東京ケアウィーク2020(1) 介護・在宅医療システム編:多言語対応システムなど,あの手この手で働きやすい環境づくりを提案
2020-2-21
外国人スタッフ向けに多言語対応システムが
数多く登場(日本メディカルの「CareWorkers」)
2019年4月から働き方改革関連法が順次施行され,2020年4月1日からは中小企業でも時間外労働の上限規制などが導入される。これを受けて,中小規模事業者の多い介護業界でも,働き方改革が本格化している。介護業界は人材不足も深刻化しており,厚生労働省では,2025年に245万人の介護職員数が必要で,毎年6万人の人材を確保しなければならないとしているが,生産年齢人口が減少する中で思うように進んでいない。こうした状況を解決するために,ICTやロボット導入による業務の効率化,そしてインドネシア,フィリピン,ベトナムなどからの外国人の雇用が図られている。2020年2月12日(水)~14日(金)の3日間,東京ビッグサイト(東京都江東区)において開催された東京ケアウィーク2020〔主催:ブティックス(株)〕でも,ICTを活用した働き方改革や外国人スタッフの働きやすい環境づくりをアピールする出展企業が目立った。
外国人スタッフも働きやすい環境を実現する多言語対応システム
介護システム関連では,介護記録の入力などに多言語対応する製品が数多く登場している。「ほのぼの」シリーズを手がける介護システム大手のNDソフトウェアは,音声入力支援システム「Voice fun」のデモンストレーションを行い,来場者の関心を集めていた。介護分野の専門用語も容易に音声で入力でき,日本人の職員だけでなくキーボードでの日本語入力に慣れていない外国人スタッフの負担も軽減する。開発は,医療分野で実績にある「AmiVoice」を手がけるアドバンスト・メディアが行っている。Voice funは学習機能を搭載しており,使い込んでいくうちに入力の時間を短縮して,業務効率も向上する。また,介護記録を行う「Care Palette」は外国人スタッフでも使いやすいよう,英語,中国語,ミャンマー語,ベトナム語の翻訳機能をオプションで提供。メニューも平仮名表示に対応している。
オールウィンシステムの介護記録システム「ケアノート」も4か国語に対応している。外国人スタッフが母国語で入力した内容を日本人スタッフが日本語で確認でき,その逆も行える。ほとんどの操作をタッチパネル操作で行えるため,外国人スタッフでも入力作業に時間をかけずにすむ。日本メディカルも,10か国語に対応した介護記録システム「CareWorkers」のデモンストレーションを行った。iPadの画面から直感的に入力できるのが特長である。
外国人労働者の育成にもITを活用する動きも出てきている。ジョリーグッドは,介護施設のスタッフ向けトレーニング用VR「ケアブル」を提供しているが,外国人向けの「CareVR」も用意している。日本語を十分習得していない外国人でも学びやすいよう,母国語で学習体験を行える。ゴーグルを装着することで,リアルな日本の介護現場を再現し,接遇などを効率的に身につけることが可能だ。
バイタル・ウエアラブルデバイスとの連携で記録業務の効率化も
バイタルデータなどの記録もBluetoothなどに対応したデバイスから直接介護システムに取り込めるようになっている。NDソフトウェアの「Care Palette」は,テルモ,NISSEIの体温計や血圧計などと連携し,ワイヤレスでデータを取り込める。また,「ケアカルテ」を展開する富士データシステムも,バイタルデバイスや開発中の「ケアカルテバンド」と連携して効率的な介護を行う環境を提案した。
ウエアラブルデバイスを用いて,個別機能訓練加算の算定を容易に行えるようにもなってきた。Moffが提供する「モフトレ」は訓練中の動きをウエアラブルデバイスからリアルタイムでデータ化し,自動的に記録表を作成する。
介護業務にもRPA導入に期待
金融業界をはじめ多くの業界で,業務効率の向上や生産性向上などを目的に導入が進むRPA(Robotic Process Automation)も,今後介護分野で広がっていくことが期待される。NTTドコモのブースでは,NTTデータのRPAである「WinActor」のデモンストレーションを行った。PCへの入力などの定型業務を自動化するRPAは,記録や請求業務などの作業を効率化し,介護業務にリソースを集中させることが可能となる。ICTの専門家が施設にいなくても,既存の介護システムなどと組み合わせて容易に導入,運用できる。
ケアマネジャーもタブレットで働き方改革
ワイズマンは今回,居宅介護支援事業所のケアマネジャーが使用する記録システム「すぐろくケアマネ」を2020年4月から提供すると発表した。従来,ケアマネジャーの業務では,利用者宅を訪問して介護支援状況などをノートなどに記録し,事業所に戻ってPCに入力し直すという流れで行われているのが一般的であった。すぐろくケアマネでは,利用者宅で直接タブレットに情報を入力でき,事業所のPCで入力し直す必要がなくなる。これにより,訪問先で業務をすべて行うことができ,残業時間の短縮といった業務負担の軽減が見込まれる。NTTドコモも富士通の介護システム「HOPE LifeMark-WINCARE」による同様の仕組みを紹介していた。ケアマネジャーが外出先からタブレットで情報を入力すると,NTTドコモのデータ通信回線を経由して,データセンターのサーバに送られ,事業所の端末にも速やかに反映される。
在宅医療にも効率化の波
在宅医療へのニーズの高まりを受けて,診療所向けの電子カルテなどを手がけるPHCも在宅医療向けの電子カルテ「Medicom-SK」を2018年12月に発表した。訪問先でノートPCやiPad,iPhoneなどからカルテ画面を展開して,過去カルテの参照や入力が可能。iPad,iPhoneのカメラで撮影した画像をカルテ画面に貼付することもできる。ブースでは,日本光電工業が提供する医療介護ネットワークシステム「LAVITA」とクリニカルアシスタントサービス「PrimePartner」と連携して,Bluetooth,NFCに対応した血圧計やパルスオキシメータなどからのバイタルデータを参照するデモンストレーションを行っていた。PHCは,このほかにもインテグリティ・ヘルスケアの疾患管理システム「YaDoc」と組み合わせたオンライン診療もPRしていた。
富士フイルムメディカルも在宅医療を充実させるための医療機器を展示した。スマートフォン型本体とワイヤレスのプローブを組み合わせた超音波診断装置「iViz air」は,2019年12月に発売開始となった新製品。本体は5.5インチ233万画素の液晶モニタを採用し,検査画像を高精細に表示する。プローブは約190gという軽さでありながら,ノイズを抑えた高画質を実現。排泄ケアに役立つ尿量自動計測機能を搭載しているのも特長だ。同社は在宅医療向けとして,総重量がわずか3.5kgの携帯型X線撮影装置「CALNEO Xair」も展示した。X線画像診断装置「FUJIFILM DR CALNEO Smart」と組み合わせることで,患者宅に持ち込んで撮影を行える。CALNEO XairとFUJIFILM DR CALNEO Smartはいずれもバッテリー駆動するため,電源が確保できない場所でも使用可能。撮影した画像は,撮影操作を行う「Console Advance」ですぐに見られる。