日立製作所とHIROTSUバイオサイエンス,線虫がん検査の実用化に向けた共同研究を開始
2017-4-18
日立製作所研究開発グループ基礎研究センタ長の
山田真治氏(右)と
HIROTSUバイオサイエンス代表取締役の
広津崇亮氏(左)
(株)日立製作所と(株)HIROTSUバイオサイエンスは,2017年4月18日(火)に線虫によるがん検査法「N-NOSE(エヌ・ノーズ)」の実用化に向けた共同研究開発契約を締結し,同日,日立製作所本社(東京都千代田区)にて発表会を行った。発表会には,日立製作所研究開発グループ基礎研究センタ長の山田真治氏,HIROTSUバイオサイエンス代表取締役の広津崇亮氏,日立製作所研究開発グループ基礎研究センタの久野範人氏,日立健康保険組合常務理事の内田好宣氏が出席した。初めに,山田氏が日立製作所の基礎研究・計測技術の取り組みを紹介したのに続き,広津氏がN-NOSEの概要と臨床研究成果,今後の研究の進め方ついて,久野氏が自動化技術について,それぞれ解説した。
N-NOSEとは,嗅覚の優れた線虫ががん患者の尿の匂いを好み,健常者の尿の匂いを忌避する特性(化学走性)を利用した検査方法で,九州大学発のベンチャー企業であるHIROTSUバイオサイエンスが研究開発を進めている。検体が尿のため検査は安価に行え,被検者への侵襲性もなく,かつ,画像診断では検出の難しい部位や早期のがんも検出できるという特長を持つ。従来は難しかった,高感度(*)と低コストの両立が可能となる画期的ながん検査技術として,スクリーニングでの活用が期待される。
スクリーニング検査として実用化するには,現在は人の手で行っている検査を自動化する必要があるため,両社は,2015年より連携して検査の自動化技術の研究を進めてきた。線虫がん検査の工程は,1)線虫培養,2)線虫の回収・洗浄,3)尿検体・線虫の配置,4)化学走性試験,5)線虫計数,6)判定の段階に分けられるが,2)〜4)を自動分注システム,5)と6)については走性プレートを自動撮像・画像解析するシステムとして検査の自動化を図っている。判定のための画像解析では,線虫の計数は困難なため,走性プレートを撮像した画像をブロックに分割し,各ブロックの輝度(線虫が多い=高い)で定量評価を行う。また,連続撮像を行うことで線虫の移動度も評価することができ,これにより試験の品質管理も可能になっている。日立健康保険組合の協力などで行った自動解析システム試作機の試験では,手作業で試験を行う場合と同等の精度が認められた。
N-NOSEについては,臨床研究による症例数増加や,がん種間・健常者との比較,メカニズムの解析など課題も多いが,今後,全国31施設の病院・大学との共同研究を進め,2019年末〜2020年初めの実用化をめざしている。
*これまでの臨床研究データの合計では,がん患者尿検体112サンプルに対して感度93.8%。
|
|
|
|
|
|
|
●問い合わせ先
(株)日立製作所
研究開発グループ 研究管理部 [担当:小平,安井]
TEL 042-323-1111(代表)
http://www.hitachi.co.jp/
(株)HIROTSUバイオサイエンス
[担当:榊原,桐山]
TEL 03-6277-8902
http://hbio.jp/