富士通の電子カルテフォーラム「利用の達人」の第13回総会が開かれる
2016-7-5
13回を数える総会の会場
電子カルテフォーラム「利用の達人」は2016年7月2日(土),富士通(株)本社ビル汐留シティセンター(東京都港区)において,第13回総会を開催した。嶋田 元氏(聖路加国際大学情報システムセンターセンター長/聖路加国際病院消化器・一般外科副医長)による特別講演のほか,活動内容に関するアンケート結果報告,レベルアップフォーラム,導入/運用関連フォーラム,情報管理/活用フォーラムの各フォーラムからの報告,富士通からの新製品・新技術の紹介などが行われた。
利用の達人は,富士通の電子カルテシステム「HOPE LifeMark-HX」「HOPE EGMAIN-GX」「HOPE EGMAIN-FX」のユーザーが,情報提供・交換などを通じ,電子カルテシステムの進化・発展,利用法を追究して,医療サービスの質の向上を図ることを目的に,2003年に設立された。2004年には,第1回の総会が開催され,以降毎年,総会のほかに,3つのフォーラムのワーキンググループ活動,導入/運用ノウハウ事例発表会,セミナーなどを行っている。富士通は同フォーラムの事務局となっており,レベルアップフォーラムなどで寄せられたユーザーの声を基に,システムの機能強化や改良などを行い,バージョンアップや新製品の開発につなげている。このような同社の取り組みもあり,2016年6月末現在で425施設が利用の達人の会員となっている。
当日は,まず利用の達人会長である河北博文氏(社会医療法人河北医療財団理事長)が登壇し,挨拶した。河北氏は,利用の達人発足当時を振り返り,当時の電子カルテシステムには課題もあったが,富士通の努力により,現在は有用なシステムとなったと述べた。そして,河北総合病院が中心となって1981年に構築した診療・看護・リハビリテーション・介護のワンストップソリューションである「トータル・ホーム・ヘルスケア・サービシズ(THHS)」や同院と周辺診療所との間で構築した「杉並地域医療システム(SRHS)」について説明した上で,ITを活用した地域医療連携や地域包括ケアシステムに向けての電子カルテシステムのさらなる進化に期待を示した。
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この後,事務局の高橋弘充氏(東京医科歯科大学医学部附属病院薬剤部長)と新任の藤本智裕氏(池田市役所地域振興課長)が司会としてプログラムを進行。世話人改選と功績賞授与に続いて特別講演が行われた。
登壇した嶋田氏は,「現場の行動を変える患者満足度調査」をテーマに講演した。嶋田氏は,製品・サービスが優れていても利用者がその良さを理解できなければ意味がないとし,医療においても顧客志向の発想が重要であるとの考えを示した。そして,厚生労働省の受療調査における医師の説明に対する患者満足度などの結果を示した。また,嶋田氏は,1998年から実施している同院の患者満足度調査結果についても報告した。同院が実施した2005年,2006年度の調査は厚生労働科学研究にもなったが,サンプリング数などの点で精度や効率性に課題を残していた。そこで,同院では,Avedis Donabedian氏が示した医療の質の評価モデルにおける構造(structure),過程(process),結果(outcome)の視点から, 疾患やDPCなどの医療情報システムから得られたデータを組み合わせて評価する手法を用いたと,嶋田氏は解説した。さらに,嶋田氏は,事務職員に対して行った「痛み」に関するアンケートの結果に基づく医療者の業務改善のパイロットスタディを説明。これらを踏まえて,医療情報システムから得られるquality indicatorなどの明示的評価と患者満足度調査などの暗示的評価を組み合わせて医療の質を評価していくことが求められていると述べた。
特別講演に続き,藤本氏から,利用の達人の活動・企画を見直すために実施したアンケートの結果が報告された。ホームページの利用状況や事例発表会,レベルアップに対する要望などが紹介された。
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次いで,レベルアップフォーラムの活動について,高口浩一氏(香川県立中央病院院長補佐/肝臓内科診療部長/医療情報管理室室長)から報告があった。レベルアップフォーラムは,ユーザーからのシステム改善の要望について検討を行っている。この検討を踏まえて利用者単位,施設単位の投票が実施される。利用者単位の投票結果に基づき年2回のレベルアップが施行され,施設単位の投票結果により2年に1回バージョンアップが行われる。高口氏は,2018年6月のバージョンアップ“GXV08”に向けての施設投票の結果を報告。23件の要望が次期バージョンで追加・改良などが行われることが明らかになった。また,高口氏は,レベルアップ制度の課題として,投票の参加施設数の減少などを挙げ,制度の見直しに向けて検討すると述べた。このほか,富士通担当者より,最新バージョンとして7月1日(金)にリリースされた“GXV07”の機能について説明が行われた。
この後,導入/運用関連フォーラムからの報告として,岸 真司氏(名古屋第二赤十字病院医療情報管理副センター長)と谷 文恵氏(横浜市立みなと赤十字病院医療情報センター医療情報課長)が登壇した。まず,岸氏は,2015年9月5日(土),6日(日)に開催された導入/運用ノウハウ事例発表会の報告をした。前回の発表会は,東京(汐留シティセンター)と大阪(富士通関西システムラボラトリ)の2会場を中継で結び,地域医療ネットワーク研究会との合同企画として開催された。2016年は,大阪をメインにした東京との2会場体制で,9月24日(土),25日(日)に開催される。新企画として,「電子カルテ機能プレゼン大会」「ポスター発表」などが設けられる。この後,看護ワーキンググループ(WG)の活動報告を谷氏が行った。看護WGは,2015年10月24日(土)にキックオフミーティングを行った後,2016年3月5日(土)に第1回WGを開催。「二重入力の排除」をテーマにした話し合いが行われた。今後はGX08Vにおいて,二重入力の解消をめざすとしている。
続いて,兵藤敏美氏(千葉県済生会習志野病院経営企画室長)が登壇して,情報管理/活用フォーラムの報告を行った。兵藤氏は,新たなWGとして,情報活用WGを立ち上げたことを紹介した。情報活用WGは,医療の質向上と経営への貢献をテーマにして,データ活用と改善活動のノウハウを共有するための活動を行っていくとしている。そのほか,兵藤氏はeXChart WG,DWH WG,情報管理WGの活動についても報告した。
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各フォーラムからの報告の後には,富士通の担当者から新製品や開発中の技術などが紹介された。まず,同社の最新PACSである「HOPE LifeMark-PACS」を中心とした診療画像ソリューションのプレゼンテーションが行われた。HOPE LifeMark-PACSは,自動スライス位置合わせや整形外科向けの自動計測機能などを搭載。電子カルテシステムとシームレスに連携する。また,「HOPE LifeMark-HX 生体検査ライブラリ」は,協業する横河医療ソリューションズ(株)のRISの機能も組み込み,精度の高い検査と業務効率化を実現する。さらに,放射線治療向けの「HOPE LifeMark-治療RIS」も横河医療ソリューションズの治療RISの機能を搭載し,電子カルテシステムとの連携により,ワークフローの向上を可能にする。これらに加えて,医療機関内で発生する画像データを統合的に管理できるvendor neutral archive(VNA)ソリューションとして「HOPE LifeMark-VNA(仮称)」の開発についても言及された。専用の画像ビューワの開発も進めているという。
加えて,公益社団法人日本看護協会が行っている「労働と看護の質データベース(DiNQL)事業」の参加病院向けに,データ抽出支援ツールの開発もアナウンスされた。医療機関にとって集計に負荷のかかる55の指標の自動抽出・集計が可能になるとしている。このほか,患者向けサービス「コンシェルジュ(仮称)」も紹介された。これはスマートフォンを用いて患者の受診支援を行うもので,診察券機能や診察順番の通知,予約表示,自動チェックイン,行き先案内・タクシー呼び出しなどの機能を利用できるアプリケーション。医療機関と患者との通信は,富士通のデータセンターを介してセキュアな環境で行われる。
総会の最後には,代表世話人の竹田 秀氏(一般財団法人竹田健康財団理事長)が閉会の挨拶をした。竹田氏は,今後の医療情報システムについて,標準化の視点を忘れずに開発が進むことが望ましいと述べた。その上で,クラウドやスマートデバイス,人工知能などの技術を取り込んでいくことも重要であるとまとめて,総会を締めくくった。
●問い合わせ先
電子カルテフォーラム「利用の達人」事務局
富士通株式会社ヘルスケアビジネス推進統括部第一ヘルスケアビジネス推進部
TEL 03-6252-2701
https://www.r-tatsujin.com
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