プロジェクションマッピング技術を応用した世界初の手術支援システム「Medical Imaging Projection System(MIPS)」が製造販売承認を取得
2020年2月末に国内販売を開始へ
2020-2-5
今回承認された手術ガイドシステム「MIPS」。
モニタには従来と同様に蛍光画像が表示され,
手術室内で情報が共有できる
三鷹光器(株),京都大学医学部附属病院,パナソニック(株)は,プロジェクションマッピングの技術を応用し,患者の体表や臓器にリアルタイムで血流などの患部情報を投影,手術ガイドを行う支援システム「Medical Imaging Projection System(MIPS)」を開発,2019年11月20日にICG蛍光観察装置としてクラスⅡ医療機器の製造販売承認を取得した。プロジェクションマッピングを応用したリアルタイム手術ガイドシステムとしては世界初となる。2020年2月3日(月)には,開発に携わった企業・機関の関係者が出席して記者発表会が開催され,承認取得までの経緯や装置の特徴,今後の展望などが紹介されたほか,実機によるデモンストレーションも行われた。
同システムは,2015〜2017年に日本医療研究開発機構(AMED)の医療分野研究成果展開事業産学連携医療イノベーション創出プログラム(ACT-M)「プロジェクションマッピングによる近赤外画像の可視化とリアルタイムナビゲーションによる手術システムの開発」の支援を受けて開発された。研究開発では,パナソニックが画像処理や光学技術をベースとしたコアデバイス開発,京都大学病院がナビゲーション手術の課題の想起や学会・論文発表など,2017年4月に本格参入した三鷹光器がアーム機構をベースとした装置開発や装置製造・販売,薬事承認申請をそれぞれ担当し,ACT-M支援の終了後も試作機の改良を重ね,今回の製造販売承認取得に至った。2020年2月末より国内での販売を開始,呼吸器科や消化器科,形成外科などへの応用を図るほか,海外への展開も視野に入れている。
画像情報を用いた手術支援では,近年,CTやMRIなどの画像による術前シミュレーションや術中ナビゲーションが活用されているが,臓器の移動や変形への対応に課題があり,リアルタイムな手術ガイドは困難であった。一方,インドシアニングリーン(ICG)を使用した蛍光ガイド手術では,赤外線カメラで血流などを可視化することが可能となり,肝臓外科分野や乳腺外科分野で臨床応用が広がっているが,(1)近赤外蛍光画像を外部モニタ上で確認するため,術野とモニタ間での視線移動が必要,(2)無影灯を消灯する必要があり,術野が暗い,(3)画像がぶれるなどの問題があった。
今回,承認を取得したMIPSは,プロジェクションマッピング技術により,近赤外蛍光観察で得た血流などの情報を臓器表面に直接投影するため,術者が術野に集中できる。また,蛍光観察カメラとマッピング用プロジェクタを同軸光路上に配置することで,実際の患部の情報と投影画像のずれを±2mm以下にし,投影遅延時間を0.2秒以内に抑え,臓器の移動や変形へのリアルタイムな追従を可能にした。さらに,プロジェクタ光を直接投影するため,術野の暗さも解消されるほか,肋骨などの遮蔽物に邪魔されずマッピングを行えるよう,術者が自在に角度を変えられるアームを開発した。これらの効果により,手術の安全性向上に加え,手術時間の短縮や臓器機能の温存,ひいては予後改善などへの貢献が期待される。なお,ICGの保険適用範囲は,従来の「肝機能検査,循環機能検査,乳癌・悪性黒色腫におけるセンチネルリンパ節の同定」から,2018年に「血管及び組織の血流評価」まで拡大されており,今後,ICG蛍光法を用いた蛍光ガイド手術の応用の拡大が見込まれる。
大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)で行われた記者発表会には,中村勝之氏(三鷹光器),瀬尾 智氏(京都大学),髙田正泰氏(京都大学),竹上嗣郎氏(AMED),田中俊成氏(パナソニックi-PROセンシングソリューションズ)が出席した。三鷹光器の中村氏は,自社が担当したアーム開発について,臨床現場の意見を取り入れて操作性などの改良を重ねたことを紹介し,海外の薬事承認を取得し,MIPSを世界へ広めていきたいと意気込みを語った。また,京都大学肝胆膵・移植外科の瀬尾氏は,開腹手術において,リアルタイムで直接画像を確認できるようになった意義は大きいと述べたほか,可視化による教育上の効果にも言及した。
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