東京ケアウィーク2020(2)AI・IoT編:介護現場の負担軽減や付加価値のあるサービス提供に先端技術を活用
2020-2-26
趣向を凝らしたブースで各社が
製品・ソリューションをアピール(南1ホール)
介護・高齢者施設に必要な設備や備品,サービスを一堂に展示する東京ケアウィーク2020〔会期:2020年2月12日(水)〜14日(金)〕が,2019年に開業した東京ビッグサイト南展示棟の南ホール1〜4を会場に開催された。東京ケアウィークは,CareTEX 2020(介護施設産業展,介護施設ソリューション展,国際介護用品展)をはじめ,次世代介護テクノロジー展,ケアフード東京,介護レク東京など,複数の展示会で構成される大規模な総合展示会。介護施設や病院,在宅介護事業者の管理者,ケアマネジャー,看護師,セラピスト,介護職員などが集まり,最新の製品・ソリューションの情報収集や商談を行う。
展示会では,さまざまな業界・分野で実用化が進む人工知能(AI)やIoTが,介護分野の製品・サービスにも展開されつつある様子がうかがえた。
介護記録やケアプラン作成など,さまざまなシステムにAIを活用
(株)三菱電機ビジネスシステムは,昨2019年にリリースした介護AI入力予測ツール「記録NAVI」に追加された新機能をアピールした。記録NAVIは,さまざまなベンダーの介護記録システム上で動作する入力支援ツール。実際の介護記録のデータをAIで解析し,使用頻度の高い文章や用語を例文として実装しており,食事や入浴など記録するケースに合わせて例文が表示され,文言を選択するだけで記録を作成することができる。従来はPCのみに対応していたが,新しくタブレットを使用したシステムにも対応可能となった。
また,外国人技能実習生が増えていることから,ひらがな表示機能が追加された。現場では,外国人技能実習生の記録を日本人スタッフが転記するという業務負担が発生しており,課題となっているが,この機能により外国人技能実習生自身がケース記録をしやすくなることが期待される。
日本KAIGOソフト(株)/Chatwork(株)は,AIケアプラン・介護記録ソフト「Care Viewer」を出展した。介護記録をスマートフォンアプリで簡単に入力でき,データはクラウド上に保管される。介護保険更新などの自動通知機能や,タスク登録機能が搭載されており,多忙な介護現場における作業漏れを防ぐ。外国人技能実習生の利用を想定し,中国語やタイ語,ベトナム語,ミャンマー語など多言語にも対応。また,ビジネスチャット「Chatwork」と連携し,複数の事業所,多職種のコミュニケーションを支援する。
Care Viewerでは,2020年秋をめどに,AIによるケアプラン作成機能の提供を予定している。AI部分の開発は,北海道大学ベンチャーの(株)テクノフェイスが担う。ケアプランの作成はケアマネジャーの経験による部分が多いが,開発中の新機能では,カテゴリー分析やディープラーニングなどのAIを用いることで,アセスメントを基にケアプランの草案が自動生成され,ケアマネジャーのケアプラン作成を支援する。なお,Care Viewerは,連携により新たな事業活動にチャレンジする中小企業を支援する経済産業省(中小企業庁)の「新連携支援」を受けて開発された製品。先着100事業所にはモニターとして無料トライアルでの提供を行っている。
センシング技術を活用したIoTが見守りやリハビリに活躍
(株)リンクジャパンは,各種センサーを利用した見守り支援で訪室や巡回の負担を軽減する介護施設向けIoT見守り支援システム「eMamo(イーマモ)」を展示した。eMamoは,工事が不要で即日利用可能,低価格,他社製品を追加しやすいといった点が特長。施設のニーズに合わせて設置した各種センサーからの情報を集約し,PCやスマートフォンで情報共有できる。自社製のセンサーとしては,ドアセンサーや環境センサー(温度・湿度・照度・人感),体温センサーなどをラインアップし,他社製のセンサーとも柔軟に連携する。今後,排便や血圧のセンサー,体重計などとの連携を予定している。集約した情報はスタッフルームなどで遠隔に確認できるほか,室温や体温などが設定値を超えた場合にスマートフォンなどに通知するナースコール機能が搭載されている。また,電流センサーを搭載したスマートリモコンは,エアコンのプラグとコンセントの間に設置することで,エアコンを遠隔操作できる。室温センサーや体温センサーと併せて利用することで,全居室の室温管理を訪室することなく行える。
なお,eMamoには,介護施設向けの「eMamo Pro」のほか,在宅介護向けの「eMamo Home」,個人向けの「eMamo Lite」があり,利用シーンに合わせた提供が可能となっている。
住友電気工業(株)は,歩行モニタリングシステム「Q’z TAG walk」を紹介した。タグ(センサー)をつけたベルトを腰に巻いて歩くだけで,簡単に体力測定を行えるシステム。介護領域向けの「Q’z TAG walk plus」では,厚生労働省が推奨するTUG(Timed Up & Go Test),5メートル歩行,片足立ちなどの体力測定が可能。TUGでは総合タイムを起立,歩行/転回,着座の動作に分解して表示,5メートル歩行では歩速,歩数,歩幅などを自動で算出するなど,詳細なデータを得られるほか,独自の分析により歩き方の癖を見える化することで,リハビリメニューの検討材料などに活用できる。また,血圧計・体組成計(別売り)からのデータ取り込みも可能で,同一の帳票で管理することができる。
センサーは,Windows PCまたはタブレットとBluetoothで接続するため,インターネット環境は不要。測定結果は一覧で確認でき,時系列での管理も可能なため,継続的なモニタリングを容易に行うことができる。デイサービスや有料老人ホーム,デイケアやリハビリ科など,幅広い介護現場で導入されている。