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高いTOF性能と高感度半導体検出器で高画質・高スループットを両立するPET-CTが高精度検診に貢献 ~30年にわた

ハイメディッククリニック中之島

 

ハイメディッククリニック中之島は、 PET検査を取り入れた山中湖方式の検診を提供する会員制総合メディカル倶楽部「グランドハイメディック倶楽部」の検診施設として、2024年8月に開院した。「人生100年時代の健康長寿を支える」というビジョンの下、キヤノンメディカルシステムズのデジタルPET-CT「Cartesion Prime / Luminous Edition」2台や3T MRIなどを導入し、疾患を早期発見するための高精度検診と質の高い予防医療を提供している。身体づくりや介護予防も含めて「ウェルビーイング」のコンセプトを初めて検診に取り入れた同院の取り組みと、Cartesion Prime / Luminous Editionの初期使用経験について、放射線科の稲田悠紀医師と診療放射線技師の森本麻里子技師に取材した。

稲田悠紀 医師

稲田悠紀 医師

森本麻里子 技師

森本麻里子 技師

 

未来医療の拠点に高度医療機器を備えた会員制検診施設を開設

ハイメディッククリニック中之島は、グランドハイメディック倶楽部の検診コース(ハイメディック大阪中之島コース)を提供する検診施設として、2024年6月に誕生した未来医療国際拠点「Nakanoshima Qross」の未来医療MEDセンター内に開院した。グランドハイメディック倶楽部は、まだPET検査が普及していなかった1994年に山中湖クリニック(山梨県)でPET検査を含めた会員制検診コースの提供を開始し、PETを用いた検診システム「山中湖方式」を確立した。高いホスピタリティと手厚いフォローで一人ひとりに寄り添う医療サービスは支持を集め、会員数は右肩上がりで増加し、この20年で10倍近くになっている。関東・中部・関西に検診拠点を設け、西日本エリアを大阪・京都の2拠点でカバーしてきたが、会員の増加に対応するため3拠点目としてハイメディッククリニック中之島が開設された。
同院は、従来注力してきた重篤な疾患の早期発見(二次予防)に加え、ウェルビーイングに向けた検診を提供する第一号の施設であり、認知症やフレイルの予防、ホルモンマネジメント、生活習慣改善のプログラムを用意し、健康維持・健康増進・生活習慣の改善(一次予防)にも取り組む。また、待合スペースを全室個室(23室)にしてプライバシーを確保するなど、より受診者に配慮した設計になっている。
ハイメディック大阪中之島コースでは、同院(5階)と4階にあるハイメディック中之島内視鏡クリニックで各種検診が提供される。PET-CTをはじめ3T MRI、頭部・乳房用PET、3Dマンモグラフィ、超音波診断装置、骨密度測定装置などをそろえ、会員は年に一度、2日間の日程(内視鏡のみ別日)で全身をくまなく検査する。常勤医師(内科、放射線科)10名と非常勤医師で診察・読影に当たっており、稲田医師も読影を中心に検査前の診察や結果説明の面談を担う。
稲田医師は、グランドハイメディック倶楽部が提供する検診について、「PET検診のパイオニアとしてこれまで多くの経験を積み重ね、がんの早期発見に貢献してきました。その知見を基に、高精度のPET検診を提供できることがハイメディックの大きな強みです。今回、国内でも類を見ない未来医療の産業化拠点に入居したことはハイメディックとしても大変意義があり、ここに入居するほかの医療機関や大阪の中核的な医療機関との連携を進め、検診で異常が見つかった場合にも手厚くフォローします」と説明する。

水に浮かぶ中之島の土地をイメージした落ち着いたインテリアで統一された院内

水に浮かぶ中之島の土地をイメージした落ち着いたインテリアで統一された院内

 

高画質と短時間収集を両立する最新の半導体PET-CTを採用

グランドハイメディック倶楽部の最新施設として誕生した同院に、検診サービスの中核となるPET-CT装置として導入されたのがCartesion Prime / Luminous Editionだ。選定では複数メーカーの装置の比較検討が行われたが、ハイメディックが求める装置要件について森本技師は、「検診施設として1日に多くの検査を行うため、半導体検出器を搭載してtime-of-flight(TOF)に対応し、高画質と高スループットを両立できることが大きな条件でした。また、忙しい中、遠方から来院する受診者も多く、装置トラブルで検査を止めることはできないため、安定稼働し、万が一のトラブル時にも迅速に対応してもらえることが重要で、Cartesion Prime / Luminous Editionは国産装置であることも利点と考えました」と話す。
Cartesion Prime / Luminous Editionは、280ピコ秒未満の高いTOF時間分解能と、体軸方向幅27cmの半導体検出器による高感度で、収集時間の短縮を実現した。同院では2台導入し、80列CTとして胸腹部撮影にも活用している。
稲田医師は、「毎年の検診で経過を見るために、検査は同じ機種で行うことが望ましいです。検査枠は徐々に増やしている状況ですが、想定する最大枠では2台必要となるため、同一機種を導入しました。Cartesion Prime / Luminous Editionは最新のハイエンド装置であり、疾患の早期発見のために検診を受ける受診者の期待に応えられる装置だと思います」と述べる。また、森本技師は、「冷却方式が空冷のためチラーが不要で、設置場所やランニングコストの点でもメリットがあり、採用理由の一つになりました」と説明する。

AiCE-iにより低線量の吸収補正用CTも診断補助に活用可能

検診では、Cartesion Prime / Luminous Editionで胸腹部CT撮影後にPETを撮像し、最後に石灰化スコア(心電図同期CT)を撮影するフローで、約25分の検査を行う。PET検査は1ベッドあたり2分収集、6ベッドを基本としているが、体格や検査範囲によって収集時間を調整している。
森本技師は、Cartesion Prime / Luminous Editionでの検査について、「被ばく低減をめざしてFDG製剤の投与量は3 MBq/kgとしています。頭部の撮像では約2分で高カウント収集が可能です」と説明する。
画像再構成は、PETについては再構成法「Clear adaptive Lownoise Method(CaLM)」を用い、胸腹部CTや吸収補正用CTにはディープラーニングを用いて設計
された画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine-integrated(AiCE-i)」を用いている。稲田医師は画質について、次のように述べる。
「PET画像は明瞭でとても読影しやすく、胸腹部CTも低被ばく撮影とは思えないような高画質を得られています。また、骨盤部の診断にはMRI検査を行っていますが、吸収補正用CTを診断補助に活用しています。非常に低線量で撮影しているのですが、AiCE-iにより読影も可能な画像を得られており、尿管や腸管を追って確認したい場合などに大変有用です」

■Cartesion Prime / Luminous Editionによる画像

Cartesion Prime / Luminous Editionによる画像

ボランティア画像 FDG投与量:3MBq/kg 1ベッドあたり撮影時間:120秒
a:coronal(PET) b:coronal(PET/CT 融合画像)
c:axial(PET) d:axial(PET/CT 融合画像)

 

受診者・従事者視点のデザインで安全性と快適性を確保

森本技師は、検査におけるCartesion Prime / Luminous Editionの有用性について、「寝台の最低高が47.5cmと低いため、小柄な高齢者や車椅子の方も安全に乗り降りできます。ガントリの開口径も広いため腕があまり上がらない方でも挙上した状態でCTを撮影でき、寝台幅も47cmあるのでゆとりを持って腕を下ろせます。また、狭い場所が苦手な受診者も多いのですが、この装置では安心して検査を受けられるという声もいただいています」と話す。Cartesion Prime / Luminous Editionは78cmのワイドボアと、ガントリ前面がアサガオのように開いたフレアデザインが特長で、検査中もガントリの外に視線が抜けて閉塞感を感じにくくなっている。快適性も重要な検診においては、注目すべき点だろう。
加えて、Cartesion Prime / Luminous Edition は、核医学部門を対象とした放射線被ばく管理の国際規格(REM-NM)に準拠した形で、放射性薬剤の投与情報を自動投与装置からサーバ経由で取得・登録が可能なDICOM RRDSR(Radiopharma-ceutical Radiation Dose Structured Report)に対応している。森本技師は、「検討時にRRDSRに対応している唯一のPET装置であることも選定理由の一つでした。データ連携により投与量や投与時間を手入力する煩わしさがなく、入力ミスがないことも安心できます」と話す。投与量の入力は一桁違うような入力ミスであればSUVが明らかに不自然なため気づくが、少しのミスでは気づきにくい。会員が年に一度の検査を受ける検診施設として、正確なデータで過去と比較ができることはメリットであると森本技師は指摘する。

施設のシンボル的存在として早期発見への期待に応える

同院では開院に先駆けてCartesion Prime / Luminous Editionの据え付けを春に完了し、ボランティア撮像による調整・検討や、7月のプレオープンから検診を実施しているが、順調に安定稼働を続けている。稲田医師は、「装置はトラブルもなく、問い合わせへの対応は迅速でサポート面も安心できます。本稼働からまだ日が浅いですが、がん疑いなどで精密検査を受けていただいている方もおり、当院や受診者が期待する早期発見につながっていると感じます。高精度なPET検診を望む受診者にも満足していただけると思います」と述べる。
Cartesion Prime / Luminous Edition は施設のシンボル的存在として、30年にわたるPET検診の知見を基に、病変の早期発見のための高精度検診に取り組む同院を支えていくだろう。   

(2024年9月18日取材)

※AiCE-iは画像再構成処理の設計段階でDeep Learningを用いており、本システム自体に自己学習機能は有しておりません。
*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見が含まれる場合があります。

一般的名称:X線CT組合せ型ポジトロンCT装置
販売名:PET-CTスキャナ Cartesion Prime PCD-1000A
認証番号:301ACBZX00003000

 

ハイメディッククリニック中之島

ハイメディッククリニック中之島
大阪府大阪市北区中之島4-3-51
Nakanoshima Qross 未来医療MEDセンター 5F
TEL 06-7732-3070
https://www.himedic.jp/course/nakanoshima.html

 

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