東芝メディカルシステムズが「Global Standard CT Symposium 2015」を開催
2015-8-31
メイン会場風景
東芝メディカルシステムズ(株)は2015年8月29日(土),ANAインターコンチネンタルホテル東京をメイン会場に「Global Standard CT Symposium 2015」を開催した。今回で5回目となる本シンポジウムでは,320列Area Detector CT「Aquilion ONE」シリーズの最新技術と,同社が追究する医療被ばく低減技術をテーマに情報提供が行われている。シンポジウムの様子は,札幌全日空ホテル(札幌市),TKP仙台カンファレンスセンター(仙台市),キャッスルプラザ(名古屋市),プラザN(鹿児島市)の4つのサテライト会場に中継されるとともに,インターネットでの配信も行われた。
冒頭,代表取締役社長の瀧口登志夫氏が挨拶を行った。瀧口氏は,2015年で40周年を迎えたCT事業の歴史を振り返った上で,2011年から取り組んでいる国内CT被ばく半減プロジェクトの進捗を報告。7月末時点で,Aquilion ONEの国内稼働台数は318台,AIDR 3D搭載CTの国内稼働台数は2920台となっている。さらに今後,RSNA2014で発表した従来比1.4倍の感度を持つ新しい検出器“PUREViSION Detector”と,低線量撮影でより鮮明な画像を提供する“AIDR 3D Enhanced”をAquilionシリーズに標準搭載していくことで,医療被ばく低減にいっそう努めていくことを表明した。
続いて,CT開発部システム開発担当の中西 知氏が「第三世代Area Detector CT Aquilion ONE ViSION FIRST Edition ーFIRST技術のご紹介」と題して,2015年4月に発売された「Aquilion ONE/ViSION FIRST Edition」に搭載されている順投影適用モデルベース逐次近似再構成“FIRST(Forward projected model-based Iterative Reconstruction SoluTion)”について解説した。FIRSTの特長を,1)光学系モデルによる空間分解能向上,2)統計ノイズモデルによるストリークアーチファクト低減,3)部位ごとに最適化されたRegularizationの3つのポイントに絞って紹介した。FIRSTは,Aquilion ONE,Aquilion ONE/ViSION Editionでのアップグレードも考慮されており,FIRSTの持つ画質向上・高速化の能力を,より広く展開していくとの展望を述べた。
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講演は2つのセッションに加え,CT事業40周年を記念した特別講演も企画された。
初めに行われた特別講演は,片田和広氏(藤田保健衛生大学医学部先端画像診断共同研究講座)が座長を務め,小野由子氏(海老名総合病院放射線科)が「神経放射線とCT画像診断ー国内CT導入40周年の変遷と最新4D-CTAー」と題して講演した。小野氏は,東京女子医科大学に1975年に国内CT第一号機であるEMIスキャナが導入され,CT登場前後の神経放射線領域における画像診断のダイナミックな変遷を見てきた。小野氏は自身の経験を基に,CT導入前の侵襲的な各種X線画像を振り返り,CTによる劇的な進化について貴重な画像を供覧しながら説明した。そして,ADCTの登場で,さらに非侵襲的かつ安全性の高い頭部4D-CTAが可能になったとして,症例画像を示しながら有用性を解説した。
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休憩を挟んで行われたSession1では,富山憲幸氏(大阪大学大学院医学系研究科放射線統合医学講座)が座長を務め,3題の講演が行われた。初めに,井野賢司氏(東京大学医学部附属病院放射線部)が「CT検査の金属アーチファクトに対するアプローチ」と題して発表した。井野氏は,密度の異なる金属に対してDual Energy(DE)と金属アーチファクト低減アルゴリズム“SEMAR”を使用して,効果の差異があるかを検証した。その結果,高吸収体にはSEMAR,アルミや希釈造影剤など低密度体にはDEと使い分けることで,より効果的にアーチファクトを低減できたことを報告した。
次に,小林達伺氏(国立がん研究センター東病院放射線診断科)が「Area Detector CTを用いた膵臓Perfusion」をテーマに講演。ADCTを用いて膵臓Perfusion検査を行い,膵頭十二指腸切除術後の膵液瘻との関連性を見た検討について紹介した。小林氏は,ADCTは16cm幅の範囲を撮影でき,Perfusionソフトウエアと併せて搭載されている非剛体位置合わせソフトウエア“Body Registration”を活用することで,膵臓全体のPerfusion解析を良好に行えたと述べ,CTPの結果とエビデンスのある結果が一致し,CTPデータと病理組織学的所見との間に関連性が認められたことを説明した。ADCTによりCTPの研究対象が従来の脳・心臓だけでなく,肺・腹部臓器へと広がったと締めくくった。
3題目に,宇都宮大輔氏(熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野)が「Area Detector CTを用いた心血管画像診断」と題して発表した。最初に,最新の心臓CTの臨床適応について紹介した宇都宮氏は,冠動脈CTAで評価の難しい高度石灰化病変へのアプローチとして,サブトラクション冠動脈CTAについてスキャンプロトコールと実際の画像を示して説明した。また,冠動脈CTAの新しい方向性としてperfusionやCT-FFRについて紹介するするとともに,循環器領域におけるSEMARの有用性について画像を示して述べた。
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続くSession2では,山下康行氏(熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断科学分野)が座長を務めた。1題目に,井田義宏氏(藤田保健衛生大学病院放射線部)が「CTの診断参考レベルDiagnostic Reference Level(s)」と題して講演した。2015年6月に医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)から「最新の国内実態調査に基づく診断参考レベルの設定」(8月11日に一部修正:http://www.radher.jp/J-RIME/report/DRLhoukokusyo.pdf
)として発表された,日本初となる医療被ばくの線量指標を示した診断参考レベル(DRLs)について,CTを取り上げて概要と考え方を解説した。井田氏は,DRLの目的は線量の最適化であり,DRLに示された数値は線量の制限値を示したものではないことを強調し,自施設の線量とDRLを比較して,線量が最適化されるように運用を検討することが重要であると述べた。
2題目に,野澤久美子氏(神奈川県立こども医療センター放射線科)が登壇し,「Area Detector CTを用いた小児画像診断」をテーマに講演した。自施設における小児CT撮影の実際を説明した上で,成人と比べ,小児検査では短時間で被ばく線量の少ない検査が求められると述べた野澤氏は,症例画像を示してADCTの有用性を説明した。さらに,FIRSTを適用した小児画像を示し,画質の向上と被ばく低減が期待されると述べた。
最後に,粟井和夫氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究院放射線診断学研究室)が「逐次近似画像再構成FIRSTのCapabilityーCTのさらなる高画質化・低線量化に向けて」と題して講演した。広島大学ではFIRSTの臨床応用に関する研究を2014年から行っている。粟井氏は,FIRSTはFBPやAIDR 3Dと比べて空間分解能の向上やストリークアーチファクトの低減が可能で,かつ臓器や部位に合わせた画像の最適化が行われることで,臨床に有用な画像を提供できることを説明した。低コントラスト分解能向上や演算時間の短縮などの課題があるが,肺野・心臓領域,ステントの描出は,FBPより圧倒的に画質が良く,超低線量CTでの肺がん検診の可能性など被ばく低減に寄与すると述べ,さらなる開発に期待を示した。
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東芝メディカルシステムズ株式会社
TEL 0287-26-5100
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