古屋市名東区社台3-10
TEL 052-774-8222
https://www.sugiyamahp.com
診療科目:内科,外科,泌尿器科,整形外科,脳神経外科,専門外来(6科)
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